僕の好きなクリエータ32 阿部工房
砂の女
阿部工房の小説 砂の女 本当に面白い 僕は3回は読み直した。
安部公房の小説は難解だと言われる ストーリがさして面白くないけれど、安部公房の小説の中でも軽く読めてしまうのがこの砂の女。そして面白い。
ストーリー
ネタバレ注意です。
31歳の仁木順平という男がある日行方不明になる 昆虫採集に行ったきり戻って来なくなったのである。
男はハンミョウという昆虫を探しにふらふらとある村に迷い込んでいく。
村は砂に覆われていた。というより今にも砂に沈んでいきそうな土地だった。村人の推薦で男は砂の底の民家に泊まることになる_
そこに女が一人いるのだが その女は砂を掻き出す役割があった。
砂をかき出さなければ村が沈むと言って、女は懸命に砂を掻き出す。
そのうちに蟻地獄の様な砂の穴の唯一の出口である縄梯子が村人たちの手によって引き上げられてしまう。穴の底の民家で、男は女と暮らさなければならなくなる。
女は男の世話係と砂を掻き出すために置き去りにされているのにもかかわらず、何も文句を言わずくる日もくる日も砂を掻き出す
女はセックスのためにもそこに存在する。男はこの女に手を出せばますます逃げられないと知りながら、女を抱いてしまうのであった。
砂はベトベトと体にまとわりつき、始末に負えない。
そしてくる日もくる日も砂を掻き出す 脱出のチャンスを男はずっと狙っているがことごとく失敗に終わる。砂を掻き出す作業は自分も手伝わないと砂に埋もれてしまう。
そしてある日、とうとう砂の女は仁木順平の子供を孕んでしまう。
女が子宮外妊娠で死にそうになり、村人たちは慌てて女を助け出して病院に運び込む。
その時に男は村人の忘れた縄梯子がかかったまになっていることに気がつく。
男は逃げようとするが、逃げずに思いとどまり、逃げるのはまた今度でいいといって砂の穴の中に一人とどまる。
じつは、男はある装置を発明していた。それは溜水装置に関するあるアイデアだった
男は逃げることよりも自分に発見した功績を村人たちに伝えるためにそこの留まったのだ。
7年後 行方不明となった仁木順平の死亡が確認される。
シーシュポスの神話
このストーリ何か思い当たりませんか?僕の好きなクリエータで解説したカフカの小説に似ていると思いませんか?
そしてもう一つここに同じ様な書物がある。
カミュの書いたシーシュポスの神話という著書があるのですが、人が生きる理由は反抗だと言う話が書かれています。
シーシュポスは 死の神タナトスをだまし、冥界の王ハーデースとの約束を守らなかったからという理由で神はシーシュポスに罰を与える その罰とは岩を山の頂上に持ち上げる罰であった。大変な苦労してシーシュポスのは岩を山に持ち上げるが、山の頂上まで上がると神の呪いによってまた岩は山下まで転がっていく。シーシュポスはまた山を降り、岩を山の頂上まで持ち上げる。何のために?山に岩を持ち上げるのは神罰とするなら黙って岩を持ち上げるのはシーシュポスの神への反抗だとする。
我々が生きているのは理由などない。ただシーシュポスの様に阿部工房の仁木順平の様に、カフカのヨーゼフKの様に、反抗を持って神に対抗して生きているというのだ。
それは正しいかどうかは別にして、阿部工房の砂の女の話はその不条理の書物に分類されると僕は思うのだった。