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誰が書いたかいつ書いたか、何故書いたかを読む
本をどのように読んでいるだろうか。
昨今様々な読書術の本が出ていて、読みながら考える、目次から読む、付箋を貼ると言った技術から、速読術、本の選び方などなど……。
活字離れが云々される一方で、本の読み方を紹介した本は大変多い。
読書術の本を読んでいると、やってみると面白そうだと思える内容に出会うこともあるし、実際少し意識を変えてみようと思って読み方が変わった内容もある。
そのように数ある読書術の本に影響を受けた面は確かにあるものの、自分の今の読書に対する姿勢に最も影響があったのは、大学最後の1年間で過ごした西洋史ゼミで得た読書術である。
この術を意識すれば、本をただ読むだけでなく、その背景なども含めて楽しめるようになるはずだ。
所属していた西洋史ゼミでは毎回担当制で報告会があり、担当者は、自身が読んだ論文や本の内容をB4サイズ2枚以内(だった気がする)のレジュメにまとめ、報告する
そしてその内容に対して、他のゼミ生と、教授が報告者を質問攻めにする。
読んだ本、論文の発行、発表年数はいつか。
本なら初版か、改版か。
洋書の翻訳なら原書はいつ発行されたのか。
著者は本で扱ってるテーマについては主研究なのか、主研究でないなら何故このテーマで書こうとしたか。
レジュメにはこう書いているがこれは筆者(報告者)の意見か、史料に基づく事実か、著者の解釈か。
これが著者の解釈ならこの表記は不適切では?
テーマ外なのでよく知らないのですが(知ってそう)云々
……etc
この質問攻めに耐え、自分の研究をより深く進めるには、本文の内容を噛み砕いて理解して、自分自身の疑問点を整理しておかなければならないのはもちろん、本の出版日、著者の略歴、原著の発行年などを把握し、テーマとの関連性を考えておかなければならない。
本や論文に対してこのような向き合い方を叩き込まれた1年間は、自分の読書に対する姿勢を大きく変えた。
本を開くときはまず奥付から開く。
本の1番最後のページ、場合によってはカバーの袖(?)にあたる部分に書いてる時もある、出版年月日や著者名が四角の枠内におさめられているアレだ。
本をあまり読まなくてよく知らない場合は一度探してみてほしい。
見つけたら発行年、出版社、著者名、著者略歴の順に追っていく。
発行年は「第何版」と書いている方を見る。
第何版のあとに「第何刷」と書かれている場合があるが、単なる増刷で、刷の数字が変わっていても内容に変化はないが、版の数字が変わっていれば小さな差も含め内容が改変されている(はずである。どうも刷と書くべきところを版にしている奥付が存在するようで、一概に言えなさそうだ)。
余力があればテーマとその出版年に何かしら関連がないか調べてみるのも面白い。
安易な例だが、イスラーム関連の学術書が出た年月日を調べると、対テロ戦争への関心が高まった時期だったりなかったりする。
次に出版社だが、好きなジャンルの本の出版社をまとめたら結構同じ出版社のものだったということがある。
普段出版社で意識して本を買ったり読んだりしていない場合は、尚さら出版社を見てみるのも面白いだろう。
就活生は出版社を狙うなら、受けない出版社も含めてこの辺りは意識して読んでおくほうがいいと思う(読んでいなかったせいで対応しきれなかった部分があると感じる元就活生より)。
最後に著者名と著者略歴である。
正直名前は自分が「名前」に興奮する(性的な意味はない)から挙げただけで、重要なのは略歴の方だ。
本のテーマ、小説ならジャンルは、著者がこれまで書いた本のそれと共通しているのか、少し違うのか、かなり違うのか。経歴は本のテーマと近いか遠いか。
専門が近い人が書いたものしか信用ならないとまでは言わないが、卒業学部や現在の所属と離れているものなら、内容に不備があったり類書を合わせて読む必要がある可能性を考えながら読んでみる。
経歴からテーマとの接点が見えなくてもしっかりした内容のものもあるので一概には言えない。
とはいえ批判的に読もうとする時の心構え目安にはなるはずだ。
洋書の場合は訳者の経歴も見る。
何度か遭遇しているのだが、訳者が本のテーマと離れた専門分野の人物だと、訳が読みにくいことが多い。専門的な言い回しが多くなるとその傾向が強くなる。
理想は原著の合わせ読みだが、英語力の強化が必要になるのでまずは余力でどうにかしようとするくらいでいい。
こうして奥付を読み漁り、執筆背景をある程度推測したうえでようやく本文に入る。
本文内容の頭への入り具合は格段に変わる。ただ本文を追うだけではない読書が可能になるはずだ。
さらにこれは遊びの部分ではあるが、表紙デザインや紙質の評論をしてから読んでも良い。
読書の醍醐味はやはり本文外の背景を如何に楽しむかにある。
一つの本の楽しみ方として如何だろうか。
より良い読書ライフの一助になればと偉そうにも思う。
それではまた。