案外楽屋ってこんなもん
監督：はい カット〜！
スタジオに監督の声が響き渡るとメンバーやバナナマンがそれぞれ慣れたように軽く挨拶をして今日も無事に収録を終えた
メンバーが軽く伸びをしたり、隣どうし話したりしている中スタッフによってピンマイクが回収されていく
もう六期がいつ加入しても問題ないくらいの貫禄だ
それにしても、今日もなかなかおもしろかったな〜
今日は「新選抜メンバー今さら意外な一面クイズ」の収録日だった
個人的には「早口褒め合い対決」での日村さんのフライングがNo.1
隣で見ていたマネージャーと一緒にここ一週間で一番というくらいに爆笑した
もちろん、僕ら以外のスタッフもメンバーも大爆笑
カメラさんも手がブレないように必死だった
そんな様子を見て少なくとも僕はバナナマンのいる番組のカメラマンはまったく務まりそうにないと感じた
僕は生粋のバナナマン好きだから二人がやることなら八割方笑っているが今日の日村さんは格別に面白かった あの全力具合と天然さとタイミングという唯一無二感を言葉で表すのは至難の業だ
？？：〇〇〜
収録の余韻に浸っていると前の方から名前を呼ばれた
名前が呼ばれたところに目線をやると梅、蓮加、史緒里だった
小走りにひな壇に近づいていくと蓮加が悪戯な表情で話しかけてきた
蓮加：今日めっちゃ笑ってなかった？
史緒里：日村さんがフライングしてたとこ爆笑だったでしょ
〇〇：あっ バレてた？
どうやら僕の爆笑はメンバー側にも伝わっていたらしい
でもあれはしょうがない
あんな前かがみの状態で全力のフライングをされたら爆笑するしかないだろう
梅：〇〇いっつもバナナマンさんにツボってるよね
〇〇：だって好きなんだもん
蓮加：えっ いきなり？
〇〇：えっ？
史緒里：やめてよ〜 そんな急に好きなんて ここスタジオだよ？
〇〇：あ〜 はいはい
蓮加：ちょっと〜 軽くあしらわないで！
あっ どうやら僕が適当に流したのがバレたらしい
梅：もう ほんと〇〇のとこ好きだよね
史緒里 蓮加：当たり前でしょ！
〇〇：（苦笑）
二人の圧に僕は苦笑いするしかなかった
でも本当は結構嬉しい そんな嬉しさを隠すための苦笑いかもしれない
階段に向かう途中誰かに背中を突っつかれた
〇〇：ん？
遥香 さくら：わっ！！
（えっ 遥香とさく！？）
誰かになにかされるんだろうとは思っていたけれど予想外の二人で僕は目を見開いたままフリーズしてしまった
遥香：ちょっと何か言ってよ
僕の反応が不服だったのかやや眉間にシワが寄っている
本人は怒っていると思わせたいのだろうが申し訳ないことに可愛さ勝ってしまっている
遥香：ほらっ さくちゃんも反応に困ってるでしょう？
さくの方を見ると何故か僕と同様固まっているしかも恥ずかしそうに
〇〇：ごめん ごめん まさか二人だなんて思わなくて
さくら：ほら〜 だからいったのに〜
こちらはこちらで別の理由故にご立腹のようだ
もちろん怒っているとは思えないくらい可愛い
遥香：いや〜 もっとびっくりすると思ったんだけどな〜
〇〇：びっくりはしたけど予想外が勝っちゃってフリーズしちゃった
さくら：カッキーが〇〇のことびっくりさせようっていうから
遥香：だって暇だったじゃん〜
〇〇：なんで暇だと僕をびっくりさせようとするんだよｗ
遥香：しょうがないじゃん 暇だったんだもん
唇を尖らせてそっぽを向く遥香をみて僕とさくは思わず笑ってしまった
遥香：もうっ 何二人で笑ってんの
楽屋に戻る道を拒む可愛いハプニングだった
その後階段を上がり楽屋に戻る廊下を歩いていると先に戻ったメンバーたちの楽しそうな声が響いていた
さく：なんか楽しそうだね
遥香：すごい声漏れてるじゃんｗ
そんな楽屋では差し入れのお菓子やお弁当などのケータリングを囲みながらパティーと言わんばかりの規模で盛り上がりをみせていた
まあ いつものことなのだがたまに盛り上がりすぎると菊池さんに呆れられることもある
楽屋に入ると遥香は別仕事のアンケートがあるだかなんだかでマネージャーに颯爽と別室につれられていった
〇〇：遥香も大変だな
さくら：ね 戻ったと思ったらすぐどっか行っちゃって
忙しそうな遥香を見送りつつ僕らはいつのもの隅の椅子に座った
やっと一段落だ
さくら：〇〇なんか食べる？ 持ってくるけど
〇〇：う〜ん じゃあお茶となんかお菓子がいいな
さくら：お菓子は何でもいい？
〇〇：うん さくのおまかせで ありがとう
さくら：うん！
そう明るく返事をするとさくはケータリングに小走りで向かっていった
この小走りもなんだかペンギンみたいで愛くるしい
流石「飛鳥の子」といった感じだ
あやめ：〇〇〜 差し入れのドーナツ食べた？ めっちゃ美味しかったよ？
椅子に座ってボ〜っとしているとあやめとその腕にひっついた咲月がやってきた
〇〇：ほんとに？ あっ でも後でにするよ 今さくがなんかお菓子持ってきてくれるから
咲月：〇〇さん正気ですか？ このあやめしゃんが勧めてくれたドーナツですよ？ ほんとに断っていいんですか？
あやめ：うるさいよ
咲月：はい すみません、、、
興奮した咲月をあやめがサラッと辛辣な言葉で鎮圧する
もう見慣れた光景ではあるが微笑ましくていつも笑っていしまう
あやめ：〇〇とさくちゃんいっつもこの席だね
〇〇：まあね
咲月：飛鳥さんもここじゃなかったですか？
〇〇：そうだよ
あやめ：飛鳥さんもさくちゃんも〇〇のこと大好きだからね〜
咲月：それはあやめしゃんもじゃないですか この前一緒に話しましたよね？
あやめ：ん？
それは今言うなという無言の高圧的な目線には目もくれず咲月がはなし始めた
咲月：この前お仕事で一緒になった帰りに御飯連れてってもらったんですけどその時一緒に〇〇さんの好きなとことか〜 かっこよかったエピソードとか〜
他にもいっぱい一緒に話したんですよ あっ その時五期生に小川彩がいるからもう「あや」って読んでもらえなくて寂しいって話とか ねっ あやめしゃん
咲月が呼びかけても返事がないそれを見て僕は苦笑いするしかなかった
そこにはびっくりするくらい赤くなったあやめが俯いておりそれを見てなぜこんな事になったかわからないド天然咲月があたふたするという異様な光景が広がっていたのだ
そんな二人をよそ目に三人目のお客さんがスケッチブック片手に近寄ってきた
テレサ：〇〇さん。この絵、見てください！
そう言われて僕はスケッチブックを覗き込む
〇〇：これは…さっきの収録のシーン？
テレサ：そうです！ 日村さんが梅澤さんに「あなたになりたい」って連呼してるときのポーズです！ 〇〇さんも爆笑してたのでかいてみました
〇〇：すごっ！ めっちゃうまいじゃん！
僕の声に反応してか周りのメンバーがスケッチに気づき集まってきた
与田：え、すごい！ テレサ、本当に上手だね！
さくら：わあ〜 すごい！
お菓子とお茶を両手に抱えてさくも輪に加わってきた
あれから少し時間がたったから結構悩んでくれたのだろう
〇〇：あっ さく ありがとう
さくら：うん！ はい
そう言ってさくは机にお茶とアルフォートなどのチョコ菓子をおいてくれた
あと自分で食べるのであろうお団子も
弓木：これ、日村さんに見せたら絶対喜ぶよ！
そんな事を言っているとアンケートを終えた遥香とマネージャーが誰かと話しながら楽屋に戻ってきた
設楽：みんな お疲れー！
日村：どうも〜
全員：え〜！！！
まさかのご本人様登場に楽屋ではプチパニックだ
そんな中でもしっかり挨拶をするメンバーたち 流石だ
〇〇：お疲れ様です
僕も立ち上がってそちらに向かおうとすると
二人はいいからいいからと自ら近づいてきてくれた
設楽：いや〜 次の収録まで時間あるからって廊下歩いてたら賀喜とバッタリ会っちゃって
日村：そうなのよ
遥香：どうせならと思ってお招きしちゃいました〜
〇〇：そうでしたか あっ ちょうどよかった お二人にお見せしたいものがあるんです
日村：見せたいもの？
設楽：なんか盛り上がってたもんね
そうして僕は机の上においてあったスケッチブックを手渡した
日村：えっ これもしかして 俺！？
設楽：しかもこれさっきの収録のやつじゃない？
〇〇：これ テレサが描いたんですよ
日村：池田が！？ これすげーよ
テレサ：ありがとうございます さっきの日村さんが面白かったので描いてみました
設楽：えっ これ題名はあるの？
テレサ：フライング日村です
テレサは少し顔を紅潮させながらも笑顔でまだ誰も知らなかったこの絵のタイトルを発表した
日村さんは大笑いしながら
日村：これ、めちゃくちゃリアルだし 面白いな ちょっとこれ、持って帰っていい？
テレサ：もちろんです！
設楽：これジグソーパズルにしちゃえばいいんじゃない？
日村：いや ほんとにそのレベルよ
そこにマネジャーの小山さんが申し訳無さそうに二人に耳打ちをした
どうやら次の収録がもうすぐなようだ
設楽：あっ ごめん 時間来ちゃったから また
〇〇：はい わざわざありがとうございました
日村：池田これありがとな
池田：いえいえ
設楽：じゃ また
メンバー：ありがとうございました
二人は笑顔で手を振りながら次の収録のため楽屋をあとにしていった
テレサ：よし、次は〇〇さんの絵、描きますよ
〇〇：僕？ ハードル高くない？
テレサ：大丈夫ですよ。かっこよく描きますから！
与田：面白い絵にしてよ！
〇〇：嫌だよｗ
これが僕の日常
ちょっと普通ではないかもしれないけど毎日楽しくやっている
今年もいろんなことがあったけど来年もみんなで頑張ろうね