日本人女性の労働人口は増えているが、その中で前に出る女性は非常に少ない -オフィスの花-

エコノミストに掲載された記事の和訳を掲載します。

https://www.economist.com/news/asia/21731423-higher-proportion-are-employed-america-japanese-women-are-working-more-few-are

キタノ カナコさんは求職活動時、女性であるからという理由で社員に対する扱いを変えない会社を探していた。
21歳のキタノさんは次のように話す。「就職フェアなどのイベントで、各企業は男性社員と女性社員に同等の機会を与えていると説明していましたが、その時に説明していたのはリーフレットの束を手に持つ女性社員に囲まれた男性社員でした。」
彼女は最終的に、アメリカのデータ企業Bloombergの仕事に着こうとしている。

全般的に見れば、日本人の女性は働くようになってきている。15歳から64歳の日本人女性の68%が、働いているか、仕事を探している。この数字はアメリカの状況と近い数字だ。しかし、女性の労働人口比率を年齢別に見ると、依然としてM字曲線という結果だ。なぜなら、今でも結婚や出産を期に仕事を辞める女性が多いからだ。
しかし、過去のM字曲線と比べると、凹みの部分はより緩やかになっている。というのも、2011年では38%だった第一子出産後に仕事を続ける女性の割合は、現在では50%以上に増えたからだ。

企業文化も少しずつ変化を見せている。女性社員が、臆せずに周囲から「オフィスの花」であると言われたり、低賃金の事務員としてのみ採用される時代は終わった。
有名建築家の妹島和世氏のように、キャリアと家庭の両立を決して想像できなかった1970年代に、子供を産まないと誓って仕事を始めたという事例については、今ではほとんど想像がつかない程だ。

安倍首相は、日本経済立て直しの一環として、女性の社会進出をより一層促すことを誓った。女性の社会進出の割合が実際に増えていることは、安倍首相の「女性か輝く社会」実現のための努力がいくらかは実っていることを示している。一方で、まだ大きな課題は残っている。
「日本の企業文化による制限(長い労働時間、自分の全てを企業に献身すること、企業の気まぐれで決まる転勤など)が大きな障害となっている」と、日本航空株式会社社外取締役とthe Japan Institute for Women’s Empowerment and Diversity Managemenの代表を務める岩田喜美枝氏は語る。

日本政府は、270万人の女性が働きたいと考えているが実際には働いていないという見積もりを出している。子供や介護の世話が、彼女たちが働けない理由の多くを占める。そのため、子供を預かる保育所の不足は、とりわけ働きたい女性たちの不満の種となっている。しかし、より頻繁に女性が職場を去る原因として取り出されるのが、〝マタハラ”(マタニティーハラスメントのことで、妊娠した女性や出産や育児休暇をとる女性に対するハラスメントのこと)だ。
パートタイマーや臨時の業務に従事している女性は、男性と比べて、給与、福利厚生、キャリアの見通しにおいて、より悪い状況にある。これらの職業に就く女性の平均給与の中間を男性と比較した時、日本では女性は男性の74%しか稼いでいない。アメリカではこの比率は81%だ。

この相違は高位な職業において、より顕著である。日本の内閣の20人のうち、女性はたった2人である。英国のFTSE100上場企業のトップは女性が7人いるのに対し、日本では女性をトップに持つ上場企業は一社もないという酷い状態だ。

内閣府男女共同参画局長を務める武川恵子氏は、いくつかの統計において日本の女性の賃金はアラブ諸国よりも低いと述べている。イラクでは立法者の27%が女性だか、日本ではたったの10%である。リビアでは科学研究者の25%が女性だが、日本ではたったの15%である。女性登用に力を入れるカルビー株式会社の藤原かおり氏は「女性のロールモデルが日本では非常に少ない。」と話す。

2012年に安倍首相が就任して以来、政府は保育所の数を増やし、2017年10月の総選挙では一部の子ども手当の無償化を約束した。
昨年より、日本の大企業は女性登用の活動について文書化することが法律により求められている。数社については、リモートワークやフレキシブルな勤務時間についても認めるようになってきた。

しかしながら、安倍首相と社会全体にとって、上記の変化は経済成長のための命令に近い圧力が一部の変化を無理に促進しているだけであり、文化と態度自体の本質的な変化ではないという感覚がある。
自民党の党員の多くは、大規模な移民の受け入れよりも、女性達を働かせることが、日本の急速な労働人口の減少を食い止めるための唯一かつより悪くない方策であると見ている。
大企業の終身雇用制度の腐食は、より多くの男性に彼らの妻、つまりは女性達にも働いて欲しい、報酬としての賃金を稼いで欲しいと思わせる要因になっている。
ワーキングウーマンについての著書も持つ、京都外国語大学の根元宮美子氏は、欠けているのは”男女間の平等性の価値と平等性自体についてのあるゆる議論”であると述べる。根元氏は、メディアが完全に女性らしくあることの理想像について発信し続けていると述べる。
雑誌はどのように「女子力」を上げるかについてしきりに議論をしている。女子力は英訳ではgirl powerと訳され、料理や裁縫、いかに素晴らしい弁当を作れるかで測られる。
安倍首相の用いたキャッチフレーズの「女性を輝かせる」という表現でさえ、女性に対しての上から目線であるのだ。

キャリア志向の女性は家庭でのサポートも不十分だ。共働きの家庭では、男性が1日に家事に使う時間は46分であるのに対し、女性は約5時間だ。これはアメリカの同じ統計データよりも非常に男性の家事負担時間が低いことを示している。
ワンオペ育児(1人で行う育児)について不平を述べる女性達の辛さは、ウェブ上のコラムやフォーラムに溢れている。男性の法定育児休業取得率はたったの3.1%であり、お茶の水女子大学のように男性の育児休業が文化的に認められた組織であっても取得率は非常に低い。

一部の女性は前述したことについて全く気に留めない。20歳のスケダ ヒナノさんは「私は申し訳ないと思います。なぜなら、私には人生においての成功の仕方として、さまざまな選択肢がありますが、男の人には仕事しかないからです。」
スケダさんよりも年齢層が上のキャリアウーマンには、今時の若い女性達は意欲がなく保守的であると非難する人もいる。スケダさんはその指摘を認めた上で、「私たちの世代の女性がより意見を発言するべきだとはわかっていますが、ただ合わせるようにという日本文化があるのです。」と述べる。



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