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読むサイエンスラバー!地理学研究者に聞く、「防災教育に地理情報を活かす」とは?

LeaLがお届けしているPodcast”サイエンスラバー”。今回は、東京大学大学院総合文化研究科の小田隆史さんをお迎えし、「地理学と防災」をテーマにお話を伺いました。本記事では番組本編の一部を再編集し、地図を活用した防災教育に関するトークについてまとめています。記事の後半では、今すぐ使える地図サイトの紹介もしています。地理を知れば自然災害が起こった時のあなたの行動もきっと変わるはずです!

客観的な地図データで災害に備える

小池:小田さんは、地理情報を生かした防災教育の研究をされているということなんですが、具体的にどんな取り組みをされているんでしょうか?

小田隆史さん
今はWebサイト上でハザードマップをはじめ様々な地図ツールが提供されています。Web上の電子地図はWeb GIS(Geographic Information System)と言われていますが、GISは活かしてこそ意味があるし、正確に地図を読んで備えに繋げていただく必要があります。その普及のためには学校での防災教育が大事だと思っています。
ただ、学校の先生たちの中にはGISの存在を知らない方もいますし、知っていても教え方がわからない先生たちもいます。そういった先生にGISを活用した研修を行ったり、防災教育に関する授業の支援を行ったりしています。

瀬戸:防災教育というと、東日本大震災で学校の安全管理の重要性も再認識されたところですよね。

そうですね。災害の犠牲にならないように、子どもたち自身が地震災害に備えるための知見や技能を身につけることも大事です。一方で、学校は子どもたちを預かっている組織でもあるので、学校自体の安全管理も改善していく必要があります。
東日本大震災では、大川小学校において児童74人、教職員10人が犠牲となりました。その教訓として、教職員が子どもたちの命を守るためにその地域の災害リスクや災害特性を把握して備える必要性があると指摘されているところです。そういう時にも地図を活用するのは非常に重要なことだと思っています

瀬戸:先生に対してはどういった研修を行っているのでしょうか。

防災科学技術研究所と共同で研修プログラムを開発しています。まず身近な地域のWeb地図から災害リスクを読み取る練習をした上で、先生たちにとって土地勘のない地域の地図から災害リスクを読み取るワークをやってもらっています。それに加えて災害発生のメカニズムなどを学習するプログラムを開発して、どのぐらい効果があるかを検証する研究を始めたところです。

小池:先生はどんな反応をされるんですか?

先生の中には土地勘のある地域の学校で教えている人もいれば、例えば海側で育った先生が内陸で教える場合もあります。ですので、自分の経験値やご自身が習ってきた防災教育だけでは十分とは言いがたい部分があります。しかも先生の年齢層も新任からベテランまで多様なので、パソコンを使い慣れている人からそうじゃない人までいらっしゃいます。ですからその反応はさまざまです。

小池:一人一人置かれている状況が違う中、どんな情報を読み取ってどのように備えるかによって生死を分けてしまうかもしれないですよね。客観的な情報を読み取るのが重要なんだなと思いました。

その判断に、ぜひ地図を活用していただきたいと思っています。

今すぐ見られる!電子ハザードマップ

小池:具体的に私たちが使えるハザードマップにはどんなものがあるのでしょうか?

各自治体等で作っているハザードマップのデータを統一して、複数の災害に関する情報を重ねて表示できる「重ねるハザードマップ」というWebサイトがあります。
例えば大雨が降ると、川が溢れて洪水が起きたり土砂災害が起きたりなど複数の災害が起こることが想定されますよね。それぞれの災害のハザードマップを重ねて表示することができるのが「重ねるハザードマップ」の特徴です。

LeaLのオフィスがある代々木公園周辺の「重ねるハザードマップ」。薄オレンジ・黄色は洪水、まだらにある濃い紫・オレンジは土砂災害の危険を示している。(出典)ハザードマップポータルサイト

小池:別々の地域とか別々の災害でいちいちPDFを開き直さなくていいのは便利ですね。

そうですね。ただ注意しなくてはいけない点もあります。ハザードマップは「特定の規模の自然現象が生じたときにここまで被害が及び得る」というシナリオを表現しているものなので、想定外の規模の災害が起こった場合の被害を想定しきれないということです。また自治体、地域によってハザードマップが作られていないところもあるので結果が表示されない場合もあります。
ですから色が塗られていないから安心というわけではないということに注意しながら、有効に活用する必要があります

小池:その地図が書かれた前提条件を理解しなくてはいけないということなんですね。

Podcastへのリンク

本編では、さらに災害が起こってしまった際に活用できる地図ツールや、小田さんが取り組まれている災害記憶の伝承に関するお話まで、小田さんの深い想いをたっぷり伺っております!ぜひお聴きください!

前編【今すぐできる!地図で防災】地理学研究者が挑む防災教育とは?

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後編【今、地理がアツい!】地理が高校で必修になった理由は?

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