不純物が混在する系におけるスピン凍結
不純物の混在によって、電子スピンは何かしらの確率分布にしたがったランダムな振る舞いをするとする。
このような系でのエネルギーは以下のように書ける。
ただし、$$ {J_{ij} } $$ は相互作用係数である。
$$
E({\bf{x}}) = - \sum_{\langle i, j \rangle} J_{ij} x_i x_j
$$
以下のガウス関数で書かれた確率分布に従うとする。
$$
P(J_{ij}) = \sqrt{\frac{N}{2\pi J^2}} \exp \left( -\frac{N}{2J^2} J_{ij}^2\right)
$$
分布関数は
$$
Z = \sum_{\bf{x}} \exp \left( \beta \sum_{i < j} J_{ij} x_i x_j \right)
$$
Zの最大値、すなわちFの最小値を求めたいが、このままでは計算が進められない。
そこで、「自己平均性」や「レプリカ法」を用いて、レプリカ数n→0や電子数Nが膨大であることを反映し、適切に近似すると、レプリカ数nの集団に対する分配関数の平均値は、
$$
[Z^n] = \sum_{\bf{x}} \exp \left( \frac{N\beta^2 J^2}{4} \sum_{a, b} \left( \frac{1}{N} \sum_{i=1}^N x_i^a x_i^b \right)^2 \right)
$$
式中の、異なるレプリカ中のスピンの積の平均を、新たに秩序パラメタ$${q^{ab}}$$とする。
これは、別記事「温度上昇に伴い磁化が弱まる理由」における磁化mに相当する。
$$
q^{ab} \equiv \frac{1}{N} \sum_{i=1}^N x_i^a x_i^b
$$
この値は、測定の度にとある場所のスピンが如何に同じままかを示す指標であり、スピンの凍結具合を表現している。
当然、温度が低いほど、$${q^{ab}}$$は大きいと考えられる。(最大値は1)
あとは、別記事で紹介した流れとほとんど同様に、δ関数を積分に組み込んで利用することで、
$$
[Z^n] = N \sum_{\bf{x}} \int dQ \ \exp \left( \frac{N \beta^2 J^2}{4} \sum_{a, b} \left( q^{ab} \right)^2\right) \prod_{a, b} \delta \left( N q^{ab} - \sum_{i=1}^N x_i^a x_i^b \right)
\simeq \int dQ \ \exp (-N \beta e(Q) + NS(Q))
$$
Nは膨大なので、鞍点法を適用できる。
エントロピー項
$$
S(Q) = \frac{1}{N} \log \sum_{\bf{x}} \prod_{a,b} \delta \left( N q^{ab} - \sum_{i=1}^N x_i^a x_i^b \right)
$$
をフーリエ積分表示し、Q行列のレプリカ対称性を利用し、さらに、Hubbard-Stratonovich 変換を用いることで、
$$
[Z^n] = \int dq \ \exp \left[ N \left\{ \frac{\beta^2 J^2}{4} (n \cdot 1 + n (n-1) \cdot q^2) + \left( -\frac{n}{2} \tilde{q} (1-q) + n \int D_z \log (2 \cosh \sqrt{\tilde{q}}z) \right) \right\} \right]
$$
ここまで進められ、鞍点法を用いることで、
$$
q = \int D_z \tanh^2 (\beta J \sqrt{q} z)
$$
が得られる。
極低温領域(β→∞)においてヘヴィサイドの階段関数を用いて式を簡略すると、
$$
q=1 - \frac{1}{\beta J} \sqrt{\frac{2}{\pi}}
$$
となり、温度上昇に伴い、線形にqが小さくなっていくことがわかる。
これは、温度が低いほどスピンが凍結するという前述の直観的な予想と整合する。
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