「負けヒロインが多すぎる」と豊橋市に関する考察 part.2
①イントロダクション
前回は、東京・大阪から下に見られる名古屋から下に見られる街である愛知県豊橋市とマケイン、及びその主役級登場人物である「八奈見ちゃん」の豊橋のアイコンになりうるポテンシャルについて述べた。
今回は、その続きとして、現状アイコン不在の豊橋市に具体的に何を期待するか、を述べたい。
②豊橋市の取組み継続への期待
それは、これまでやってきた程度の予算と規模を継続し、マケインを応援し続けることである。より具体的には、例えば、今市内各地で行っているマケイン展示の継続やアップデート、先般の豊橋まつりのような豊橋市のイベントでのマケイン関連の企画の継続、市内各地のマケインマンホール設置、ふるさと納税返礼品にマケインに因むものを出す、それらに使う八奈見ちゃんたちの絵がマンネリ化しないよう新しい絵をマケインの作り手たちに依頼し続ける、などがあるのではないか。
ふるさと納税×アニメのコラボアイテムは、静岡県沼津市・山梨県韮崎市・岩手県奥州市など、各地で見られる。仕事・距離等様々な理由で聖地巡礼に行ける時間がない人々も多いため、その需要を拾いながら行政側にもメリットをもたらすのだ。もちろん、アニメの空気感や文脈に沿ったコラボであることは前提である。
そして、それらの成果を市民に示していくことで、マケインファンのみんな豊橋を楽しんでくれてありがとう、豊橋を応援してくれてありがとう、またおいでん、となるまで市民(非アニメ視聴層)の認識が進めば、分断の時代においては、かなりの成功と言えるのではないか。
③豊橋のありのままが、聖地という観光資源になるメカニズム
その程度で良いのか?何か大々的な投資などは必要ないのか?必要ない。なぜなら、信じられないかもしれないが、豊橋の今のありのままが、ファンへの価値になり、観光のモチベーションになるからである。
その価値は、他ならぬ八奈見ちゃんたちが、瑞々しく豊橋市内各地を彩っていったものなのである。
今のありのままとは何か。ここにマケインの特徴がある。それは八奈見ちゃんたち登場人物が豊橋市民であるが故の圧倒的な聖地の物量だ。
マケインの聖地は、北は新城の諏訪神社、南は田原の海水浴場、東はのんほいパーク、西は竹島水族館と、豊橋+東三河全域に存在する。特に、豊橋駅周辺〜前畑電停までの半径1.5km圏内は、劇中ワンカットに登場する地点まで含めると15箇所以上が存在する聖地密集地帯だ。
正直この1.5km圏内、豊橋市民にとっては、一体どこに観光スポットがあるの?となるエリアだ。だがファンにとってはここが観光地なのだ。豊橋の美味しいものを幸せそうに食べている八奈見ちゃんがいるかもしれないエリアなのだ。
今にもマリオが出てきそうなUSJを想像していただきたい。マケインファンにとって、豊橋の街はそれに近い存在なのだ。
とはいえもちろん、ここはあくまで街、テーマパークではない、という節度を持って観光するのである。それが聖地巡礼の行動の基本であると、ファンたちは知っているからだ。
④マケイン、そして八奈見ちゃんがもたらした、リピーターを生み出しやすい構造
そしてそのボリューム満点な聖地の中には、ボン.千賀、むらたのたこやき、ヤマサのちくわに代表される、八奈見ちゃん以外の人は1日で全制覇するのは無理!というボリュームの食スポットがある。
つまり、聖地そのもの・そこで食べるものという圧倒的物量の二段重ねによって、市民にとってはごく普通の豊橋の街が、観光リピーターを生み出しやすい構造に、目には見えないものの、進化しているのだ。
そしてこの圧倒的物量は、原作小説が続き、アニメが続いていくと、まだまだ増えていく。マケインの原作小説は8冊が発売されており、うち3冊がアニメ化されている。
アニメの続編の製作には時間がかかる。特にマケインは背景の絵で豊橋のどこかがわかるような細かい描き込みが持ち味であるため、続編の製作には相応の時間を要する。続編の製作が確定したアナウンスは、24/11/8現在まだない。
⑤「マケインフィーバー」は、豊橋の再生物語につながるか
コンテンツの賞味期限が非常に短い昨今の中で、八奈見ちゃんがもたらしたこの好機を逃すことなく、続編の製作を確定させられるか。続編製作期間の間、細く長く今の熱量や人気を継続できるか。ここが、豊橋市の観光産業の今後を大きく左右すると言っても過言ではないポイントではないか。故に、前述の通り、大きな投資のようなカンフル剤的施策ではなく、規模の継続、応援の継続こそが非常に重要なのだ。
愛知県内の「負けヒロイン」豊橋が、八奈見ちゃんとともに自己肯定感を取り戻す物語は、まだまだ始まったばかりなのかもしれない。