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中国映画レビュー『独行月球』(邦題:月で始まるソロライフ)その3

ついに《独行月球》のレビューも今回で最後です🌕🧑‍🚀


早速ですが、前回の続きで【好きなシーン】ですが、もうここから先は涙なしには見れません。


【好きなシーン その11】

 独孤月とカンガルーの刚子の別れのシーンです。

 このシーンの沈腾の表情、セリフ、刚子の仕草、カメラ割り、音楽、もう全てが完璧です😭今まで何回このシーンを観たかわかりませんが、家の中で、電車で、喫茶店で、どこで見ても涙が出るのを止められません。

 表情もセリフも堪能するには、やっぱり画像必要ですね🎞️

『お前には散々ボコられたけどなぁ』
もうそんなこといわんといてーな、と言わんばかりの可愛い反応😍もう心が通ってる

独孤月:说真的这段时间我很开心,当然也挨了你不少顿毒打,这次真的不能跟我去了啊,好不容易有回表现的机会。你就别再跟我抢风头呢。

(ここでの日々、本当に楽しかったよ。まぁ、お前には散々ボコボコにされたけどなぁ。今回はマジでついて来させないからな。やっとこさ、みんなにカッコイイところを見てもらえるチャンスだからな。もうこれ以上俺の見せ場をかっさらわせはしないからな。)

 刚子の固定ベルトを調節しながら、じっと刚子の顔を見つめながら、ここまで言って、「じゃあな、気をつけてな」(それとも「ありがとな。愛してるぜ。」かな☺️)って言ってるような温かい表情で刚子から離れていく独孤月。

刚子は手をバタバタさせて、離れるのを嫌がる。
もうこれだけで涙腺崩壊なんですけど、お互いの宇宙船の遮蔽扉が閉まり、
何重もの強化ガラスが2人を隔てる。

そこからの独孤月のセリフと表情がヤバい。

独孤月:“谢谢你一直陪着我,如果没有你,我可能撑不到现在,一定要安全返回地球,要长命百岁,好好活下去。然后,找个母袋鼠,生一窝小袋鼠,好吧刚子。”
(ずっと一緒にいてくれてありがとな。もしお前がいなかったら持ち堪えられなかったよ。絶対に無事に地球に帰るんだぞ。長生きして、幸せに暮らすんだぞ。それで、お前は本物のメスカンガルーと恋に落ちて、たくさんの子供に囲まれて暮らすんだ。いいな、刚子!)
言われた刚子の表情とこのあとの仕草もヤバい。
独孤月の宇宙船から切り離されて、少しずつ遠ざかっていく帰還船の中の刚子がそれに気づいて、手をバタバタさせながら窓を引っ掻く……あぁ、もう涙で画面がよく見えない…😭
もう戻れないってわかって、じっと独孤月を見つめて窓にそっと右手を置く…😭😭
それを見て独孤月もそっと左手を窓に置く…😭😭😭

もはや1枚の窓越しでもないけれど、2人の気持ちと心はしっかりと重なったんでしょうね。人間とカンガルーでこんなシーンが描けるって本当にスゴイ。涙が枯れないか心配なくらい泣きました…


【好きなシーン その12】

ここまで書いて思ったんですが、この映画、ほとんど全部が好きなシーンなので、途中から映画のストーリーをなぞってるみたいになってしまいました😆

何はともあれ、書きます😊

 刚子と別れた後、独孤月は隕石群をすり抜けながらπ+のところへ移動しようとします。最初観た時は、他の映画にも出てくるカーチェイスみたいなノリで、映画のカーチェイスシーンにそこまで魅力を感じない自分もそんなに真剣に見てなかったんですが、何回も観ているうちに独孤月が汗が出るくらいの力と死と隣り合わせ(というより隕石群に激突したら马蓝星を、人類を救えなくなるっていう)の緊張感で操縦桿を握って、宇宙船を操り、その間、马蓝星や孙阳光(車椅子の幹部)達も緊張しながら独孤月を見守っているのがわかって、そこもやっぱり感動しました🥹

 『宇宙兄弟』を見て、宇宙って何か一つでも失敗するとそこに待っているのは死を覚悟しなければならない絶望だというのを宇宙事業に関わっている人は皆理解していて、それを知っているから関わっている人全員が必死に自身の任務と責任を果たそうとしている、というのを知ったんですが、この映画の俳優さん達がそれを演技で全て体現しているのがスゴイと思いました🤩

宇宙船が隕石と接触し、機体が破損、船体は激しく回転し、制御不能に😱

 リスクではあるけれど、回転を止める為にハッチを開くことを马蓝星が提案するも、ハッチが変形してしまっていて開くことができない……😨

 絶体絶命の中、諦めない独孤月は力いっぱいハッチを蹴る…蹴って🦶蹴って🦶蹴り続けて🦶🦶🦶……ついにハッチを蹴破った!!

その瞬間、马蓝星はじめ基地の全員がヒュッと息を呑み、一瞬時が止まった

 みんな直感的に宇宙船がハッチを失うことがどれくらい危機的なことなのかわかっていて、独孤月の帰還は絶望的だと瞬時に理解したっていうことなんだと思いました。

 誰もがその事実と向き合いきれない中、独孤月はやっぱりユーモアを交えて马蓝星に呼びかけます。

独孤月:“报告零一,现在有一个好消息和一个坏消息,你想先听哪一个?”
(01ゼロワン、いいニュースと悪いニュース、どっちから聞きたい?)
独孤月:“好消息是虽然发动机遭受了撞击,但从外表上看,应该问题不大,但坏消息是就在咱俩说话这会儿,它从眼前飘过去了,彻底没动力了。报告零一,我看见pai➕了。”
(いいニュースは、エンジンをぶつけたものの、外観的には問題なさそうってことかな。悪いニュースは、僕らがこうして話している今この時、エンジンが目の前を漂いながら遠ざかっていってて、もう全く動力が無くなったってことかな。ゼロワン、π+の姿を捉えたぞ。)

 誰もが「動力がなくなった=もう戻って来れない」という残酷な結末に言葉が出ません。そんな中、马蓝星の副官・魏辣斯が報告します。

魏辣斯:“以返回舱现在的移动路线,你最终将从距离pai➕一千七百公里的位置掠过。”
(帰還船の現在の移動ルートでいくと、最終的にはπ+から1700kmの地点を通ります。)

 この時点で皆、今の状況でπ+を破壊する方法は一つしかないことをわかっているのですが、誰も沈黙を破れない中、独孤月は马蓝星に向けてこう言います。

独孤月:“马蓝星,其实你当初把我落在月球,我一点儿都不怪你,那是你应该做的,(独孤月),一直以来,你都在做你应该做的事儿。现在,继续做你应该做的。”
(马蓝星、君があの時僕を月に置いていったこと、これっぽっちも責める気持ちはないよ。君はすべきことをしただけ。これまでずっと、君はいつも君のすべきことをしてきた。今この時も君のすべきことをするんだ。)
马蓝星:“什么是应该?无论什么理由,牺牲一个人都不应该!”
(すべきことって何?どんな理由があろうと、誰かを犠牲にするなんてすべきじゃない!)

 もう马蓝星も独孤月への想いが止まりません。马蓝星は他の誰かでも同じことを言ったかもしれませんが、独孤月は地球と交信できたあの日からこれまでに马蓝星から聞いた言葉や彼女と交わした言葉で、もう何も迷いはなかったでしょうね。彼の人生のモチベーション(动力)は愛する人马蓝星を守ることですから。

独孤月:“你也知道,没别的办法了。请把轨道参数同步到我的控制系统,我会把宇宙之锤运送到起爆点。马蓝星,打开直播吧。让我这个全球次顶流有个圆满的谢幕。”
(他に方法がないことは君もわかってるだろう。軌道パラメータをこっちの制御システムと同期してくれ。「スペースハンマー」を起爆地点まで運ぶよ。马蓝星、中継を再開してくれないか。この世界で2番目の人気者に最高のカーテンコールを味合わせてくれ。)

 余談ですが、『宇宙兄弟』では宇宙船の外での移動の時の練習を超入念にやってます。少しでも自分の推進する方向がズレるともう二度と戻って来れないからです。
 なので、独孤月が宇宙船の外に出て、核弾頭とのジョイント部分までヒョイっと身体を進めて片手で核弾頭付近をパシッと掴んだところは、「うわ!あぶなっ!」って内心ドキドキして、心拍上がりました😅

このシーンです😎

 ここから独孤月の最後の舞台、地球の人々に向けた挨拶が始まります。

独孤月:“大家好,我是独孤月,在这最后时刻,有些话想要对大家说,
长期以来,我一直独自生活在月球,有好几次我都想要放弃,后来,幸亏和你们联系上了,
这回我恐怕是回不去了,不用为我难过。“
(皆さん、こんにちは。独孤月です。この最後の刻に皆さんにお伝えしたいことがあります。長いこと、月で独りの日々を過ごしました。何度も諦めたくなる時がありました。でも、その後、幸いにも皆さんと交信することができました。今回、僕は帰ることは叶わなそうですが、どうか悲しんだりしないでください。)
 “在生活中,我一向认为处在中间的位置才是最好的,不显眼,不露锋芒,平平淡淡。“
(これまでの人生、僕はずっと中間のポジションこそ一番いいと思ってきました。
目立つことなく、ひけらかすことなく、平凡で起伏なんてない、そんなポジション。)
”现在我能挡在地球和pai➕的中间,这就是我这个中间人最应该做的事情啊。
我从小没有亲人没有朋友,是你们让我觉得不再孤独,谢谢你们。“
(今、僕は地球とπ+の中間に立ちはだかることができる。
これこそ僕という中間人間がやるのに最もふさわしいことだと思うんです。
僕は小さい頃から家族も友達もいなかった。
あなた達がいてくれて、僕はもう独りじゃないと思うことができました。ありがとう。)

 この言葉を聞いた地球のみんなも泣いてたけど、自分も涙が止まりませんでした😭

最後のロックを外して、核弾頭とともにπ+に向かっていく独孤月。
荘厳な音楽とともに物語も最後のクライマックスへ。

 ジェット噴射の音だけが宇宙空間に響く中、おもむろに「回家之路(カントリーロード)」を歌い始める独孤月。宇宙服のヘルメットの中のアカペラの歌声が心に沁みる。

最後の最後で马蓝星に聴かせることができたね🥹

 その後、別バージョンの「回家之路」(この歌詞もまたイイ👍)が流れる中、核弾頭の起爆ボタンを前にする马蓝星、大気圏を抜けて地球に無事に落下する為のパラシュート(この感動場面で「安全第一」ってぶっ込んでくるセンスが大好き😊)が開く刚子が乗った帰還船、地球で見守る人々……などなどがスクリーンには映し出されます。

独孤月がπ+にどんどん近づいていくところで、「回家之路」もクライマックスの歌詞に突入します。
↓自分の大好きな部分の歌詞です。

 “我的肩膀背得起银河的重量,却背不起一滴你想念的泪光,曾孤单曾幻想曾经一路,飞奔到你的目光,多盼望。”
(僕の肩は宇宙の重みを背負っても耐えられるけど、君の心から流れる涙はたとえ一粒でもその重みに堪えられない。)

 最後に马蓝星は起爆スイッチを押さなければならない場面で、自分の手で独孤月の生命を終わりにすることができずに一度手をボタンから離してしまいます。月面を離れる時の離陸ボタンは躊躇せずに押せたのに…。ボタンから離れる手の震えが涙腺をより一層崩壊させます😭😭

独孤月の最後の言葉、“马蓝星,带我回家”を聞いて、
马蓝星が涙を溜めながら意を決して遂にボタンを押す。
画面が真っ白になった時、自分の頭の中も真っ白になって、
彼女達と同じ喪失感を味わったような気がしました……


 物語の結末として、独孤月が身を挺して救った人類と地球の10数年後の様子が描かれます。魏辣斯は車椅子のボスの職位を引き継ぎ、独孤月の最後の刻に魏辣斯と抱き合ってその別れを共に悲しんだ葫芦丝儿は魏辣斯とイイ感じになってて、車椅子のボスは独孤月の偉業から貰った不思議なパワーによってか車椅子から立ち上がり釣りを楽しむ悠々自適な生活に。カンガルーの刚子は葫芦丝儿からお弁当を持ってきてもらって、芝生に寝そべりながら马蓝星の乗ったロケットの打ち上げを眺めてる。カンガルーの彼女はまだ見つけてないみたい😇ガンバレ、刚子!😆


 って思ってたんですが!!上の文章を書きながら、最後のシーンを再度見返して初めて気がつきました!

ロケットの打ち上げを見ている刚子達から離れたところにカンガルーが5匹ほど🦘🦘🦘🦘🦘😳

 離れているので、身体の大きさがよくわからないんですが、もしかして刚子の子供達?!? あー、そうだったらいいな〜🌟


 このあと、马蓝星が乗ったロケットが発射して、一旦エンドロールに入ります。また冒頭と同じポップな感じで、あ~スゴイ物語だった…と思っていたら、更にそこからまだありました。

ちゃんと「飞向彩蛋(最終エピローグに向かって飛んでくよ)」って書いてある😋芸が細かい😆

 马蓝星が月に戻って、基地に入ろうとする時、基地の入り口には马蓝星を出迎える宇宙服姿の独孤月の姿が。

基地に入っていく隊員達と違いヘルメットをしていない独孤月

 宇宙空間でヘルメットをしていないので、そういうことなんですが、幻の独孤月と対面した马蓝星の表情と涙に心打たれました😢

独孤月が破壊したπ+の欠片は、月の引力に引き寄せられるはずがそのまま地球の軌道に残り、
木星のような輪っかになって残ったらしいです🪐

 最後もこんな形で独孤月を地球に、家に帰してあげるなんて、そのアイデアに脱帽です🎩

  

“宇宙这么大 我们还会遇见”
(宇宙はこんなにも広いけれど、それでも僕たちは出会うんだ)

 

 本当に壮大なラブストーリーだったと思っています。


 ここまで、散々、好きなシーンを並べてきましたが、この映画の中で一番好きな、心に響いたシーンが実はこのシーンです。

 ミールプレートを手に、意を決した表情の独孤月

 独孤月は马蓝星に話しかけようと彼女の座っているテーブルに向かって歩いて行きます。ところが、テーブルの一歩手前で、カップを手にした朱皮特がスッとなんの悪気もなく割り込んできてしまいます😫

あと数メートルだったのに!
朱皮特に気づくや、直角に折れて…
何事もなかったかのように立ち去る独孤月🚶😢

 独孤月は左に直角に折れて、何事もなかったように立ち去り、そのまま马蓝星に話しかけることができなかったっていう場面。
 朱皮特は副官だからそりゃあ色々話すこともあるだろうけども今じゃないでしょー、独孤月も勇気を振り絞っただろうに…。でももしあのタイミングで話してたら、马蓝星からは「何この人?」くらいでその後も相手にされず、马蓝星への想いを胸にラブレターを書こうとしてヘッドフォンをしながら文面を考えるなんてこともなく、そうすると退避ロケットに乗り遅れることも起こってなくて、月に取り残されて帰還途中でπ+を阻止することもなかったかもしれないから、あの時の「失意の左直角折れ」こそが全人類を救ったと言えるって考えると本当にすごいストーリーだなぁと……それより何より、独孤月個人的には、全人類が救われたことよりも、马蓝星にその類まれなる才能と生命力を知ってもらうことができて、想いも知ってもらえて、そしておそらく马蓝星からの想いも感じることができたこと、そしてその马蓝星を守ってあげられたことが彼にとっては何よりも尊いことだったんだろうなぁと思います。ついぞ、ついぞ直接会って想いを伝えたり、互いの温もりに触れることは叶わなかったけど、おそらく二人の心は魂レベルで結ばれたんだろうなぁ……と思いたいっ!

 思い入れが強すぎて、こんなに長く書いてしまいました。
 がっつりネタバレしてますが、これを読んでくれた方はおそらくもう既に一度は観ていると思いますのでご容赦ください😌
 これを機会にぜひもう一度!笑😆そして周りの人達にも是非薦めてみてください!


 

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