2024年10月5日
その人の書く文章を初めて見つけたときのことは今も鮮明に覚えている。最近書かれた文章も、ずっと先に書かれるであろう文章も私を撃ち抜くことを信じている。
一時間半ほど、電車に揺られて、歩けば海が見える街に辿り着く。
海とは反対方向の坂を登っていく。
振り返れば、街が遠く、雨が時折降り、やがて夜が訪れる。
下書きを何度書き直しても、
本文には断片的な言葉がだけがいくつも並び、件名は空白のままで、
送信ボタンは一向にアクティブにならない。
やがて、いくつかの下書きは宛先を失い、滞留する。
他の誰かでは例えることができない、代わりのきかない人のことを私は確かに知っている。