《創作綴》ばあちゃんちのしめ飾り
事の始末のうつくしき
ばあちゃんの家は
海が近くにあって
空が大きくて
急な坂があちこちあって
カラスじゃない鳥が
ちょっと怖くて
たまにカニが道を歩いている、
まとめると面白いところ
ばあちゃんが大好きなめいちゃんは
たいていばあちゃんの近くですごす
今日は風が強いから
風と戦っていたら
ばあちゃんによばれた
家に上がると
お米の入ってた枯れた草「ワラ」
ぺらぺらの木みたいなの「ウラジロ」
大きいみかん「ダイダイ」
習字の紙を階段に切った「シデ」
茶色の紐
さて、いこうかね
ばあちゃんは笑った
少し濡らしたワラを三つ編みにする
ばあちゃんはめいちゃんの出来あがり具合を
めいちゃんが照れるほど
大袈裟に感嘆する
これだからばあちゃん、すき
三つ編み2本をバッテンに紐で結び
バッテンのところをみかんで隠し
階段紙とペラペラの木を下げたら
出来上がり
今日は日がいいと玄関に飾る
見栄えがとてもいい
めいちゃんは嬉しくなると
ちょっと鼻の穴が膨らむ
眉毛も上がる
横を向けばばあちゃんも同じ顔
ばあちゃんがこっちを向いて
おんなじ気持ちになって
一緒に笑った
おそば食べて お餅食べて
ばあちゃんの栗きんとんは最高で
笑って、あそんで、寝て起きてを
くりかえした朝
ばあちゃんがしめ飾りをおろした
しめ飾りを持って
長靴にバケツにゴム手袋
ほうきちりとり
マッチに新聞紙
めいちゃんにも長靴を出してくれた
浜に降りる
しめ飾りのみかんを外し
新聞紙をねじって
マッチをこすって火をおこし
しめ飾りを燃やす
バケツに海の水をくみ
まっくろになったしめ飾りにかける
ほうきとちりとりで集め
ばあちゃんがみかんを海に投げた
どんどんみかんが遠くに離れていく
ばあちゃん、大丈夫?怒られない?
ずっとみかんを見ていたら
もうすぐこの当たり前が出来なくなるかもね
でも、海にみかんを返してるって思っているんだけどね
さて、始末をしにいこうね
ばあちゃんがめいちゃんの手を握った
ばあちゃんの手はあったかい、すき
坂を上って家に着くと
まっくろしめ飾りを
ちょっとずつ家の周りに置く
やおよろずの神様に
こうやって守ってもらうんだよ
めいちゃんが見上げた
見慣れたばあちゃんの家は
いつもより大きく強く見えた
めいちゃぁん、いるぅ?
近所の幸恵おばちゃんの声がする
黒豆の残りでケーキ焼いたの、食べにくる?
食べたいっ!
ばあちゃんみたらこっち見て笑ってた
ばあちゃんはめいちゃんが出掛ける時
必ずくれる大好きな言葉がある
めいちゃんはくちびるの下にしわを作って待つ
いっておいで ぶじにかえってきて
めいちゃんの鼻の穴が膨らみ
眉毛も上がった
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
お時間賜し深く御礼奉り
またのご縁を願いつつ
元気でおすごしいのります
追記
思いがけぬ温かいフォローや
スキをありがとうございます
ご返答したいのですが
いつも優しいnoteさんが
「時間をおいて」となっており
時間おいてもまだまだと
今しばらくの御猶予を
お含みおきくださいませ