10時間の書くワークで得た文章テクより大切なこと
参加者54人が大きな円になった。
1人ずつ、自分のことを伝えるために、書いた文章を読み上げていく。上っ面じゃない言葉が続く。300文字に満たないであろう文章に、ギュッと凝縮されたその人の思いが詰め込まれている。
涙ぐみながら愛を探していると話す人がいた。ウソつきな過去がいまの自分を苦しめると話す人がいた。ユーモアあふれる自分を見失っていると話す人がいた。
まるで短編小説を54作、聴いているかのようだった。どの発表も一言一句、聞き逃がせなかった。あぁこれが表現なのだと思った。
伝わる・揺さぶる・文章を書くために
1泊2日のコルクラボ合宿は、「伝わる・揺さぶる・文章を書く」をテーマにして行われた。講師は、山田ズーニーさん。ズーニーさんは高校生の論文指導を行ったり、ほぼ日で連載コラムも執筆したりしている。
初日と2日目、合わせて10時間を超えるワークだったが、いったい何をやっていたのか。
ひたすら、自分と向き合っていた。
文章テクニックとかを習ったんじゃないの?と思うかもしれないけれど、やってたのはホントこれだけ。
ズーニーさんがワークを通じて話していたのは、誰にでも「伝えたい想い」があり、それを書くことで表現できるということ。文章表現のすべての源泉になるのが、ズーニーさんの言葉でいうと「根本思想」だ。
周りにどう思われようがいい、自分の本当の想いを書いてほしいと、ズーニーさんは本気で迫ってくれた。だから、ごまかせない、ごまかしてはいけないという気持ちになれた。
もう少し具体的にワークで何をやったのか、整理してみる。
①問いを立てる
伝えたいことなんて、すぐに見つかるわけはなくて、自分の考えを導くには良質な「問い」が大事になる。で、2人1組のインタビューワークを行った。時間軸を現在・過去・未来に広げた質問を受ける。
②考察する
インタビューで自分が関心のある問いがあれば、さらに考えを深めていく。思考を深めないと書いた文章がウソになる。自分の頭で考えることで文章表現のベースができる。
③伝えたいことを決めて書く
ここでようやく文章を書く作業になる。これだけは伝えたい、これを言わないと自分じゃないことについて、制限時間30分でベストを尽くして書く。
④全員の前で発表する
円になってそれぞれが書いた文章を発表する。最初の1文、第一声が大事。「緊張しています」「頭が真っ白です」、よけいな前置きは、表現の印象を大きく損なう。
まとめ
僕は自分の出自だったり、家族のことだったり、こんな大勢の前ではしたことがない話をした。さらけ出したことで心が重くなったけれど、自分なりの納得感はあった。
ズーニーさんのワークは、「相手に響くように伝える」「社会に説得力を持って書く」とステップを踏んでいくのだけれど、ベースになるのは一番伝えたいことを出し切る。ドン引きされたっていいということ。
そう、そこから文章表現ははじまる。
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