#353 「リーディング証券事件」東京地裁(再々掲)
2014年1月22日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第353号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【リーディング証券(以下、L社)事件・東京地裁判決】(2013年1月31日)
▽ <主な争点>
有期雇用契約における試用期間中の解雇など
1.事件の概要は?
本件は、雇用期間1年間の約定で採用され、試用期間中に解雇(留保解約権の行使)されたXが使用者であるL社に対し、上記留保解約権の行使は労働契約法(以下「労契法」という)17条1項* に違反し、無効であるとして、地位確認、残存雇用期間の未払賃金等および違法な留保解約権の行使等による慰謝料(損害賠償金)等の支払いを求めたもの(地位確認請求については後に取り下げ)。
* 労契法17条(契約期間中の解雇等)1項
「使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。」
2.前提事実および事件の経過は?
<L社およびXについて>
★ L社は、昭和24年に設立された証券会社であり、現在は韓国資本の傘下にあり、関東および中部地方に8店舗を有する。
★ X(韓国国籍)は、平成20年10月、「S投信株式会社」に入社し、経済アナリストとして、主に投資判断のためのリサーチ業務、企業・市場動向分析の業務に従事していた経歴を持つ者である。
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<本件雇用契約の締結から本件解雇に至った経緯等について>
▼ L社の代表取締役であるAは同社の求人に応募してきたXに対し、どの程度、日本語で証券アナリストとしてのレポートを作成することができるか確かめるため、アナリストレポートの提出を求めたところ、Xは「サムスン電子」に関する証券アナリストレポート(以下「本件サムスン電子レポート」という)を作成し、日本語の文章を日本人である夫に見てもらった上でL社に提出した。
▼ 平成23年1月、Aは本件サムスン電子レポートの出来映えを重視し、日本語でアナリストレポートを作成することが可能な専門職(即戦力)として、Xと期間の定めのある雇用契約を締結し(以下「本件雇用契約」という)、L社本社のリサーチセンターに配属した。
★ 雇用期間は23年1月11日から同年12月31日までで、当初6ヵ月間は試用期間(以下「本件試用期間」という)とされた。
▼ 入社後1週間が経過したところで、リサーチセンター長であるBはXに対し、自動車産業全体のアナリストレポートの作成を指示したが、そのレポート原案は1ヵ月間以上も後に提出されたばかりか、その出来映えも良くなく、誤字脱字が散見されるほか、随所に文法の誤りだけでなく、曖昧かつ不適切ないしは趣旨不明の稚拙な表現が見られ、日本語の文章として、その意味(文意)を容易に理解することが困難な内容のものであった。
▼ 同年2月中旬頃、AはXに対し、韓国企業の個別銘柄について、週3通程度を目標としてアナリストレポートを作成するよう指示したところ、Xは同年3月末までの間に10銘柄のレポートの原案を作成し(以下「本件各銘柄レポート」という)、監査部に提出した。本件各銘柄レポートはいずれも出来が悪く、監査部の承認を得られなかった。
▼ 同年3月下旬、AはXには日本語でアナリストレポートを作成する能力が欠如しているものと判断せざるを得なくなり、L社は試用期間中のXを解雇する旨の意思表示をし(以下「本件解雇」という)、後にXの要求に応じ、解雇理由について「韓国株のレポートを作る能力があると判断し、アナリストとして採用したが、採用後のレポートをみると、採用時に期待したレベルに比べて、(1)スピードが遅い、(2)日本語のレベルが低い、(3)分析力・専門知識が日本の証券会社に勤めるアナリストに比べると低い、などの問題点が判明した。・・・」という内容の文書を送付した。
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