同人小説「永遠のうた」9

朝と同じ駅の一角に、黒ずくめのファッションをしたしろがねがいた。
 「こちらしろがね。おもかるの被検体の一人、大野渚を発見した。指示を送れ。_ラジャ、接触を試みる。」 「ハーイ、お兄さん、カッコいいね。Singer?」
 いったいこの外国人は何者なんだろう?Jは無視して立ち去ろうとした。しかし、しろがねの両腕がJの首筋に伸びる。甘い吐息がかかる。
 「キライじゃないでしょ?ワルツでも踊る?王子さま!それともGame?トランプなら持ってるよ?」
 「じゃあ、ブラックジャック。ふたりじゃなんだけど。」
 「OK,じゃあ、私が親ね。」Jがギターを立てかけているベンチに札を並べていくしろがね。
 「ゲームスタート!」
 勝てない…。この女めちゃくちゃ強い。いかさまでもやってるのか。大野渚は舌を巻いた。ブラックジャックとは、簡単に言えば何枚かのカードを引いていき、トータルで21に近いほうが勝ちのゲームだ。21に近いほうが勝ちだが、トータルで21を超えてはアウトなのだ。
 「ふんふーん、私結構直観力強いから。ドイツカメラ並みに目がいいよ。」 「やっぱりドイツ人?プラチナカラーの髪が気になってた。」 「一応警戒して、ネオナチ系の危険な女よ、と言っとく。」
 「おーい、J!」猛とひかるの二人組が、大野渚を見つけてかけてくる。
  ひかるが、しろがねの存在に気付く。
 「こちらの海外女性は?どなた?初めまして、木下ひかると申します。」
 「ドイツから来ました、しろがねといいまーす。ハンドルネームだけどさ。本名はマタネ。」
 その瞬間! 「ん、おい!あれ!見ろ、上!」突然相馬猛が叫ぶ。
 皆が漆黒の夜空を見上げる。ビルの上から看板が落ちてくる。
 「ひかる!」Jがとっさにひかるをかばう。しろがねはすでにいない。
ドーン!路駐されている自動車に看板が落ちた。自動車が一瞬でスクラップだ。周りは騒然となっている。
 しろがねが無線機レシーバーにささやく。無線機であるから、何らかの専用回線なのだろう。
 「こちらしろがね。アクシデント発生。故意か偶然かは不明だが、屋上から看板が降ってきた。故意であるなら背後関係を調査してくれ。国連軍、すなわちアメリカ軍とインド軍のいざこざがあったよな。ベトナムの核疑惑は調査をいったん中止しろ。いまその情報は明るみに出してはいけない。北朝鮮製の核と思うが、今北朝鮮はアメリカとけんかするわけにはいかんからな。国連軍のMissローズマリーにコンタクトを取ってくれ。Ice Blueは一時日本から撤退する。」
 相馬猛、木下ひかる、大野渚。今回のゴルゴダの丘送り、おもかるの封印役はこの3人か?かわいそうだが自分たちで苦難は乗り越えてもらおう。
 一方、ビルの屋上に、小さな人影が三つ。三人の黒青衣の少女が地表を見つめている。
 「派手に壊しちゃったね。」ビルの屋上の人影の一人がつぶやく。小さな人影が三人。
よい、いつ、むゆと呼ばれる三人の少女、月の子供たちだ。よいは、三人の中でひときわ背が低いが、雀のように快活だ。いつは逆に、長身おっとり、イメージでいえば鶴だろう。むゆは、狐目でおませな雰囲気のお姉さんだ。
 ふふ‥、お兄ちゃんたち慌ててたね、とよい。
 だってしょうがないじゃない。きれいな女の人見て鼻の下伸ばしてたからいけないの。私たちっていう素敵なフィアンセが居るのに。おもかるの生贄になるより、魔女の血を残すほうがよっぽど幸せよね、とむゆが答える。
 それ、あんたの勝手な押し付け。許可もらってないじゃない。いいなあ、ひかるお姉ちゃんは、Laboを卒業できて。私たち、夜しか出歩けないから、“月の子供たち“とか言われるんだよね。きれいなお洋服着て、昼間のテーマパークで”でーと“とかしたいな、とよいがはしゃぐ。


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