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いらっしゃいませ。お客様。店長の西田です。

いらっしゃいませ。
どうぞ。

こちらを、ご覧になってください。
当店、世界一小さな革靴ショップですので。

どうですか、お客様。
看板に偽りなしでしょう。

店は小さいですが、どの靴も手が込んでますよ。

この靴なんて、見てください。
20年モノですよ。

ええ。
20年間、磨き上げた靴です。

このあたりの年季になるとリペア、修理ですね、何度も修理していて今は履かなくなってますが。

そうなんです。
革靴というのは、リペアすれば一生履けるんです。

あのチャールズ国王だってですよ。
革靴を4足しか持ってなくて、それをリペアして履き続けているんです。
まあ、私はよく知らない人ですけど。

で、お客様。
こっちにあるのは18年モノです。
色がブレンドされて、いい味を出しているでしょう。
新品にはない風格ですよ。

でもね、お客様。
やっぱ、靴ってのは履いてナンボですよ。

だからこれ飾っているんじゃなくて、ここぞというとき備えてスタンバイさせているんです。

人も靴も出番ってのがあるんです。
お客様も、これから出番が控えているんです。
革靴が必要なんです。

え、茶色の靴だと具合がわるいですか?

じゃ、こっちの黒靴どうです。
16年モノから5年モノですね。

え?
値段、ですか?

ちょちょちょ、お客様。
言っときながら申し訳ないですが、こちらの革靴は現状は非売品とさせていただいております。

代わりといってはなんですが、お客様、こちらの品はどうでしょう?

当店のオリジナル商品です。
革靴をよりよく手入れするための小道具を、企画から製造までしております。

とはいっても、私1人のハンドメイドですし、まだ試作品なんですけど。

売れるようになったら、ご案内します。
そのときは、ぜひ、購入してください。
よりよい革靴に仕上がるのを、お約束します。

やっぱ、手入れされた革靴っていいですよね。
眺めるだけでよくないですか。
ほんと、うっとりしますよね。

こうして見たときの、このフォルム。
完成されてます。
見てるだけで1杯やれますよ。

艶、色合い。
シワも小傷もいいんですよね。

はい?
よくわからない?
え、革靴なんて履かない?

ちょ、ちょ、ちょっと、お客様。
話がちがうじゃない。

あの、お言葉を返すようですが、おわかりになられてない。
革靴は、大人の男のアイテムです。

革靴を履くだけでオシャレっていわれるんです。
服が多少はヨレヨレでも、キチッと手入れされた革靴さえ履けば締まるんです。

デキる男ともいわれます。
実際は、まったくデキない男かもしれませよ。
でも、勝手に相手が思うのですから。

だから、高級飲食店とか、シティホテルとか、革靴を履いている人は上席に案内されるんじゃないですか。

ここだけの話、職質だってされなくなりますよ。
彼らは靴を見るんですよね。

なんだったら革靴を履いてキャバクラいって、これ見よがしに足など組んで、投資家だって資産が10億ほどあるってオラオラとやってみてくださいよ。

反応が違いますから。
愛人だってできますよ。
たぶん。

10億ですか?
そんなもの、いざとなったら「10億ジンバブエドルでした」って笑ってごまかしかないですね。
ええ。

はい?
妻?
革靴を買うお金を渡してくれない?

お客様。
大変に失礼な言い方になりますが、そこはビシィィッといってはどうでしょう。

革靴は一生モノです。
男を磨くのに安い買い物じゃないですか。

はい?
気性が荒い女?
話が通じないチンチクリン?

そっち方面の妻でしたか・・・。

はいはい、わかりますよ。
私の妻もそっち方面で、この店を大反対されてますから。

この前も、さっさと売らないんだったら、ぜんぶ捨てて片付けるって怒られて、半土下座して許してもらったばかりですから。
ええ。

あ、申し遅れました。
私、店長の西田と申します。

まあ、お客様、アレですね。
お互い、いろいろありますけど。

また寄ってください。
革靴でうっとりしましょう。

~ 続く ~


世界一小さな革靴ショップ『西田』X支店
こちらも、何卒よろしくお願いします。

ほぼ、毎日1ポスト。
@nishida_shoes

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