#10 『バンザイ大阪』(大阪)
話し相手JAPAN TOURとは
前回の#9の『家庭訪問』で、お世話になった渡辺さんちを出る時、カレーの匂いが絡まった後ろ髪を思いっきり引かれまくりながら旅立ち、京都市内で最初の『話し相手』のテーブルを出そうとしたら
「ここはあかんよ、やるんやったら向こう行ってやって」
と、河原町の高島屋前で『占い』の看板を出したオバチャンに冷たく排除されました。
こっちは占わない(占えない)し、お金もいただかないので、邪魔したりお客さんを奪う気持ちはサラサラないし、なんなら、話し相手に来た人を、「占いならアッチやで」と、絶妙のスルーパスを送るぐらいの癒着もアリだと思ったのですが・・・
縄張りみたいなものがあるんでしょうね、テーブルを置く事すら出来ずに終わりました。
河原町通りだけでなく、木屋町通り、六角公園、京阪の三条など、なんとかテーブルを出せそうな場所を探したんですが、これまでにテーブルを出す前に「アカン」と言われた事がなかったので、最初に高島屋の前で言われた言葉を、だいぶ引きずってたような気がします。
結局、京都ではテーブルを出せないまま、惨敗感だけ膨らんで大阪に向かうという事になりました。
が、その前に、京都の最後に出会ったカップルの会話(途中から参戦)です。
『ザンパイ京都』
「なぁなぁ、そしたら新婚旅行は世界3周な」
目が覚めた時、最初に耳に飛び込んできたカップルの会話は、彼女の方からだった。
完全にへこまされた京都で、惨敗感背負いまくって京都での1日を終えて、「もう大阪行こ」と思いながら、まだ寒かった朝、開店前のプロントに並んで、朝7時半の開店と同時に突入し、気付いたら10時を回ってた。
プロントに入ったのは『コーヒー100円サービス中』と書かれていたからというのもあった。
目が覚めた時、最初に耳に飛び込んできたカップルの会話は、彼女の方からだった。
彼女「なぁなぁ、そしたら新婚旅行は世界3周な」
彼氏「何で3周やねん、だいたい海外はアカンて、金かかるから」
彼女「え〜、国内?」
彼氏「そやな、国内やろな、やっぱり」
彼女「そしたら北海道2周な」
彼氏「お前、まわんのすっきゃな〜、1周でええやないか!」
絶妙の「まわんのすっきゃなぁ〜」に、思わず笑ってしまった。
関西では、人の会話に笑ったら巻き込まれるというか、ロックオンされる事が多い。案の定ロックオンされた。
で、ロックオンされた場合(たぶん)のっかるのがルールだ。
彼氏「みてみぃ、笑ろてはるやないか、ねぇ(オレに)コイツの言うてることおかしいでしょ?」
彼女「なんでぇな(オレに)おかしないでしょ?」
オレ「まぁ、世界3周は、ちょっと回りすぎかなと思いますけど」
彼氏「ほらみてみろや!」
オレ「でも、北海道やったら2周ぐらいせんと、北海道の良さは伝わらんのちゃいます?」
彼女「ほら、みてみぃや!な、2周しよ、2周」
彼氏「なんでやねん!なんでそんなマワんの好きねん!」
彼女「なんか、回りたいやん、同じとこ」
彼氏「そしたら、京都御所回ったらええやんけ」
彼女「なんで御所やの!御所って、すぐ回れてまうやん」
彼氏「6周とかしたら、けっこうかかるやんけ」
彼女「市民マラソンちゃうねんで、新婚旅行やで新婚旅行!ねぇ(またオレに来た)」
オレ「3周右回りで、残り3周左回りとか、ちょっと新婚旅行っぽくなるんちゃいます?」
彼女「なるほどね、それやったら景色も変わるし、ええかも。ってなんでやねん!」
と、彼女のノリ突っ込みで会話は終わった。
パンフレットを抱えてプロントを出ていくカップルを見送りながら、東京渋谷の喫茶店でのカップルの会話を思い出した。
彼女「ねぇねぇ、花火よりさぁ、流星群見に行かない?」
と、彼女の方から切り出した。聞くつもりはなかったが『夏休み計画トーク』が耳に入って来た。
彼氏「どこでやってんの?」
(流星群ってやってるわけではないやろ?)と思いながら
彼女「八ヶ岳だから、新宿から特急で2時間だよ。」
彼女は嬉しそうにしゃべってた。
彼氏「へぇ〜いいじゃんいいじゃん。」
彼女「今からでも泊れるとこあるかなぁ?」
彼氏「ないかもな。最悪ラブホだな。」
(最悪ではないやろ、おまえにとったら)と思いながら
彼女「でもさぁ、でもさぁ、温泉とかもイイよね」
彼氏「まぁな。でも、ちゃんと貸切風呂があるホテルとかって、もう、今からじゃ取れない思うな」
(貸切風呂は必須なんや)と思いながら
彼女「そうだよねぇ、もぉ遅いよねぇ。でもさぁ伊豆とかだったら、外湯の温泉だけでもあるもんね」
彼氏「そうだな、泊まりは最悪ラブホでもいいもんな」
(おまえの場合の最高って、どんなんなの?)と思いながら
結局ふたりはその後も計画トークで盛り上がり、渋谷に映画を見に行く事で意見が一致した。
(映画がいっぱいやったら、最悪ラブホに行くんやろなぁ)と思いながら
『ストリートミュージシャン 〜ここは道端〜』
面白かった。京都から出る前に、ストリートミュージシャンのパフォーマンスにやられた。歌のタイトルは『ここは道端』というタイトルやった。
歌詞は、「幸せについて まじめに考えたくない はじめよう バカバカシイこと ここは道端」というような歌だった。
歌の途中で、サポートメンバー(グループではないらしい)を紹介するのだが、「〜くんのギターソロ!」と言うと、ギターの人は、お客さんの中に入っていく。
次にパーカッションの人も紹介されて、3人で、お客さんの中を行進しながら2周してた。
めちゃくちゃ楽しそうだった。お客さんも楽しそうにしてた。
プロントのカップルの新婚旅行が、こんな感じだったら、御所を3周ぐらいしても、楽しいんちゃうかなと思いながら、京都を出た。
大阪の道端で、バカバカシイこと始めようとも思った。
京都から大阪に向かって、まぁまぁヘコミながら歩いてる時、雨まで降ってきて、今日は、どうしよ・・・と思ってたタイミングで、同級生とバッタリ会いました。
前から歩いてくる女子と目があったまま離れないんです、お互いに。で、すれ違う直前で
「あれぇ〜、やっぱり、福島君?久しぶりやん」
「おぉぉぉぉぉぉ〜、久し振りやなぁ〜」
とは言ったものの名前が全く出てこないんです。向こうは出てんのにマズイなぁと、たぶん、藤本さんだったと思うんですが定かでないので、名前の話題はサラッと避けました。
「雨降ってんのに、傘もささんと。なにしてんの、こんなとこで?なに、その荷物?」
「お前こそなにしてんねん(名前、何やったかな)」
「引っ越して、家、この近所やねん」
「そうなんや(名前が出てけぇへん)」
「今、ダンス教えてんねん、エアロビの講師。で、福島君は?」
「そやな、積もる(募る?)話もあるし、雨やし、たのむ1泊させて」
「あははははは、ムリムリ」
ほんの数日前に、見ず知らずの渡辺さんが泊めてくれたのに、次の日には、カレーまでごちそうしてくれたのに、同級生が、笑いながら「ムリムリ」って、なんやねん!
名前が、未だに思い出せないので、そらまぁ、しょうがないか・・・
と日記に書いてました。
『大阪、バンザイ』
夕方の5時に『話し相手JAPAN TOUR in OSAKA 』を始めて、AM2時、ほぼ休みなく話し相手をやってる。
京都でヘコんでたので、大阪でも若干ビビリながら、東通り商店街の入り口のところにナイスポジションがあったけど、似顔絵を描いてる3人組の学生がいて、お客さんも7〜8人いたので、ちょっとビビリながら聞いてみた。
「この辺の空いてることって、縄張りみたいなんってあるんすか?」
「あぁ、なんかあるみたいですよ」
「そうなんや。お金とか取らなくても、なんか言われるんすかね?」
「僕ら言われましたけど、何やらはるんですか?」
「あ、僕は、話し相手を」
全員、爆笑してた。お客さんも含めて、みんな笑ってた。
「やったらええんちゃいます。それ、めっちゃオモロイっすね」
というワケで、京都で失った自信を2分で取り戻して、それからは、ひっきりなしに話し相手がやって来た。
カップルで歩いてた女の子が、ペットボトルの烏龍茶を飲んだ瞬間に『話し相手』と『占い(え)ません』の看板が目に入ったらしく、豪快に烏龍茶を吹き出した。
となりにいた彼氏は、突然、烏龍茶を吹き出した彼女をて笑いながら
「おいおい、鼻からチャー出てるで」
「はいった、はいった、ツボはいってもうた」
と言って座ってきてくれた。15分ほど楽しくしゃべった後、彼女の方が
「ホンマ楽しかったわ、めっちゃ楽しかったわ、なんか記念になるもん・・・あげたい」
「いやいや、ふつう『なんか下さい』やろ?あげたいって、キミ」
「なんかないかなぁ、なんか記念になるもん」
そぉ言いながら探し始めた。『あげたいもん』が、なかなか決まらないようだった。
オレ「ええって、ええって、何もいらんって」
彼女「うわ〜、なんもないわ、いややなぁ、なんかあげたいのに」
オレ「ホンマ、気にせんといて」
彼女「あッ、あった!ミフィーちゃん(小さいぬいぐるみだった)があった・・・これ気に入ってんのになぁ」
オレ「いやいや、そんなん気に入ってんねやったら無理せんでええって。なんかブルーになってるやん。」
彼女「もぉ、ええから、コレもらって下さいよ!」
オレ「なんでちょっと切れかかってんねん!」
彼氏は、ずっと笑ってやり取りを見てた。で、せっかくなんで、いただくことにした。
オレ「そぉ?じゃぁ、ありがとう」
彼女「大事にして下さいね、このコめっちゃ気に入ってるんですよ」
オレ「わかった、大事に連れていくから」
彼女「そしたら、元気でね」
そのコはさよならの言葉を、明らかにオレにではなくミフィーちゃんに言ってた。
実は、次の日に、ミフィーちゃんのコ(と呼んでる)が、ちょっと離れた柱の影に隠れてるのを見つけた。
また、話し相手に?もしかして、あんなに楽しそうにしてたのに、実は悩みがあったりして?そんな風に思いながら
「なにしてんの?おいでや」
と、呼んでみたら、大変申し訳無さそうな顔して
「すみません・・・・やっぱりミフィーちゃん返して下さい」
「ええよ、ええよ、もちろん・・・」
そして、無事、ミッフィーちゃんは、おそらくこの世で一番大切にしてくれる持ち主のもとに戻った。そして帰り際に、ミッフィーちゃんの子が
「ありがとうございます。そのかわり、なんか代わりになるもん・・・あげたい」
もぉええって!
なんか、ミフィーちゃんを取り戻しに来てくれたのが、めちゃくちゃ面白くて楽しくて、なんか嬉しかった。
彼女は、丁寧に頭をさげて帰っていったけど、よく見たら信号のところで彼氏が待ってた。彼氏も笑いながら頭を下げてたのが、ものすっごい微笑ましかった。
次回の#11では、キャラ強めな大阪の人たちを、お届けします。
そして、もうひとつ、こんな事も続けています。
【どうぞう と】
世界には、数多くの銅像がある。
歴史上の人物、知られざる偉人、アニメのキャラクターなど、みんなが知ってる銅像から、「なぜ、そこに?」と首をかしげてしまうような、名もなき銅像(実際には著名な芸術家や彫刻家の作品なのだが)が、駅前や公園、商店街の片隅、そして道路沿いにたたずんでいる。
そんな銅像たちの中に、「あぁ、話しかけたい」と思う銅像がいる。彼ら彼女たちと過ごした時間。それが、『どうぞう と』である。
お時間のある方、【どうぞう と】は、コチラから見れます。