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【歌詞和訳】Dream Theater - Take the Time

歌詞本文+和訳

[Intro]
(Hold it now
止まれ
Wait a minute
ちょっと待て
Come on
さあ!
whew)

Just let me catch my breath...
ちょっと息を整えさせてくれ…
I've heard the promises
様々な約束事を聞いてきた
I've seen the mistakes
様々な過ちも見てきた
I've had my fair share of tough breaks
人並みには不運を味わってきた

I need a new voice, a new law
新しい声、新しい掟
A new way
新しい道筋が必要だ
Take the time, re-evaluate
再出発だ、もう一度考え直せ
It's time to pick up the pieces
今こそ欠片を拾い集め
Go back to square one
全てを元に戻すんだ

I think it's time for a change!
今こそ変貌の時のようだな!

[Verse 1]
There is something that I feel
何かを感じる
To be something that is real
生きていると感じる
I feel the heat within my mind
心が熱を持っている
And craft new changes with my eyes
目の中に変化が起こっている
Giving freely wandering promises
縦横無尽に彷徨う約束
A place with decisions I'll fashion
私が作り出す決断の場所
I won't waste another breath
一息つく間ももう無駄にはしない

[Chorus 1]
You can feel the waves coming on
波が来るのを感じられるだろう
(It's time to take the time!)
(今こそ再出発の時だ!)
Let them destroy you or carry you on
奴らは君を殺すか生かすかだ
(It's time to take the time!)
(今こそ再出発の時だ!)

You're fighting the weight of the world
君は世界の重みと戦っている
But no one can save you this time
けれど、今回は誰も君を助けてくれない
Close your eyes
目を閉じて
You can find all you need in your mind
探しているものは心の中にある

[Verse 2]
The unbroken spirit
不屈の魂は
Obscured and disquiet
ぼんやりしていて不安に駆られながらも
Finds clearness this trial demands
この試練の要求に応えるべく明白さを探し当てようとする
And at the end of this day sighs an anxious relief
そして一日を終え 慌ただしい中のひとときに溜息をつく
For the fortune lies still in his hands
運命はまだ彼の手にあるから

[Verse 3]
If there's a pensive fear, a wasted year
じんわりと憂いに沈む恐怖、台無しになった1年間 そんなものがあるなら
A man must learn to cope
一人の人間としてどうにかできるようにせねばならない
If his obsession's real
その執念が本当になれば
Suppression that he feels must turn to hope
彼の感じる抑圧は希望に変わるはず

[Chorus 2]
Life is no more assuring than love
人生は愛よりも不確かだ
(It's time to take the time!)
(今こそ再出発の時だ!)
There are no answers from voices above
天からの声には答えなど無い
(It's time to take the time!)
(今こそ再出発の時だ!)

You're fighting the weight of the world
君は世界の重みと戦っている
But no one can save you this time
けれど、今回は誰も君を助けてくれない
Close your eyes
目を閉じて
You can find all you need in your mind
探しているものは心の中にある

[Bridge]
I close my eyes
私は目を閉じ
And feel the water rise around me
水位が上がってきているのを感じる
Drown the bead of time
時間という雫を水に沈め
Let my senses fall away
感覚をどこかへ放て
I can see much clearer now, I'm blind
今や私は盲目だが、随分くっきり見える

"Ora che ho perso la vista, ci vedo di più"
今や私は盲目だが、随分くっきり見える

[Chorus 1]
You can feel the waves coming on
波が来るのを感じられるだろう
(It's time to take the time!)
(今こそ再出発の時だ!)
Let them destroy you or carry you on
奴らは君を殺すか生かすかだ
(It's time to take the time!)
(今こそ再出発の時だ!)

You're fighting the weight of the world
君は世界の重みと戦っている
But no one can save you this time
けれど、今回は誰も君を助けてくれない
Close your eyes
目を閉じて
You can find all you need in your mind
探しているものは心の中にある

[Outro]
Find all you need in your mind
心の中から探し出せ
If you take the time!
再出発ができたなら!

Find all you need in your mind
心の中から探しだせ
If you take the time!
再出発ができたなら!

ご注意

最後までお読みいただきありがとうございます。

この和訳を作るにあたって、母親という強力な助っ人の力を借りました(海外出身・アメリカ育ち・高学歴・読書愛好家クラブ出身。ドリーム・シアターファンではない。ファンではないが故に見えるものもきっとありそう。ちなみにラブリエが自撮りしながら一人で熱唱している動画はちょっと好き)。おそらく整合性などは問題無いかと思います。

本当はさまざまな資料を読んだり、有識者のファンの方々のご意見も参考にしたかったのですが、今の私の持てるリソースには限界があり、可能な限りで作成しました。
何より、私自身が「作品の意味を調べて楽しめるようになりたい」という思いがあって作ったものです。

どうか、肩の力を抜いて、以下の考察もお楽しみください。

注釈

“Take the Time”とはそもそも何か

様々な和訳を見て「時代を勝ち取る」「掴み取る」などの解釈を見てきましたが、母親曰く「ネイティブ的に考えるとだいぶ違う」とのことです。

皆様は”take time”(=時間をかける、時間がかかる)という言葉を習ったことはございますか?

加えて、take (the) timeは「ただ所要時間がかかる」という意味だけでなく、「時間をかけてまで、何かしらの行動を取ろうとしている」というニュアンスも隠れているそうです。

したがって、この曲は「『時間をかけて何かをしようとする』がテーマの曲」です。
ただ、問題なのは「theの存在意義」でしょう。

theの有無で、まるで全くもって意味が異なるようなフレーズは存在します。
例えば、

  • have time
    =時間がある

  • have the time
    =現在時刻を知っている

上記の2つのフレーズのように、theによって全く違う意味に変えられてしまっているものはあります。

私は一瞬「haveのケースと似ているかも」と思いました。
しかし母親的には「theによって『強さ』が変えられている」とのことです。

  • take time
    =ゆっくりじっくり時間をかけて、(のんびりと)何かをし始める

  • take the time
    =まさに今、腰を据えて、時間をしっかりかけて、何かをし始める

上記のような違いがあるとのことです。

ちなみに、海外の方々は、かっこよさやリズム感のために「勝手に単語を入れたり抜いたりする」「文法を無視する」という風潮があるとのことです。

母親は住んでいた地域柄、黒人さんが多かったそうですが、リズム感のために、

  • ”The streets is~”
    (主語が複数名詞なのにisを使う)

  • “You is~”
    (主語がYouなのにisを使う)

という、文法的に間違っている言葉の使い方を平気でしていたそうです。
今回のTake the Timeもこれと同じ類かどうかは分かりません。
ただ、英語の訳は、気楽に、肩の力を抜いて捉えていいんだなということが母親とのやりとりで分かりました。

イントロのモールス信号

イントロのギター・スネアドラムが奏でる
「タタタッ タンタンタン タタタッ」
というリズムが、「『SOS』を表すモールス信号」だとする考察がなされています。

多くの考察としては、「Images and Wordsを制作している頃の多くの苦難が反映されている」と捉えられていますが、真相は不明です。

ちなみに、このリズムは、

「はいよろこんで」
(2024年リリース 曲:こっちのけんと)

「SOS」
(1976年リリース 曲:ピンクレディー)

上記2曲でも使われています。

“Hold it now, wait a minute, come on, whew“

冒頭のサンプリングフレーズです。

少し話は逸れますが、ドリーム・シアターはサンプリングを多用します
そもそもこの「サンプリング」の意義について、私が最も納得感を感じる文章を見つけました。

ヒップホップが誕生した1970年代、DJたちは既存のレコードを使って新しい音楽を創造しました。この時、サンプリングは単に音楽を再生する以上の意味を持ち、文化的なアイデンティティの一部となりました。サンプリングを通じて、アーティストたちは過去の音楽に敬意を表し、それを自分たちの物語として再構築しています。

可児波起@STAND WAVE「パクリとの違いは?ヒップホップにおけるサンプリングの本質を解析」

この記事はあくまでヒップホップについてですが、ドリーム・シアターが昔から一貫して突き通している「『過去』に対するリスペクト」をうまく言語化していると思い、引用いたしました。

Take the Timeに話を戻します。
曲冒頭のサンプリングは、様々な曲から引用されたものです。

“Hold it now”
→ ビースティ・ボーイズ “Hold it now”

“Wait a minute”
→ フランク・ザッパ “Dancin' Fool”

“Come on!” “Whew”
→ パブリック・エネミー “Power To The People”

中には「ドリーム・シアターのメンバーもこんな感じの聞くんだ」と思うような曲もいくつかありましたね。

“It's time to pick up the pieces” “Go back to square one”

これを直訳すると「今こそ欠片を拾い集め真四角に戻せ」になります。
もちろん意味的にはこの訳にはならず、「真四角」は隠喩か、スラング的に何かしらの「スタート地点」を表す可能性が高いとのことです。

“I need a new voice“

以下、海外の考察サイトの引用です。
ボーカル交代についての内容である、という旨が考察されています。

After the release of When Dream and Day Unite in 1989, Dream Theater fired their singer Charlie Dominici.
This line refers to the band needing to find a new vocalist, which they did in James LaBrie.

1989年にWhen Dream and Day Uniteがリリースされた後、ドリーム・シアターはボーカルのチャーリー・ドミニシを解雇しました。
この行は、バンドが新たなボーカリストを必要としていることに言及をしており、のちにジェームズ・ラブリエがそれに当たります。

genius.com

“Take the time, re-evaluate”

re-evaluateは「再評価する」が直訳です。

ただ、「点数をつける、的な『評価』をもう一度やる」というより、「何かを再度考え直す」という、「思考の再開」のような意味合いもあります。
したがって、和訳本文では「考え直す」としています。

“There is something that I feel to be something that is real”

realの訳に苦労しました。
直訳すると「本当の」「真実の」のような訳になります。

ただ「心が熱くなる」のように、「自分の身体の動きが生々しく感じられる」という文脈である以上、realは「生きている感覚≒alive」のようなものだと判断いたしました。
私の母親も同意見だそうです。

“You can feel the waves coming on”

この波は「自分に降りかかる問題」の隠喩である、という考察があります。
至って自然な考察かと思われます。

“For the fortune lies still in his hands“

以下、海外の考察サイトからの引用+私が作った和訳です。
私から言及することは特になく、まさに以下の文面の通りだと思います。

This song is all about the band members' past bad experiences and what they do to overcome them, so this line may be a reference to their debut album “When Dream and Day Unite”, which contained the songs “A Fortune in Lies” and “The Killing Hand”.
It also seems to talk about the conditions laid upon the band by their first record label and how they had to deal with them.

この曲の全てはバンドメンバーの過去の壮絶な経験や、それらを乗り切るために何をするか、というのがテーマになっています。
したがって、この行は、彼らのデビューアルバムである“When Dream and Day Unite”の中に収録されている“A Fortune in Lies”と“The Killing Hand”について言及しているものだと思われます。
また、最初のレコードレーベルによってバンドに対して置かれた状況や、彼らメンバーがその状況をどう対処するか、ということについて触れているとも考えられます。

genius.com

“I close my eyes ~ I'm blind”

またしても海外の考察サイトより引用です。

A reference to Descartes' rationalist philosophy; to reach real knowledge, or to find the answers desired, one must not let their senses interfere, as they can fool and illude.
The real answers can be found “in your mind”, as the song says.

デカルトの合理主義哲学からの引用で、本物の知識にたどり着いたり、望まれるような答えを導き出すには、自分の感覚に邪魔されてはなりません。自分の感覚には弄ばれたり、騙されたりするからです。
本当の答えは「自分の心の中」にあると、この曲は言及しています。

genius.com

少しデカルトの解説をいたします。

ルネ・デカルト

フランスの哲学家で、「我思う、故に我あり」のセリフで有名です。
哲学者たちは、それぞれ「◯◯主義」を持っているイメージがありますよね。
ちなみにデカルトは「合理主義」という考え方を持っています。

「合理主義」は「経験主義」とよく対比されます。

  • 経験主義(イギリスの哲学者ロックが有名)
    =人は何も知らず、何もわからない「白紙」の状態で生まれる。
    その何もない白紙に、徐々に知識が貯まっていくと考える。

  • 合理主義
    =人が生まれてくる時、白紙の状態ではなく、「理性」をもともと持った状態で生まれる。
    知識を得る際、「白紙に貯められていく」イメージではなく、「理性が知識をかき集めてくれる」イメージ。

ここでいう「理性」というのは、デカルトのいうには、「感情的な欲求に左右されずに何が正しいかを思慮深く考える能力」のことをいいます。

ここでTake the Timeの話に戻ります。

最初に歌詞を見た時に「『感覚』と『心』の違いってなんだよ、同じじゃん」「最終的に目見えなくなっちゃってんじゃん」と思っていました。

しかし、この歌の伝えたいこととは、おそらく、
もう全部投げ出してしまおう、問題解決などできない、みたいな感覚に邪魔されるな」
「それでもなおバンドを存続させ、自分らの目指す音楽性を体現させねばならない、という理性的で正しい答えはすでに心の中にある(だから目なんか見えなくてもいい)」
ということだと考えられます。

“Ora che ho perso la vista, ci vedo di più”

このフレーズはイタリアの映画「ニュー・シネマ・パラダイス」(原題:Nuovo Cinema Paradiso)のワンシーンから引用されたサンプリングです。
和訳は、「今や私は盲目だが、随分くっきり見える」です。

この映画は、シチリア島を舞台に、映画館の映写技師のアルフレードと少年トトの友情を描いたものです。

劇中のワンシーンで、上映中のフィルムが発火して映写室で火事が起き、トトの救出でアルフレードは九死に一生を得るのですが、この火事が原因でアルフレードは失明してしまいます。数年後、成長したトトにアルフレードが礼を言うのですが、その時のセリフが使われているようですね。

上記の「目なんか見えなくてもいい」という歌詞と、この映画のセリフの内容が一致しているため、ここでサンプリングを入れたのだと思います。ハイセンスですね。

終わりに

Surroundedのようにスピリチュアルでもなく、Learning to Liveのように解釈や訳し方が広がりすぎることもないだろう、注釈もどうせ少なく終わるだろう、と、勝手に舐めてかかってました。…が、難しすぎて完膚なきまでに叩き潰されました。ドリーム・シアター、恐るべし。

おそらく今後も編集を加えていくかも知れません。

皆様のドリーム・シアター・ライフがもっと楽しいものになりますように。

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