同人小説「永遠のうた」2-2

△第一節 赤い瞳の龍(Side猛&Side J)
同時刻、夜中の12時過ぎ。宗教法人ARKでは、夜の神楽舞が厳かに執り行われていた。大きな銅鑼の重低音に、鈴の音が軽やかにリズムを刻む。シャンシャン、シャンシャン…。鈴の音のリズムに合わせ、白と赤の巫女服を身にまとった少女たちが、祭壇である焚火の周りを周って奉納の舞を舞っている。少女たちの人数は10人を下るまい。周りを取り巻く信徒の数は、およそ700人かそれ以上、まるでコンサートホールのような熱気と雰囲気を醸し出している。祭壇の奥には、城門らしき二柱の柱があり、その左手に、歳をとった老婆が座っている。手には書物を持っているが、この暗さでは、とても読むことはできないように思われる。「大ババ様!」今は神事のまっ最中である。本来ならば、声を上げるのは控えなければならない場面だ。
「おお、よい、いつ、むゆ!戻ったのかえ?」青と黒の衣をまとったこの三人は、特別な例外なのだろう。
大ババ様と呼ばれる老女が、月明かりと松明の灯の照らす祭壇脇から顔を向けた。
「大ババ様、急遽、ご報告したい議がございます。神事中に声をあげてしまった非礼をお許しください。おもかるの封印候補が見つかりました。現在のところ2名、この度の宇多(うた)は、三種にございます。」鶴のような優雅なしぐさで、いつが静かにそう伝える。
「ご苦労じゃったな。すまんが少し、席を外す。」大ババ様が、周りのものに伝えると、よい、いつ、むゆを連れて、祭壇からはなれていく。大ババ様は、目が見えないようだ。いつに手を引かれて、奥の間へと進んでいく。
“あの方”様はいずこでございますか? 声にならない声でいつが大ババ様に問いかける。
別室でカード占いをされておられる。いつものように、未来を読んでおられるのじゃろう。新しい展開が開けたと笑っておられたわ。大ババ様が声にならない声で答える。


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