雪の日の音
国境の長いトンネルを抜けると雪国だった。
夜の底が白くなった。
川端康成がノーベル文学賞を取ったのはこの二文と英訳があったからだ、と
信じてやまない。
the bit of the night turned white
この静かな文体と日本語的な英語表現がとても好きで、雪が降るといつも反芻してしまう。そして、私にはまだまだ静けさが足りないな、と思う。
今回もそんなことを考える、2月1日の薄雪。
蓮沼執太も、雪の後は音が落ち着いていて、環境音を録音すると普段とは違う聞こえ方をする、と言っていた。地面に少し、音が吸われたような残響感。音にはならなくても確かに存在する粗い粒子。その気配が後ろ側に居座って、音に奥行きを出していく。
この感覚を共有したいから、雪の日は誰かに会いたくなる。