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ありのままに・・・

定時の鐘が鳴ると憲司は机の上をかたし一目散にロッカールームに行った。
誰かを摑まえて飲みに行くつもりだった。
一つ後輩の島田が来たので
「島田!飲み行こうぜ!」
「あ、すいません。今日俺彼女と約束があるんで。」
「え!お前彼女出来たの!」
「前言ってたじゃないっすか!気になる子がいるって。駄目かなと思ってたんすけど、告ったらあっさりOKで付き合う事になったんですよ。」
「そっか。良かったな。今度紹介してくれよ。」
その後2人誘ってみたが2人とも彼女と約束があるとの事で断られた。
憲司も今まで何人かと付き合った事があった。
会社ではちょっとヤンチャな感じを出してはいるが元々はシャイで優柔不断とこがあって、特に女の子と2人でいると緊張してしまい、思ってもいないことを言ってしまい、嫌がれてしまい結局すぐ別れてしまう事を繰り返していた。
「今日は一人で飲むか。」と独り言を言い。今日はコンビニでつまみを贅沢に沢山買って飲もうと思った。

休日、ぼ~とテレビを見ていると携帯が鳴った。龍司からだった。
「憲司!今度俺の彼女が友達連れて来るから一緒に飯行こうぜ!」
龍司はいつもすぐ要件から入る。
龍司は高校の同級生で、明るくてヤンチャでイケメンで誰とでも話せてと、
当然モテて、女子生徒の間ではファンクラブがあるとの噂もあった。
俺の高校時代はヤンチャなグループには入っていたが、お人好しのところがあったからか、ヤンキー達にはよくからかわれて、いじられていた。特に龍司にはよくいじられていた。
自分でいうのもなんだが、俺はイケメンっていえばイケメンで高校入学当初は女の子に騒がれていたが、ヤンキー達にいじられている事が知れ渡ると女の子達は離れていった。
なのでこの教訓を生かし、会社ではヤンチャな感じを出してなめられない様にしてるのだ。
いわゆる社会人デビューだ。
今度の土曜日の18時に焼肉屋の駐車場で待ち合わせとなった。
龍司の彼女は今までヤンキーっぽいのが多かったから俺には合わないだろうなと思った。

土曜日、あまり乗り気ではないもののちょっとヤンキーっぽい服を着て焼肉屋に向かった。5分前には着いたが龍司達はもう来ていて龍司の車から降りて喋っていた。
俺はまだ車を持ってなく、自転車で行ったのでばつが悪かった。
「おう、憲司、遅えよ!チャリンコで来るからだよ!ガハハハ!こいつが俺の彼女!で、こっちがあかりちゃん。」
龍司の彼女はいかにもおてんばのヤンキー娘という感じで、あかりちゃんは小柄で色白でおとなしそうらな感じだった。
龍司の彼女が「え!イケメンじゃん!私、夏子。宜しく!ガハハハ!」と笑い、俺の肩を叩いた。
4人での食事は、龍司が俺をイジリ、俺もそれに乗っかってふざけて女子2人を笑わせて盛り上った。あかりちゃんは、笑うと何とも愛らいしい顔になり、俺も調子にのって笑わせた。一通り食べて店を出ると、
「私、電車で帰る。」とあかりちゃんが言った。
「じゃ憲司一緒に行ってやれよ!」龍司が言い、俺は自転車をおして一緒に駅に向かった。
2人きりになると緊張してしまい。何をしゃべればいいかわからなくなり、まだ一緒にいたい気持ちの裏腹に早く駅に着きたいと思った。
「楽しかったね。」
「あそこの焼肉屋で前友達がバイトしててさ、よく行ったよ。」
「そうなんだ。」
「・・・・・」
話が続かなかった。
駅に着き改札のところであかりちゃんが何か言いかけたが、間の悪いことに俺が、
「電車来るよ!早く行った方がいいよ。」と言うと
あかりちゃんが怪訝な顔をし「じゃあね。」といって足早に行ってしまった。
俺はまたやっちまったと思い、帰り道、コンビニに寄ってハイボールを買った。

それから何日かたち、仕事帰りにコンビニに寄ると、龍司の彼女の夏子ちゃんがいた。
「憲司じゃん!やっぱイケメンだね!ガハハハッ!あのあと、あかりとどっか行ったの?」
「いや。そのまま駅に送って帰ったよ。」
「あ、そう。で、連絡先交換したんでしょ!」
「いいや。」
「なんでだよ!あかり可愛いかったでしょ!じゃまた今度は飲み会やろう!来週土曜日、龍司とあかりに言っとくから!」
「・・・・・」
「龍司がさあ、よく憲司の事話すんだね。あんなやさしくていい奴はいないって。いい彼女が出来ればいいなって。誰かいい子いないかって。で、あかりを連れてったんだ。」
「・・・・・」
「じゃ来週の土曜日18:00に駅前集合ね!私ちょっと急ぐからさ、じゃあね。」
龍司が俺の事を気にかけていたなんて思ってもいなかった。

土曜日に約束の場所にいくと、あかりちゃんが1人でいた。
「さっき連絡あって、夏子と龍司君、用事ができて来れないんだってさ。2人じゃ嫌かな?」
「いいや!とんでもない。」
駅前の居酒屋に入った。店は混んでいてカウンターしか空いていなかった。俺はもし2人になった時のことを考えて、面白い話をいくつか考えていた。乾杯をして俺は沈黙を恐れて、前のめりになって考えていた話をした。
あかりちゃんはよく笑ってくれた。考えていた話もつきて、話が途切れた。「私、憲司君が勤めている会社に高校の後輩がいるんだ。」
「え!そうなの!」
「憲司君って会社じゃちょっと怖がれているの?」
「いや~そんなことないと思うよ...」
「何か、龍司君から聞いてた感じと違うなと思って。」
やばい、俺の社会人デビューがばれてる。終わったなと憲司は思った。
「あのさ。私、高校生時代は周りがヤンキーだらけでさ。私も合わせてヤンキーっぽくしてたんだけど、なんかつまんなくてさ。もう普通にしていよう思ったんだ。」あかりちゃんは自分の事を話はじめた。
俺は一言も喋らず話を聞いた。
別れぎわに次に会う約束をした。

何か月かたち、俺とあかりは付き合うことになった。
あかりと会うごとに俺は、以前の自分になっていった。
それは優柔不断でお人好しで情けない自分だった。
俺はこんな自分で生きていこうと思いはじめた。
すると自然と背筋がのび心地よかった。
あかりはこんな俺を愛してくれた。
そして龍司とは頻繁に会い話すようになり、かけがえのない親友となった。


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