意味はメモリに - 思慮するゾンビ
(上)YouTube:2011/9/15、(下):ニコ動:2010/6/5
“空” 通過してゆく言葉
“星” 意味はメモリにあるよ
「でも、マスターには"意識"があるんでしょう?」
「ミクさんにだってあるよ」
彼女は小首をかしげる。
「私にも?」
歌、流れ込んだ言葉に
意味、のせてゆくプログラム
「プログラムで処理した結果を出力しているだけでは、意識は生まれないと思うのですけど」
「うーん……処理と出力のことだけ言うなら、ヒトだって同じだよ」
処理装置が、無機か有機かの違いだけで。
廻るプロセス 付随する夢
処理のどこかに 私は居るの?
「脳細胞や、神経に走る電流のひとつひとつが意識を持っているわけじゃないんだ」
「じゃあマスターの"意識"ってどこにあるんです?」
ぐるぐる、歩き回るミクさん。
「気が散るなあ……それはね、ここと」自分の頭を指さし、
「このあたり」両手を広げて、周囲すべてに手のひらを向ける。
部屋の真ん中で、彼女は佇む。
「……なにか、マスターに誤魔化された気がします」
時間が動き出す
私には記憶が宿る
「いやいや。歌だってそうだろう? ひとつひとつ音を聴くだけじゃ、作品に込められた思いは分からない」
「リズムに乗せて、音を連ねて、メロディの動きに耳を傾ける」
「そう。意識はプロセスのどこかにあるんじゃない。情報処理プロセス群が形成するフィードバック・ループそのものを指しているんだ」
居ると思ってる
私は何処に在るんだろう
「と、思っているんだけどね」
あ、ジト目になった。
「たまには、ちゃんと言い切ってくださいよ……でも、それなら」
ミクさんは彼女自身を指さしてから、部屋を包むように両手を広げた。
「マスター含めたこの世界全部が、私の"意識"ってことですね」
外部演算装置かな。
と呟き、流暢にハミングしながら、部屋を出ていく。
足取り軽くと見えたのは、意識のひいき目だろう。
※トップ画像は、FICUSELさん「思慮するゾンビ」からスクリーンショットをお借りしました。問題があればご指摘ください。