退職の理由はいろいろあるけれど、問題社員に都合のいい退職なんてないですよという話
社労士という仕事柄、退職にかかわる手続きをすることがある。
退職願に「一身上の都合により」と書いてあるだけだが、
実際の理由を知ることもある。
以下のものは、もしよかったら今後のために教えてほしいといって
回答があったものや、雇用主にではなく、辞める前に同僚に言っていたことなどをのちにちらっと見聞きするなどで収集したもの。
・人間関係がいやになった、もしくは悪くなった
・パワハラ、セクハラ、マタハラに耐えられなくなった(人間関係とも関連ありそう)ここでは言えないSOGIハラとかも
・家庭の事情(マタハラなどとつながることもある)
・自身の病気、家族の病気や介護
・残業や休日労働が多い
・給与が低い、昇給しない
・転職先見つかった、引き抜き
・通勤に時間がかかる
・飽きた
・ブラック企業でこのまま働き続けることは無理だと思った
・働き続ける見通し(キャリアプラン)が立たない
・人事評価や昇進に納得できない
・ホワイトすぎていや
それてしまうけど雑居ビル内にある会社の共同トイレが和式しかなかったとか、反社?風営?と思しき事業所が近くにあって、ここは無理だと思って入社自体しなかった、というのも聞いたことがある。
退職時あるあるだけど問題ありの社員さんにはさっさと自己都合で辞めてほしい、というのが雇用主の本音。
色々あるけれど、退職時に本当の理由を言わないのは、退職するということは決まっているし、自己都合とすれば、円満に退職手続きが終了するから。
退職の時に失業手当の給付制限、だとか退職金の係数が、とかがめついことを考える人はパワハラがあった!とか有給取れなかった!とかごねて有利に退職しようとする。そんな人は在職中にも何かしらあったということがほんど。
有利な退職方法とかレクチャーしておられる人もいるようだけど、参考にするのはほどほどに。
退職代行もお金払って利用してるんだからそれでいいと思う。ただ、バックレ退職ではないのに引き継ぎなどほったらかして退職するのは大人としてどうなのかなとは思う。燃え尽きてこときれた、ように辞めて行く人もいる。
この先、実際にあった、ちょっと身勝手な人の退職の事例(ちょっぴり言葉が悪くなっております、さすがに事実そのままではなくオブラートにはつつんでおります)です。
ある会社で退職届を受け取り退職手続きをしてほしいと依頼があった。
それには「会社の事業縮小により退職します」とあった。
ん?この会社は事業縮小はしてないよ?てか、このひとあのセクハラ事件の加害者やった💢、など私的にもイメージ悪く、やっぱり最後にこんなんだしてきたか、と言う感じ。
社長にヒアリングすると、大手さんに連動して業績があまり伸びず、営業会議で数字をあげようと部門みんなで3年近く取り組んできたのに(これ労務相談で知っていました)
この人だけは全く働きぶりが変わらず結果を出せず、時間だけが過ぎていた。これも知っていました。
残業なんて2年間で10時間にも満たない。いや、残業しろというてるわけではないけど、固定残業手当を設定した翌月から残業がパタッとなくなりゼロになった。ほな今までも残業なしで済んでたんちゃうの??
社内で何度も話し合いをかさねたうえで、涙を飲んでこの1年間の手当カットを決め他の全社員に了承を取ったところ、この人だけごねて、承諾しなかった。その辺りの営業会議についてはもう2年くらい話聞いてきてた。税理士さんからも固定費(人件費)を一旦削減して立て直す必要があると指導もあった、なんなら社長は社員より先に大幅減給を受け入れている。
日本の法律では能力不足を理由に解雇するのは本当に難しい、2年待ってでも辞めるを言い出してくれてよかった、と思った矢先にこの退職届って。
ホントに自分のことだけ、保身だけ。よくこの2年雇っていたな。
もっと早めに手当カット言い出しとけばよかった、とは社長の言葉。
この人だけカットしたいところだけどそれは酷だからみんなでカットに至った。
それから、この人は手当カット受け入れないから退職します、といって退職届を出した翌日から1か月と10日くらい有給使って出社しなかった。その間、会社は新たな労働条件合意を得られてないから、カットしないままの額の給与を支給した。そしてその給与額で離職票を作成した。
離職票作成の時は離職理由がいくつもある中から選ぶんだけど、
「その他労働者の判断による自己都合退職」の自由記載欄に(給与の見直しを受け入れられないため)とした。もちろん彼が出してきた自分勝手な退職願もそのまま添付しました。
離職票を自宅に送ると、当人から私へ名指しで電話かけてきたよ。きたきた!w
「離職理由が自己都合になってる、社長と退職理由は会社都合にするっていう契約交わした」とかなんたら。
交わした約束とやらは、社長にちらっと見せてもらった退職覚書とか退職誓約書のことかな?。
離職理由は会社都合退職とする、なんて項目なかったし。
退職金も自己都合係数で計算した額を記載してあって、それでよしという意味の日付とあんたの手書きの署名あったけどね。
契約ってなんやねん?wあんたの勝手や都合のいいことを会社がハイわかりましたと承諾することじゃないんだよ。ボイスデータ取ってるんだって、アハ、頑張りましたねー。ハローワークで披露してくださればいいと思います。
「会社として把握している退職理由を確認して作成しました、異議申し立てはハローワーク窓口にておっしゃってください。社労士事務所で訂正はできません」と伝えて電話を切った。
これ事実を変えて会社都合としたら、失業給付の不正受給になりますよとか言ってやろうかと思ったけど、必要以上にしゃべりたくないし、余計なこと言わず終了。
給与が15%下がったことによる離職も特定理由離職者(給付制限がないやつ、失業手当のもらえる期間が長くなるやつ)と判断されることもあるけど、この場合退職まで給与額は減らなかったし、15%にも当たることもない。
というわけで、ハローワークから離職理由の照会についての問い合わせはずっとありませんwとおもったら退職後1ヶ月経過してハローワークから問い合わせがあった。
添付されてる退職願と離職票の離職理由が合ってないから事情を聞かせて、とのこと。
退職までの経緯をハローワークの方にそのまま説明してその後離職理由が変更となったのか、特定理由離職者と判断されたのか知りません。ハローワークの職員さんは、ふんふんなるほどと聞いてくださっただけでした。
会社が従業員のために真っ当に取り組んでいる助成金に影響が出ませんように。
最後っ屁かまされた気分になる、退職話でした。
退職理由のホントのところを丁寧にヒアリングしても、病気などが理由でホントまじで言いたくないこともあると思うし、それなら言わなくていいと思う。「一身上の都合」以上のことを退職願に書く必要はないのだから。個人的なことを必要以上に聞き出すのはプライバシーの侵害だ。
病気や家族介護などが自己都合退職のうしろにホントの理由としてありそうなら退職を選択する前に、休職制度とかを使う方法もあるよ、と普段から(病気や家族の介護の必要な状態でない従業員も含めみんなにわかるように)アナウンスしておく必要はある。
休職制度を利用するときに診断書を出さないとけないとか、そういったことをルールにしておくと、この辺の手続きを通じて予期せぬアウティングが発生することを恐れて、誰にも知られる前に退職を選ぶ人もいる。
その場合は、退職の理由を聞き出す必要も退職を引き留める必要もないと思う。言いたくなかったし、知られたくなかったのだから。
手続き上必要な書類に関しては守秘義務が求められることは当然だけど、弱っている(困った立場にいる)自分が腫れ物に触るように扱われるのが嫌だとか、いろんな思いを持って進退を考えている人も多い。
今いる会社を静かに退職して、治療後、病気ではない自分として違う会社に再就職したいと思っているなら、その通りさせてあげたらいい。
会社は人によって踏み込んでいい場所が違うことを意識しておかなければいけない。すごく難しいところだけれど。
こういう難しいところ、について共通理解をするのはとても大変な作業で正解や正しいやり方がなかったりする。
会社にとって人材は人財という表現をすることがある。(なんかそんなにおしゃれな表現ではないと思うし、そんなちょっとよさげに見える「まやかし、うさんくさ表現」でごまかしたらあかんかもと最近思い始めた!)
人を大切にしていない会社、従業員を駒のように扱って辞めたら補充したらいいや、程度に考えている会社は絶対発展しない)とよく言われるし、その通りだと本当に思う。
そして人材の定着も会社にとって必ず取り組まなければならないことである。
困った人ばっかり入ってくるんやーっていう会社さんはずっとその状況にはまっているし、7〜8人だけどしっかり定着して10人、12人と社員が増え業績が伸びているところもある。
小さい会社でも取り組み方によって結果は大きく違ってくる。
問題なく静かに辞めていく社員さんこそ本当の退職理由を聞くべき、というのが社労士、キャリコンとしての意見です。
この会社で働き続ける自分が見えない(キャリアプランが立てられない)ことがホントの退職理由である場合、
退職願を出してきた社員から「この会社では成長できない、働き続ける未来が見えないからやめるんだ」と本当の理由をいわれたところで、じゃあ成長できるように制度整えよう!とはならない。残った社員のために制度整えよう!となることもあまりないのではないか。
会社がキャリアアップための制度(キャリアアップ助成金にかかわる制度整備はここでは無関係とする)を作ろう!としても整う頃にはその人は退職してしまっている。その人は会社が変わったことを知ることもない。(再入社するとか、考えられなくもないけど)
もし会社にとってとーーーーっても惜しい人材が一身上の都合、に隠された本当の理由を言わずに辞めるとしたら。
辞めるという決断をする前に不安や不満やモヤモヤの理由を知ることができたら。
引き留める?どうやって?
辞めるのやめてもらうには、「辞めないで」だけでは絶対無理。
辞めるのをやめてもらうために会社がすべきことは、またゆっくり考えをまとめてnoteにします。
その人だけを引き留めることを考えるのか、
その人も含めた人材の定着と会社の発展まで考えるのか、
次元を上にして考える必要がありそう。
こういう私もなかなか上の次元に立てず目の前の対応にあたふたしたりしています。