
編集とはなんだろう?と考え続けてひねり出した言葉
編集とはなにか?
出版社からはじまり、ウェブメディア、クライアントワークと環境は変わっているのものの、気づけばずっと編集者でした。
それなのに、編集について明確に定義できなかったのですが、うんうんと考え続けていたら、こんな言葉になりました。
編集とはなにか?ってことをずっと考えてるのだけれど、その人の魅力を深く知ってたくさん引き出すことだと思う。そして適切な人にその魅力を届ける。もちろん対象は人物じゃなくてもいい。会社だったり商品だったりサービスだったりする。僕がやりたいのはそういうことだ。
— 高林ゆうひで|Web編集者・ナイル株式会社 (@takataka578) February 14, 2020
編集とは、人や企業の魅力を引き出して、適切に届けること。
この定義は真新しいことでもなんでもなくて、さまざまな影響を受けているのですが、自分のなかでは納得感のある言葉です。
編集って、一般的にはどんなイメージなんでしょう。編集者=本や雑誌を作る人?少なくとも僕はそう思っていた時期があります。そこから個人や企業にも、編集を活用できる場面がたくさんあるんだなと気づきました。
編集についての考え方がどう変化してきたのか、自分自身のキャリアを振り返りながら、そのプロセスを記しておこうと思います。
「作る」だけから「届ける」を意識する
僕の編集者としての始まりは、小さな出版社でした。本や雑誌を作りたい!という気持ちだけだったので、とにかくガムシャラに働いていました。めっちゃ徹夜してたな…。このころは、編集は情報を集めて本や雑誌の形にすることだと考えていたように思います。
そしてウェブメディアの世界へ。編集長としてメディア運営を任されていたのですが、編集未経験のメンバーもいたんですね。どういった作業をすればいいのか、マニュアルを作って共有していたこともあって、「編集とは何か?」を考える機会がグンと増えました。
ウェブメディアの転換で、いちばんの大きな変化は、「記事を届ける」という意識が強くなったこと。
出版社であれば、担当した本は書店に並びます。それもまた営業の努力があるわけですし、届け方を考えている紙の編集者はたくさんいるのですが、僕は出版の流通網に甘えていたんですね。届ける意識が低かった。
一方でウェブメディアだと、記事を作って公開しただけでは何も起こりません。びっくりするくらい無風状態…。だから記事を届ける方法について、ひたすら頭を悩ませていました。Twitterもめちゃくちゃ使っていたし、Facebookでシェアしてもらうためにどうすればいいのか試行錯誤していました。
ウェブメディアの経験から、編集者は「記事を作る」だけではダメで、「記事を届ける」ことを考えなければいけないのだと思うようになりました。
企業にも「編集力」は活かせる
そして、今はナイルという会社で、クライアントワークをやっています。ナイルは、SEOやコンテンツ制作での集客支援をしていて、僕はコンテンツ部門に所属しています。
企業が商品・サービスを広めたいときに、コンテンツ制作を中心にして支援しているんですね。詳しくはこちら↓
初めてのクライアントワークに若干の不安はあったものの、編集という仕事の本質は変わらないのかもしれない、と感じる場面が多くありました。
企業の商品・サービスのことを知って、魅力や強みを引き出していく。そして情報発信をすることで、適した人に届けていきます。
本作りにおける編集も同じです。著者の魅力を知って、テーマを決めて、本を届けるという作業になります。クライアントワークでは、対象が「人」から「商品・サービス」になったということなんだなと。
編集者天国である。むちゃくちゃ「編集」というスキルの需要がある時代になっているなぁと実感している。これまでは出版に閉じられてたスキルだったのが、企業でも求められている。事業やサービスの魅力を引き出して、どう情報発信していくかまでをやっていく。こんな時代がくるとは…
— 高林ゆうひで|Web編集者・ナイル株式会社 (@takataka578) December 11, 2019
企業にも編集力を使えるということが、クライアントワークしながら、実感を伴っていったのです。
だれもが編集をしながら生きている
だいぶ前から、SNSやブログによって個人が情報発信できるようになりました。そこにも編集を活用する余地があります。どんな情報をどうやって届けるのかはまさに編集ですよね。
もっと言うと、編集ってめちゃくちゃ広く定義することもできます。イシス学校の松岡正剛さんの言葉を借りると、「人々がコミュニケーションすること」も編集です。頭のなかの情報をどう伝えるか、だれもが編集しながら生きているのだと。
こう考えると、編集者ができることって無限にあります。これは編集者としてやってきてよかったんだなと、はしゃいでしまうくらい、嬉しい気づきでした。
「編集」という武器を使ってやりたいこと
あらためて編集とは、
①魅力を引き出す
②適切に届ける
この2つができることではないかと思っています。
「魅力を引き出す」のは、対象となる人や企業の魅力を引き出していくこと。本人も気づいていないような魅力の場合もあって、そっと導いていけるとベストなのかなと。
「適切に届ける」は、やみくもにたくさんの人に届けるよりも、適した人へ適したことを届けるのが大事なのではないかと考えています
僕は「編集」という武器を使って、たくさんの魅力を伝えることをしていきたいなと思っています。対象になるのは、企業であったり、個人であったり、時には身近な人だったり、家族であったりするかもしれません。
編集って、とてもステキな能力なのです。
補足として
編集ってなんだろう?と考えるにあたって、コルクの佐渡島庸平さん(めちゃくちゃ影響受けてます)、NewsPicksの佐々木紀彦さん、inquireのモリジュンヤさん、WORDSの竹村俊助さんなどの編集論を参考にさせてもらいました。名前を挙げたらキリがないのですが…。補足として紹介しておきますね。
佐渡島庸平さん(コルク代表)
編集という行為は、大きく分けると「コンテンツの質を強くする」コンテクストを作る」二つだ。そして、この二つをやるために「プロとしての素人目線」が必要になる。
佐々木紀彦さん(NewsPicks)
「編集」の技術をメディア業界の人間だけで独占しておくのは大変もったいないということ。編集というスキルはとても汎用性が高く、むしろメディアの外、ビジネスの世界でこそ生きるものです。
多くの人が「縦割り」から抜け出し「横串」でさまざまなものをつなげる編集思考を身につければ、多様なキャリアがあふれ、多様なビジネスがあふれ、日本全体が、もっと活力にあふれていくはずです。
モリジュンヤさん(inquire代表)
今、「編集」という領域への注目度は、むしろ編集外で高まっています。店舗など実空間をメディアと捉える動きもあり、リテールなどのビジネスにおいて編集者的な役割が必要になるという話がされることもあります。経営や事業づくりにおいて言葉やストーリーの重要性が注目されることも増えています。どこも編集者が価値を発揮できるはず。
竹村俊助さん(WORDS代表)
ぼくは今後、経営者に編集者がつく時代が来るんじゃないかと思ってる。顧問弁護士、顧問税理士みたいな感じで、顧問編集者がつく。仕事は広報に似ると思うけど、決定的に違うのが「社外の目」であるところ。情報を発信する側ではなく、受け取る側から見てディレクションできる存在が必要になると思う。
— 竹村俊助/編集者 (@tshun423) June 24, 2019
中村明博さん(ダイヤモンド社)
編集者のスキルは『人や企業の「強み」をわかりやすく伝える』に集約される。「本」「雑誌」などと媒体が違うだけで、やることは同じ。これから編集者の主戦場は
— 中村明博【編集者】 (@naka727) January 31, 2020
①書籍
②コミュニティー(SNS)運営
③コンサル
になると予想。「ダイヤの原石を見つけ、研磨する力」がさらに問われる。
徳谷柿次郎さん(Huuuu代表)
編集者の役割はあらゆる「境界線」を溶かすこと。情報や知恵、人を集めて編むことで、狭くなってしまった専門性や思い込みを取り払うことができる。仕事の醍醐味は広い間口を作って、知りたい人へ届けられること。全く以て万能な存在ではないけれど、常識や規範に囚われず好奇心を満たすことができる。
— 徳谷 柿次郎@編集者 (@kakijiro) March 13, 2020
池田園子さん(プレスラボ代表取締役)
編集論、随時更新中ですー