…え?
隣にいたはずの友人がそこにはおらず、
私は現状を把握出来ませんでした。
「れふとさん!大丈夫!?」
ふと右後ろ、1M程頭上に、友人が心配そうな顔をして私の安否を叫んでいました。
…なるほど。
手すりを持ったその手を軸に、直立不動状態のまま
階段を7,8段程、滑り落ちていたのか。
えっ、なんで痛い痛い怖いどこも打っ…
はっ…痛いっ、
どうし、えっ痛いあっ?確かに痛いっ
…あと、よく見たら友人笑い堪えてる。
状況を理解した途端、極度の緊張から解き放たれた為か、
首と腰に鈍痛が襲いました。
「初めて見ました…15段くらいある階段を3歩で降りきる人…」
雪の神秘的なムードは一瞬にして無となり、
友人は涙目になりながらタクシーへ乗り込んで行きました。
痛みと、切なさと、ほんの少しの悔しさから、
私はうっすらブルースリーっぽい表情で、タクシーが見えなくなるまで、
手を振って見送りました。
痛みと、切なさと、ほんの少しの悔しさからか、
その日私は初めて、声にならない吐息が音もなく流されていく、
そんなお風呂に入りました。
明日はいつもより早起きします。
それではまた、雪の日の階段付近でお会いしましょう。
お休みなさいませ。