アメリカ社会の女性が次々と管理職を去っていく理由とは?
Women in workplace という、lean in 本部が行った調査を日本語訳にして、記事にまとめてみました。元の記事はこちら
https://leanin.org/women-in-the-workplace/2022/why-women-leaders-are-switching-jobs
はじめに
Women in the Workplaceは、アメリカの企業における女性の状況に関する最大規模の調査です。2015年、LeanIn.OrgとMcKinsey & Companyが共同で、職場のジェンダーダイバーシティを進めるためのインサイトを企業に提供するためにこの調査を開始しました。2015年から2022年にかけて、810社以上がこの調査に参加し、40万人以上が職場の経験について調査を受けました。今年は、1200万人以上を雇用する333の参加組織から情報を集め、4万人以上の従業員を対象に調査を行い、有色人種の女性、LGBTQ+の女性、障がいのある女性など、多様なアイデンティティを持つ女性にインタビューを実施しました。
2022年の報告書では、パンデミックによって女性が企業に求めるものがどのように変化したかに焦点を当て、機会、柔軟性、従業員の幸福、多様性、公平性、包括性の重要性が増していることを指摘しています。
アメリカの企業の現状 “We are in the midst of great break up“
アメリカ社会では、昨年、前例にないほどの多くの女性が会社を去っており、この現象は、「企業と女性の間の大分裂」が起きているといわれています。女性のリーダーの数はもともと男性のリーダーに比べ、少ないのに追い打ちをかけ、数が減っており、このことは企業にとって深刻な影響を及ぼす可能性があります。
出世の道において、女性が直面する最大の障害は、マネージャーへの昇進の最初のステップにあります。新入社員からマネージャーに昇進する男性100人に対して、女性はわずか87人、有色人種の女性はわずか82人しか昇進していません。その結果、マネージャーレベルでの男性と女性の比率は男性が女性を大幅に上回り、女性は決して追いつくことができないのです。この男性と女性の間に存在する「壊れた段差」が、女性リーダーの出世の足を引っ張っているのです。現在、企業は比較的少数の女性リーダーを維持するために苦心しています。そして、こうした女性リーダーの少なさは、有色人種の女性にとってさらに顕著なものとなっています。
女性リーダーたちが職場を離れていく理由
上のグラフは、2017年から2021年にかけての女性リーダーと男性リーダーの退職率を表しています。見ての通り、2021年の女性リーダーの退職率の割合は平年にくらべ、大きく上がっており、男性との比率の差が大きく広がっているのがわかります。
では、なぜ女性たちは会社を去っていくのでしょうか?
2022年のWomen in the Workplaceの調査によると、理由は3つあります。
理由その1:昇進への道のりで、男性よりも強い逆風にさらされること
女性は、男性と同じくらい昇進を望み、上級職を目指しています。しかし、女性は、同僚から判断を疑われたり、仕事に対して適格でないと言われたりすることが、男性リーダーよりもはるかに多いです。また、子供がいることが原因で、昇給や昇進、出世の機会を拒否されたり、見送られたりすることがあります。また、女性リーダーたちは、後輩と間違われたりするなどこのようなマイクロアグレッションが起こる可能性は、男性の2倍だそうです。多くの企業で、彼女たちはマイクロアグレッションを経験し、昇進が阻まれているのです。
理由その2:女性リーダーは過重労働かつ過小評価されていること
男性リーダーと比較して、女性リーダーは、従業員の福利厚生の向上に取り組み、多様性、公平性、インクルージョン(DI)を促進するために多くのことを行っています。これは、従業員の定着率と満足度を劇的に向上させることに繋がりますが、40%の女性達は、この努力が会社から認識されず、努力が報われていないといいます。数にしてみると、女性リーダーは、男性リーダーにくらべ、会社でのダイバーシティ・インクルージョンの向上に携わっている時間は2倍だそうです。当然のことながら、女性リーダーは同じレベルの男性よりもはるかにバーンアウトする可能性が高くなります。41%の女性リーダーが燃え尽き症候群を経験するのに比べ、男性リーダーの30%が燃え尽き症候群を経験しています。
理由その3:女性リーダーはより良い職場の雰囲気を求めていること
従業員の幸福や多様性、公平性、包括性にもっと熱心に取り組んでいる企業で働きたいと考えている女性リーダーの数は男性よりも多く、これらの点が理想にかなっていないため、女性たちが仕事を辞める可能性が著しく高くなっています。また、それに加え、リモートワークなどの会社の柔軟性を、女性たちは重要視しています。女性リーダーの49%が、入社するか留まるかを決める際に考慮する上位3項目の1つとして「柔軟性」を挙げているのに対し、男性の場合は34%にとどまっています。さらに、前職の退職理由が、DEIにもっと熱心に取り組んでいる会社で働きたいから、と答えた女性リーダーの数は、男性リーダーに比べ、1.5倍になっています。
まとめ
この3 つの理由が原因で、アメリカで働く多くの女性が会社を辞めていっています。辞めていく女性の数は、昨今では著しく増えており、「大分裂」と呼ばれる状態になっています。
男女平等な会社に変えていく為に、企業はまず女性リーダーの数を増やすことに取り組まなければなりません。さらに、今いる女性リーダーたちをどのようにして維持していくことも重要になってきます。
より多くの女性の出世を増やすには、「壊れた段差」をなくしていかなければなりません。そのためには、まず、女性にとって昇進の格差が最も大きいのはどこかを特定することに企業は目を向けるべきです。そして、女性も男性も同じような割合で昇進ができるよう、そして、その成果が公平であることを確認し、パフォーマンスを評価するプロセスの偏った側面をなくす必要があります。
個人の見解
企業が、何かしらの行動を起こさないと、この男女不平等の差はさらに広がってしまいます。優秀な女性たちが次々に辞めていってしまうのは会社にとっても大きな損失につながります。もし、企業が、早急に行動を起こさなければ、いまの女性リーダーを失うだけでなく、次世代の女性リーダーを失う危険性もあります。若い世代の女性たちはさらに野心的で出世する意欲があり、公平で、協力的で、包括的な職場で働くことをより重要視しているからこそ、このような先輩リーダーたちが会社を去っていくのを目の当たりにし、同じようにもっと条件のよい会社を求め去っていくかもしれないからです。
女性にとってよりよい、働きやすい会社を作るのには企業はどのような対策をとっていくべきなのでしょうか?
アメリカは日本よりも女性の社会進出ははるかに進んでいますが、まだまだ男女平等のために解決しなくてはいけない課題がたくさんあるようです。
男女平等においては、世界から遅れをとっている日本は、平等が進んでいる世界の国々が対面している様々な問題を参考にし、どのようにしたら女性が自分らしく働ける職場を作ることができるのか、学ぶことがたくさんありそうです。
3月8日は、国際女性デーですね。
毎年、Lean In では国際女性デーに、様々なテーマのそえて女性ゲストをお招きしてイベントをおこなっています。ちなみに、去年のテーマは「my lean in story - 前例のない道を、私らしく進方法」で、東京海上ホールディングス株式会社執行役員人事部長の方、また株式会社ユーザーベース執行役員の社員の方を迎えました。(過去のイベントの様子は、こちらからご覧になれます。)
今年は、国際女性デーを記念して、「私のLeanInストーリー」を、Lean inメンバーが毎週、ノートに投稿していきます。
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では、また。
安達 麻有