夫の発達障害【日常の困りごと⑧自他境界の欠如】

夫の特性で、厄介だなあと思うことは数あれど、自他境界のなさもその1つ。

自他境界とは分かりやすくいうと、「自分と自分以外の人間を別ものとして認識する」こと。

参照:「誰にでもいえる自他境界」|ADHD-COACH

この部分が曖昧だと、「自分が思っていることは他のみんなが思っていること」だと思い込む。

たとえば、自分が楽しければ相手もきっと楽しいはずだし、自分が好きなものは相手もきっと好きに違いないと信じてしまう。

夫の場合もまさしくこれ。
この性質から、私がとくに困っているのは、夫が「ひとの物を勝手に使う」ことだ。

たとえば、私が買っておいたものを、無断で使う。
飲み物でも、紙でも、用途があって購入しているのに、
彼にはそれが見えない。
いや別に、事前に一言あれば「どうぞ」と返すのだけれど、勝手にされるとやっぱり何だかもやっとする。
これがよくいわれる「お前のものは俺のもの」というジャイアン思考なのだろう。
だけどまあ家庭内においては、それほど大した問題ではない。

問題は、これを外でも無意識にしてしまうこと。

たとえば、私の友人一家の家に遊びに行って、みんなで談笑しているときに、夫が無言で立ち上がり、全員「?」となったことがある。
みんなが彼の背中に視線を送る中、彼は、当然のように友人宅のお手洗いに入ろうとしていた。

私はあわてて、
「一声かけてから行きな」
と言った。
すると彼は焦ったのか視線を泳がせて、
「あ、ああ、トイレ借りる」
と私に言った。
いや、家主に言え。
友人は「はーい」と答えてくれた。

それからまたあるときは、私の知人宅の駐車場で、無断で水道を使おうとしたこともある。このときも私があわてて止めた。
ひと言の断りもなく、なぜ他所様の蛇口をひねることができるのか。
そんなの窃盗じゃないか。

けれど止めたところで、彼には何がいけないのか分からない。
「だって、そこにあるじゃない」
「俺なら気にしない」
と不満げに顔を顰めるだけだ。

こういうところ、ほんとうに困る。
最近では一緒に行動する機会を減らしているから、前ほど頻繁にこういう場面に出くわさなくなったけれど、根本的には何も解決していない。
ひょんなきっかけで、きっとまたやらかすだろう。


それから、彼が報連相が苦手な一因としても、この自他境界の不明瞭さがあると思う。

連絡ができないせいで、
せっかく手の込んだものを食卓に置いておいても、
「時間ないからいいわ」
と直前になって言われるし、
3日もの間家を空けるという連絡も「今から行ってくる」と22時過ぎにLINEで寄越したりする。
その3日間、娘のことはすべて私がみなければならなくなるのに。
私にも仕事があるし、買い物の都合もあるし、使い切らなければならない食材だってある。
そういうことが、彼には見えない。自分のことじゃないものね。

何度言っても治らないので、これに関してはもうはじめから夫ありきで行動するのをやめるしかない。

夫が食べるだろう。
夫が帰ってくるだろう。

こういうことを、私は日頃からあまり意識してはいけない。
何て歪な夫婦だろう。
書いている今も、自分でちょっと心臓が痛くなる。

でも、そうすることでしか、私のダメージを減らす方法が見つからないのだ。

ないものとして考えていると、たまに事前連絡があると、すごく気持ちが楽になるし。

「いつもできないわけではない」のが、夫のADHDだ。
だから何年もの間、夫がやらかすたびに、
「やればできるんでしょ、じゃ何でやらないの」
と、かなりストレスを感じていたけれど、そうじゃなかった。
「できるときもある」だ。

時間はかかったけれど、私もようやく、「できない」ベースに移行できてきた気がする。

これまで述べてきた困りごとのうち、解決できたものは1つもない。
たぶん、本人が自覚して、処方されているコンサータを飲むなりしてくれれば、改善されることもあるだろう。
でも、夫はそれをしない。
これも、【しない】ではなく【できない】のだろう。

だからもう、困りごとの解決なんてしようとしないのが一番だと思う。
できないものはできないのだから、仕方がない。

誰だってそういうところはあるよ、ともし第三者に言われれば、
「いや夫の場合人より桁違いでできないことが多いんです」
と反論したくはなるけれど、
そう言ったところで、夫は変わらないのだからどうしようもない。

自他境界がないのだから、
私の困りごとは「俺は困ってない」になるし、
私の傷つきは「俺なら気にしない」になるよね。

ここはもう私も線引きしなければいけない。
私のダメージを、彼と分かとうとしないこと。
彼に拒まれたからといって、【しない】のではなく【できない】だけなのだから、流すこと。
傷つく必要はない。

彼との生活で、今はこんな風に思うようになった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?