口述合格体験記 第1弾 【上位合格の秘訣とは?】前編
はじめまして!
LEC田中クラス出身で、R5年予備試験合格者のYと申します。
まずは、R6年度の予備試験論文式試験に合格された皆様、誠におめでとうございます。
合格の喜びも束の間、口述式試験を前に不安を感じられている方も多いと思います。私自身も去年、論文式試験で手応えを感じなかったため、論文の合格発表日まで一切口述対策を行なっていませんでした。
もっとも、結果として口述式試験に122点(25位)で合格することができましたので、その勉強法や試験直前の過ごし方について、書いていきたいと思います。
⑴ 論文受験 ~ 論文合格発表日まで
⑵ 論文合格発表日 ~ 口述試験直前まで
⑶ 口述式試験直前 ~ 試験最終日まで
⑷ 試験最終日 ~ 口述合格発表日まで
まず、前編では ⑴ と ⑵ について触れたいと思います。
⑴ 論文受験 ~ 論文合格発表日まで
R5年度は、9/9-10に論文式試験が実施され、12/21に合格発表がありました。
自分の番号を見つけたとき、本当に嬉しかったのを覚えています。しかし、しかし、私は論文の手応えが悪かったことから、この3ヶ月間の間、口述対策は一切行なっていませんでした。
翌日冷静になり考えてみると、口述試験まであと1か月しかないことに気づき、喜びも束の間、「ここで落ちたら全ての努力が無駄になる」「他の受験生に出遅れてる」と大変な焦りを感じたのを覚えています。
もっとも、今振り返ってみれば、過度な心配はいらなったと思います。
周りに予備試験に最終合格した友人も多くいますが、合格発表待ちの間に口述対策をしっかりやってる人は極々少数しかいません。また、口述の対策は、正しい方法で行えば、1カ月あれば十分足りるものです。
ただ、当時、ロー在学1年目ということもあり、10月後半から司法試験の過去問を少しづつ解いていました。これが口述に直接結びつくわけではありませんが、刑法や民訴の過去問は、頭を鈍らせないという意味で、役立ったったのも事実です。
⑵ 論文合格日発表 ~ 口述試験直前まで
口述はもちろん、予備試験もR5年が初受験だったので、まずは「口述式試験が一体どのような試験なのか」という情報収集から始めました。
歴代の合格者が書かれているノートやTwitterを読み漁りましたが、そこで①過去問が重要であること、②定番の教材があること、③模試をなるべく受けるべきだということを学びました。
私も今は合格者の立場ですが、これらの指摘は正しいと感じています。
①過去問を使った学習について
まず、口述の過去問にについては、予備校を利用する他ないです。
過去問を出している予備校としては、伊藤塾、辰巳、LEC等があると思います。私はLEC生だったので、主としてLECからいただいた過去問と解答例を使用しましたが、伊藤塾に申し込めば条件付きではあるものの無料で過去問をいただけたため、伊藤塾の過去問も入手していました。
最初に過去問を見た時、即答できない問題がほとんどで、「あと1ヶ月で合格レベルまでもっていけるのだろうか」とショックを受けたのをよく覚えています。とはいえ、過去問の傾向を掴まないことには対策のしようがありません。そこで、(後述の)解答例と示し合わせながら、まずは読み物としてH23年までの過去問を1周しました。
そうすると、同じような問題が複数出題されていること、すなわち過去問の再出題がとにかく多いことが分かりました。つまり、過去問をしっかり網羅的に学べば、かなりの出題範囲をカバーできるということです。
(旧司の口述からの再出題もあるみたいですが、そこまでやるのは現実的でないですし、やってる人も皆無だと思うので、触れなくて大丈夫です!)
とはいえ、過去問はH23年まであり、かなりの分量になります。また、丸暗記でなくしっかり理解しておかないと、本番で頓珍漢な回答をしてしまう恐れがあります。そこで私が行なったのは以下の勉強法です。
Ⅰ 過去問を見る(解くのではなく、読んで解説が理解できるかを確認する)
Ⅱ 読んで理解できなかった箇所について、後述の基本書で理解し直す
Ⅲ 過去問を実践形式で解く
Ⅳ 基本書の通読と演習で過去問の穴を潰す
Ⅰ Ⅱ について
ポイントとしては、いきなり基本書の通読から入らないことです。
たしかに後述のように、口述には定番とされる良書があります。しかし、口述には深く問われる箇所とそうではない箇所があるため、それを知らずに闇雲に基本書を読むのでは、いくら時間があっても足りません。
また、主として問われるうる箇所は過去問において出題済みの可能性が高いため、過去問を完璧にすることで、かなりの出題範囲をカバーできます。
つまり、過去問をしっかりと理解して分析することで、再出題可能性の高い箇所の理解を深めると同時に、過去問の傾向を把握することができます。
もちろん、過去問以外からの出題もあり得ますし、過去問が角度を変えて問われる可能性もあります。そのため、基本書の通読も極めて重要です。
しかし、最初に過去問をしっかりと分析して基本書を読むことで、どういった箇所を重点に基本書を読めばいいか知る事ができ、メリハリのある通読を行う事が可能になるのです。これは、1ヶ月しか対策期間がない口述試験においては極めて重要な事だと考えています。
Ⅲ について
過去問をある程度理解できるようになった段階で、次に私が行なったのは、過去問の演習です。口述は短答や論文と異なり、理解を口頭で伝えなければなりません。そのため、演習も口述形式で行うべきです。
幸い、LECの同期(2022年の1年コース出身者)に論文合格者が複数いましたので、その方々と一緒にファミレスや貸し会議室でお互いに過去問から問題を出し合うということをひたすら繰り返しました。
また、私はローに通っていたので、ローの同期にも手伝ってもらいました。周りに合格者がいない場合には、家族に問題を読み上げてもらう、自分の回答を録音して聞き直すというもの十分効果的だと思います。
(田中コース出身者については、年明けに合格者が練習会を開催するので是非ご参加ください!)
なお、過去問教材にはLECや伊藤塾があるとお伝えしましたが、正直、過去問練習という観点で言えば、LECの過去問集の方が優れていると思います。というのも、LECのは複数の再現答案から、実際に聞かれたであろう問題を分析し、その模範的な答案が掲載されているのに対して、伊藤塾のものは受験生の再現答案がそのまま掲載されているに過ぎないためです。
もちろん、試験本番の雰囲気やレベル感を知るという意味では大変役立つのですが、答えが必ずしも模範回答ではないので、過去問演習には向いていないのです。
Ⅳについては以下で触れます。
②基本書を通じた学習について
おすすめの基本書については、同じLEC田中クラス合格者のKさんが解説してくださっているので、詳細は割愛しますが、私が使用したのは以下です。
刑事系
基本刑法Ⅰ・Ⅱ
掲載されている短文事例を用いて、友人と学校やカフェで交互に問題を出し合った。受け答えの内容面だけではなく、答え方や声の大きさ、速さもフィードバックしてもらうとなおよし。
過去問の傾向からすれば、各論からの出題が多い。そのため、Ⅱ(各論)をメインでやった。もっとも、過去問には総論からの出題履歴もあるうえ、R5年では「原因において自由な行為」等の総論の問題も受験生の間で出題予想とされていたため、Ⅰ(総論)についても最低限1週は読んだ。
大塚先生の口述対策〈刑事・構成要件〉スピードチェック講座
基本刑法の著者の大塚先生が、基本刑法掲載の短文事例問題について、口述対策という観点に特化して解説して下さる良講座。LEC配信の有料講座だが、リーズナブルな値段。
基本刑法掲載の短文事例問題の演習については、ほぼ全ての口述受験生が行うであろう超重要な学習であるが、この講座を受けることによって、構成要件問題への理解をより効率的に、より深くすることができる。
この講座のおかげで、刑事系の構成要件問題については、「何が来ても答えれる」と自信を持った状態で本番に臨むことができた。
また、ここで構成要件をしっかり固めておくことは、のちの司法試験の刑法を得意にするうえでも大いに役立つ。
刑事実務基礎の定石
こちらも定番の教材。
友人と問題を出し合う等はしなかったが、勾留の要件や緊急逮捕の要件等の暗記をしなければならない事項については、やみくもに覚えるのではなく、Ankiという暗記アプリを使って、効率的に行えるように工夫した。
この本だけで刑事系の法曹倫理問題にも十分対応できる。
基本刑事訴訟法1(手続理解編)
必須教材というわけではないものの、余裕があれば触れててもいいと思う。
刑訴の論点問題の解説というよりかは、刑事手続全体の流れに着目した本なので、この本を読んでおくと、刑事手続全体の理解がしやすく、結果として他の本を読むうえでも理解の助けとなる。
民事系
大島本入門編(+上巻)
言わずと知れた要件事実の大島本。とにかくこの本を読み込むことが、合格への最短ルートと言っても過言ではない。
入門編をマスターするのは当然ではあるが、上巻まで読むべきかについては議論があると思う。たしかに、余裕があれば上巻も読んでおいて損はない。とはいえ、上巻になると要件事実はより複雑で、覚えることも多数でてくる。
過去問を見れば分かる通り、応用的な問題(質権)が出題されていることもあるが、それも基礎的な要件事実(抵当権)を知ってれば、十分合格レベルの回答をすることができる。そのため、要件事実に自信がない方は、無理に教材を広げるのではなく、基礎的な要件事実をしっかりと深く理解・記憶するのが最優先だと思う。
その基本的な理解を優先するという意味では、大島本入門編に代えて、「紛争類型別の要件事実」という本を極めることもおすすめ。(どちらが性に合うか双方を読み比べてみるのもいいかもしれない)
※大島本は最低限の執行保全についても記載されているため、その意味でどちらか1冊という時には、おすすめではあります。
ここまで使用した教材と具体的な使用方法をご紹介しましたが、まず過去問をしっかりとつぶしておけば、どういう形式で問題が出題されうるのか、どういった点を重点的に学習すればいいのかといったメリハリの付け方が自ずと見えてくるはずなので、基本書を用いた学習効率も高まるはずです。
③模試について
短答や論文式試験については、模試や答練を受けることの価値について賛否があると思います。しかし、少なくとも口述については、模試は可能な限り沢山経験するべきだという点については、合格者の間で意見の一致をみるのではないでしょうか。
これについては私も同意見で、模試はなるべく多く経験すべきだと考えています。実際、私は、LEC、伊藤塾、Lawlabo、LSタイムズ、スクール東京等(敬称略)、合計で6回の模試を経験しました。
口述試験は、「極度の緊張のある状況において、耳で聞き、口頭で答える」と今までの試験とは大きく異なる問題形式をとります。
また、答えられなかったり、間違った回答を一回したとしてしまっても、一発アウトになるわけではなく、試験官から助け舟や誘導をもらいながら、正しい答えを考え抜くという双方向性にも特徴があります。
もっとも、試験時間が約15-25分と短く、パニックになってしまった場合に、取り返しができないまま試験が終わってしまう可能性があるという難しさもあります。
だからこそ、論文を突破した実力者であっても、本番で実力を発揮できず、口述で不合格になってしまうこともあるわけです。
そのため、とにかく形式や雰囲気に慣れて、本番でなるべく実力が発揮できるよう、しっかりとした準備をしておく必要があります。
私は、上述のように模試で場数を踏んだ結果、少なくとも形式面については自信を持つことができました。模試においても、最後の方は62,63点を安定して取ることができるようになり、それが本番での自信につながりました。(口述模試については別途記事を書く予定です)
次の後編については、口述試験前日から試験当日までの過ごし方や流れについて解説しますので、お楽しみに!