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出発

連日、2011年3月11日のことを書いてます。
と言っても当時のmixiから転記しているだけですが…​


朝食はホテル内の喫茶室を借り切って8時に全員で摂ることになっていた。 小田急は少ないながらも動いていたのですぐに出発するつもりで荷物をもって出た。
みんなすぐに帰宅できるような状態で出てきていたが、一人だけ違った。 仙台の同僚はスッピンにボサボサ頭でスリッパをはいて出てきたのだ。

長身美人な彼女。会議で会う時はまったくスキのない完璧な服装、メイクで 「必死すぎ」にすら見えていた彼女が何もかまうことなくたたずんでいる。 手に携帯を握りしめて喫茶室のテレビに釘づけになっている姿は 何も言わなくてもまだ家族の安否がわからないと確信できて見ていられなかった。

そんな状況でも私たちはしっかり食べた。昨日は12時にバスの中でお弁当を食べてから22時を回るまで何も口にすることができなかった。今日もどうなるかわからない。食欲なんてあるわけないけど、でも食べよう。しっかりと食べよう。食後のコーヒーはおかわりをしてじっくり飲んだ。次にいつ飲めるかわからないし。

食事をしているときに世話役の女性の妹でもある後輩に話しかけられた。
「かおりさん、田園都市線を利用して帰ることはできませんか? 夫が新横浜から田園都市線の駅まで送るので一緒に新幹線で帰ってください。」
理解不能な申し出に戸惑ったが彼女は新横浜駅で一人になるのが怖いとのこと。

新幹線で新横浜まで行くのは速いけれど乗り継ぎが多くて不安がある路線。新宿まで一緒の同僚を一人にするのも心苦しいし、と非常になやんだ。 が、私が新幹線に乗らないと怖がりの彼女と土地勘のない関西組だけで 東京駅を目指さなくてはいけなくなることに気付いた。・・・仕方ない。

「いいよ。地下鉄動いてたら地下鉄乗って帰るし、動いてなかったらあざみ野行って。」
携帯で指定席を予約していた先輩に新横浜までをもう一枚追加してもらった。11時30分の新幹線。大塚から東京までは普通なら30分。現在9時を過ぎている。通常なら余裕だけど、内周りは停まってる。外回りもどうなるかわからん。

「じゃ、とりあえず、東京駅に向かおう。うちら出るわ。」
新幹線組は荷物をまとめ次第出発することにした。首都圏組は交通が落ち着くまで待機すると言っていたが新幹線のチケット発券にも時間がかかるかもしれないし迂回しないといけないかもしれない。

ホテルを出るときに使っていなかったバスタオルとタオルを仙台の同僚に渡した。一緒に基礎化粧品とメイク、寝ぐせ直しなど一式を手渡した。なんの根拠もないけれど私は家に帰れる気がして彼女に持たせたかった。
「置いていってごめんね。また連絡して。」彼女と握手して別れた。


つづく

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