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オンライン授業開幕おそるおそる

東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻の「生物統計学」講義は,4月9日(木)同16日(木)の試行回を経て,いよいよ4月23日(木)から正式スタートとあいなった.先月からの短期決戦準備とたった2週間の試行ではたいへん心もとないのだが,誰も予想しなかった緊急事態なんだから,まあしかたないでしょう.それよりも,これからの十数回のお座敷をちゃんと務めあげられるかが大問題.そのためにも初っ端はとても大事だ.

1. TA配置と作業分担

とてもありがたいことに,専攻の手配により,受講生のなかから助手(TA)を1名配置してくれることになった.さっそく下記のような仕事の割り振りと分担を調整した.

1.1 Slack チャンネルの「管理者」

これまでの試行の経験から,講義開始時のSlackチャンネルの参加申請に時間が盗られることがわかったので,TA氏をSlackの「ワークスペース管理者」に登録し,バックヤードでの作業を依頼した.

1.2 Zoom 会議室の「代替ホスト」

さらに,Zoom会議室の入室にも手間がかかるので,Zoom 会議室の「代替ホスト」としてTA氏を事前登録した.いったん代替ホストとして登録しておけば,毎週の会議室での「共同ホスト」としてバックヤードでの仕事をしてもらえる.代替ホストではない共同ホスト指定もできるのだが,その場合は会議室を開室して,いったん入室したあとで毎回ごとに共同ホストであると指名しなければならない煩わしさがある.代替ホスト指名だと一括して共同ホストになるのでとても便利だ.

1.3 Zoom 会議室の「録画」,その他トラブル対応

Zoom 会議室の録画については,毎回の開室前にワタクシが録画を開始し,クラウド保存することになった.また,これまで同様,さまざまなトラブル対応は Zoom チャットや Slack チャンネル経由で個別対応することになった.

2. 初回のオンライン講義

前日4月22日(水)の時点で受講予定者は「77名」と大幅に増えていた.ITC-LMS にも数々の「お知らせ」を事前に配信したのだが,受講者の “開封率” がとても低いのはどーしてだろうか.必要な情報が迅速に受講生に伝わっていないのではないかというそこはかとない不安が広がる.

当日,午後2時過ぎには Zoom 会議室を開室する.いろいろセットアップは完了.午後3時前の定刻前後にどーっと入室があったが,TA氏と分担して軽やかにさばくことができた.結局55名ほどの受講生が入室.授業内容は初回ということもあり,試行回の軽い復習と概論的な噺が中心で,最後に R と R コマンダーを用いたコンピューター実習を少し行なった.

東京大学は講義時間が「105分」という長丁場なので,試行回で行なったように「(25分講義+10分休憩)×3=計105分」という “インターバル化” をすることで,受講生の集中力を保つと同時に噺役であるワタクシの体力と気力の温存を図った.

初回講義の録画ファイルをのちほど確認したところ,動画+音声+チャットの合計で547MBのサイズであることがわかった.常識的な範囲内に収まってよかった.今後の回では動画部分が少なくなるはずなので,もう少しスリム化できるだろう.内容を確認した上で,受講生にはURLをアナウンスした(Zoom Pro の東大アカウントのみ視聴可能かつダウンロード不可).なお,事後の録画確認は代替ホストにはできないようだとTAから聞いたがこの点は要確認事項.

3. パソコンを用いたリモート実習

対面講義のコンテンツを「100」とすれば,オンライン講義は「60」くらいの分量か.スライドpdfは事前に ITC-LMS を通じて配布してあったので,解説については対面のときと大きく変わりはなかっただろう.問題が生じるとしたらPC実習の場面かもしれない.対面のときは実習中に何らかのエラーが生じたら,そのつど個別に対応できた(隣同士で教え合うこともできた).しかし,リモートなのでネットの向こうのばらばらの受講生たちが順調に進めているのか,トラブって立ち往生しているのかがすぐには見えない.何か問題が生じたらそのつど Zoom チャットあるいは Slack チャンネルに書くようにと言ってはある.

エラーが発生した箇所を知る上で,該当画面のディスプレイをキャプチャーして画像として送ってくれると対処しやすい.少なくとも R のインストールでのフシアワセについては,Slack のダイレクトメッセージで質問が寄せられ, “遠隔画像診療” して解決にいたった “症例” がいくつかあるので,今後もこのやり方で大丈夫ではないかと思うのだが,もう少しようすを見てみよう.

ワタクシの場合,講義に使用するパソコンは MacBook Pro で,macOS Catalina 上に Parallels Desktop を入れ,そこに Windows 10 を置いている.受講生の使っている OS は macOS と Windows がほぼ半々なので,R も両 OS で使えるような環境を用意した.

実習に際しては R の画面でのキー入力やグラフ出力などを示すのだが,Zoom で「画面共有」して「注釈」を記入する機能を用いると受講生への便宜が図れる.具体的には,下記の手順になる:

1)Zoom にログインして「設定」>「ミーティングにて(基本)」>「注釈」ボタンをオンにする.
2)Zoom 会議室で「画面共有」後のメニューにある「コメントを付ける」を選ぶと注釈ツールボックスが現れる.

これで画面上にさまざまな描画や記号入力あるいは文字コメントの注釈を付けることができる.なお,ディスプレイ画面の拡大縮小は各受講生が必要に応じてピンチアウト/ピンチインすればよい.将来的に iPad Pro と Apple Pencil を(自費で)導入すればさらに快適な R 実習環境が提供できるかもしれない.

4. 終わりに —— 試練は続くよ,どこまでも

めっちゃ疲れた初回オンライン高座.大きなつまづきがなかったのは幸いだった.TAさんがバックヤードを分担してくれることになったので,お座敷に集中できた点をここで注記しておく.大人数のオンラインお座敷は,同規模の対面講義と同じく,スムーズにまわすためにはマンパワーが不可欠だ.

その後,受講生名簿はさらに増えて「82名」となった(4月26日現在「84名」).対面講義だった年はだいたい40名が平均だったので,ざっとその2倍になっている.オンラインだと受講のハードルが低くなるのだろうか.履修登録はまだ先らしいので最終受講者数は未確定だが,きっと例年よりは多くなるだろう.

次回からは本格的なパソコン実習に入るので,どんなフシアワセが講師と受講生の上に降り掛かってくるのかは予想がつかない.

狙いすましたように最新バージョン R-4.0.0 がリリースされるらしい(4月25日リリース).オンラインR高座が始まったばかりなので,いまこの時期にメジャー・アップデートの “人柱” になるのはちょっとムリかも…….巨大なフシアワセが降臨したら目も当てられないし.受講生たちにもあらかじめ「R-4.0.0 には当分近づくな,キケン」と太い釘を刺しておいた.今までだったらエイッと飛び込んで「人柱日録」とか書く余裕があったが,オンラインお座敷という深刻な “基礎疾患” を抱えてしまったので,さらなる大冒険をする心の余裕はない.とりあえずは “電柱の陰” からそっと覗き見しよう.

試練は続くよ,どこまでも.日々是修行.

[2020年4月24日|2020年4月27日加筆修正]

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