無いものは作れ!創意工夫の漂流記。
所さんの世田谷ベースというテレビ番組が好きです。
創意工夫をテーマに様々な工作が披露されるだけでなく、菜園について、音楽作り、他愛もない雑談など台本の無さそうな、その場その場で展開されているような内容で構成され、趣味に生きる生活に憧れる人はかなりツボにハマる番組でしょう。
この世田谷ベースに限らず、TOKIOのDASH村、YouTubeなどでの山を買ってそこに秘密基地を作る動画、キャンプ特集、サバイバル動画など、世の中には創意工夫がテーマになる企画や特集が多々あります。
創意工夫は人生の難局を乗り切るための知恵です。
そのような知恵を駆使して困難を乗り切り、生きていく物語は、人々を惹きつける魅力があります。
そんな創意工夫の魅力に溢れた「漂流記」があります。
僕が人生のバイブルと称する海外古典文学『ロビンソン・クルーソー』です。
放浪癖が祟って同行した船が難破し、どこかも人がいるのかもわからない島に1人で漂着。
偶然共に漂着していた難破船の残骸と、島にあるものを使い、生き残るための工夫生活が始まる……。
ざっくり書くとこのようなあらすじですが、この作品の何より面白いところは、これを「実話として」記しているところです。
いえ、これは紛れもなく「実話」なのです。
出てくる地名や主人公の名前など完全に架空ではないかと考えられますが、作品の中では紛れもない「事実」なのです。
読んでいる間は架空の話であることを忘れてしまう綿密さ。
そこにこの作品の特徴があり、面白さがあります。
漂着してからの主人公の心情、絶望感の吐露は元より、残骸を見つけて使えるものがたくさんあることに気づいた時の喜びなどが事細かに記され、主人公がその時々に感じたことを追体験できます。
何より面白いのが船の残骸に硬貨を見つけ、今何ほどの役に立とうかと嘆いて一度は何もせずに放置しようとしたところ、思い直して少しばかりポケットに入れたことを書いている点です。
話の流れにあまり関係ないようなこの細かい動作が作中で語られるところに人間臭さが溢れています。
感情描写は元より、この作品の魅力は何といってもサバイバル環境整備の描写です。
家づくりに始まり、果ては農場、畑、別荘地などを作成。
漂着していた小麦の種の生産を安定させ、石臼を頑張って自作し、窯を作ってパン作りまで成し遂げます。
島に住み着く野生の猫を飼い慣らそうとしてみたり、山羊を捕獲して繁殖を試みたりもします。
これがワクワクしないでいられましょうか。
何せ主人公は漂着民です。
やることといえば環境整備くらいしかないので、時間はたっぷりあります。
まさに、必要なことしかすることがない。
必要最低限以下のものしかないので、どうにかやりくりして作っていくしかないわけです。
作中には病気にかかってしまい、聞き齧りの民間療法を思い出しながら、色々と試していく行動も記されています。
一人ぼっちの心細さと闘いながら、自分の城を作っていく主人公。
その様子が事細かに記され、頑張れば同じ方法で同じものが作れるのでは無いかと思えてきます(実際にはかけられる時間が全然違うので難しいですが)。
無いものは作ればいいという精神を、僕はこの作品から学びました。
『ロビンソン・クルーソー』に示される創意工夫の姿勢は、どんな時代でも、どんな環境でも必要な精神だと思います。
無いものは何とかしてそれっぽいものを作ろうとしてみる。
この考え方はあらゆる局面で役に立つことでしょう。
核家族化が進み、ネットの発達、個人情報保護法など様々な要因で今人と人の現実での繋がりが薄くなっていっているように思います。
現代はまさに、あらゆる人が、人に囲まれながらにして漂流していると言えるのではないでしょうか。
そうなると、1番自分を助けてくれるのは自分しかいません。
無いものを何とかして作ろうとする努力というのは、ますます重要性を増すはずです。
細かな描写により創作なのに現実と思わせる『ロビンソン・クルーソー』は、そんな創意工夫のヒントに溢れています。
漂流者の創意工夫にワクワクしながら、自分自身の創意工夫を模索してみてはいかがでしょうか。
それではまた。