夫の発達障害【捉え方の変化②指摘しなくなってから気が付いたこと】
夫と私は、情報処理速度が著しく違う。
結婚して間もない頃、腰をかがめて探し物をしている夫の背中にふざけて丸めたティッシュを投げたとき、何のリアクションもなくふつうに会話をしていた夫が30秒ほどしてから「あれ?(何か当たった?)」と背中に手を回したときは驚いた。
「いま⁈」とかなりびっくりして噴き出してしまった。
遅い。とにかく反応が遅い。
これについても2人で話したことがり、そのとき分かったのは、この「遅さ」にも段階があるということだ。
まず、
①情報が脳に伝わるまでの遅さ
がある。
それから、
②脳が情報を処理する時間の遅さ
③処理した情報に反応するまでの遅さ
と、手足にリアクションとして表れるまでにそれぞれ時間がかかっているらしい。
このことを知ってはいたけれど、
私には私の速度があって、瞬間的にその場面の彼を理解できず、怒り・不信の感情が湧くことが多い。
けれど、私が彼に「ミス」を指摘しなくなって気が付いたのは、
やはり「彼には彼の思いがある」ということだ。
ただ、それが表に出てくるまでには、人よりもすごく時間がかかる。
だから私が指摘しまくっていた頃は、それがこちらに伝わる前にいちいち責めてしまっていた。
たとえば、子どもが「一緒に食べよう」と言っているときに、彼が黙って洗い物を始めるとする。
すると私は「なんで今それ⁈(子どもの気持ちは?)」と腹が立つ。
だから私の第一声として「何してんの?(怒)」となりやすい。
だけどそれをぐっと堪えて彼の行動を無視していると、
ある程度洗い物を終えた彼はフライパンを取り出し、子どものために目玉焼きをつくり出したりする。
その段階になって初めてこちらは、「ああ、もう一品出してあげようと思ったのね」と分かる。
はじめから彼が「一緒に食べよう」という娘に「目玉焼きつくるね。そしたら一緒に食べようね」とか言えばいいんだけど、彼にはそれができない。
だから娘を無視して勝手な行動をしているように見えてしまう。
一つひとつの動作にも時間がかかる人だし、
その間何も知らされず、無視されている状態で待たされている私たちはイライラする。
でも、彼の内側ではたぶん、「娘にタンパク質を!」という気持ちでいっぱいになっている。
私がすぐにイライラを出していた頃は、
そんな中突然妻から「何してんの?(怒)」と怒られて、
「娘のために一生懸命してるのに!」と彼もすぐに怒りが爆発していた。
彼がキレるのはたぶん、「こんなに頑張っているのに思いが伝わらない!」
というところがけっこうある。
揉めなくていいところで、ものすごい大げんかに発展する。
これがうちの常態だった。
私からすれば、「それならそうと言えよ」なんだけど、
それができないのが彼なのだから仕方がないのだろう。
私に求められるのは、「待つ」ということだと思う。
でも、「待つ」には期待も含まれるし、いつも彼がそんな気持ちで行動しているかといえばそれも違うので、基本的に「待つ」より「無視」でいいんだと思う。
とにかく、「すぐに彼に反応しない」こと。
何かまた場にそぐわないことやってんな。
と思っても、すぐにイライラを彼にぶつけない。
そうしたら、もしかして彼は彼なりに貢献しようとしている最中かも知れない。後でそれが分かるかも知れない。
・言葉で伝えられない
・何をするにも時間がかかる
この2点のためにこっちはけっこうイライラするのだけど、
私が最も回避したいのは娘の前で衝突することだから、
もう諦めて「無視」に限るということを私もようやく学んだ。
今そこ拭いて欲しいんだけどな、とか
娘が泣いているんだから手が空いているならあやしてよ、とか
場面場面でこちらの思いも当然ある。
でもそれは、そもそも彼がキャッチしていない情報であることが多い。
もちろんそのこと自体にもイライラはする。
こちらに余裕がないと「それくらい分かれよ」と思ってしまう。
だけど淡々と「そこ拭いて」と言えば、彼は拭く。
「拭いて」といわれてから拭くものを探してもってきて、実際に「拭く」までに時間はかかるけど。
これを読んでくださっている方の中には、「それくらいでイライラするなよ」という人もいるだろう。
「悪気はないらしいじゃない」と。
そうかも知れない。
でも、情報処理のスピードが違うことは、私にはかなりのストレスだ。
こちらに余裕がないときはとくに。
そして、彼の思いが表出するまでにはとにかく時間がかかる。
ある場面が終了してから表れてくることも多い。
だからその瞬間には、あたかも「悪意あり」に「見える」ことがある。
それをぐっと堪える練習は、私にとってはけっこうしんどいものだ。
ただ、今は少し理解している。
彼には彼の「思い」があるらしいということ。
なんだかんだありながら、私が現在も3人での暮らしを解除していない理由は、ここにあると思う。
首をしめられてまでなぜ離婚しないのか。
自分でもかなり揺れる。
何度も何度も過る。
でもたぶん、私たちに重要なのは、「距離」だ。
次回はそういうところについて触れたいと思う。
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