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【腕時計】ウブロ クラシックフュージョン エッセンシャルグレーの感想

※時計用語が分からないという向きは、適宜ググってほしい。
※目次はない。休暇を取ってベガスに行ってる。

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 HUBLOTのクラシックフュージョンの新作であるエッセンシャルグレー 45mmが、私の手元に届いたのは2024年8月8日だ。それから1ヶ月が経過した。そこで、この素晴らしい相棒についての所感を少し書き連ねようと思う。書き連ねただけなので、駄文失礼する。

 結論──というべきか、1ヶ月使ってみた感想は……総合的にとても満足度の高い良い時計!ということになる

 もしもあなたが時計愛好家で、この時計の購入を検討しているのならば、私は強く推したい。
 もしもあなたが機械式腕時計に興味を持っていて、何か「これぞ!」という1本を探しているのならば、私はこの時計を強くオススメする。
 もしもあなたが「腕時計なんてそこら辺のでいい。なんならスマホで時間わかるだろ」という向きならば、これもなにかの縁というやつだ。ひとつHUBLOTの公式サイトを覗いてみては如何だろうか。

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 まずこの腕時計は、HUBLOTのオンライン限定なので、買ってすぐに腕に巻けるわけではない。手元に届くまで2日間待ったが、その間のワクワクとソワソワは今でも忘れられないものだ。焦れったく、そして期待に胸を膨らませた2日間だった。

クラシックフュージョン エッセンシャルグレーが届いた時の写真。

 この時計は所謂「ラグスポ(ラグジュアリースポーツ)」であるので決して安くはない。だがラグスポ時計の中では比較的手の届く価格帯である。パテック・フィリップのノーチラスや、個人的にラグスポ最強だと思っているオーデマ・ピゲのロイヤルオークに比べれば、なんという慎ましい価格だろう…!
 それでも庶民の私からすれば高級腕時計であることに間違いはなく、かなり無理をして購入に及んだ。
 それに見合うだけの満足感が、この時計にはあると断言する。

 私はこれまで腕時計やアンティーク懐中時計を複数所有してきた。無論、時計好きとしてはクロノグラフやアニュアルカレンダーの時計も腕に巻いてきた。A.ランゲ&ゾーネのランゲ1やグラスヒュッテ・オリジナルのパノマティックルナといった変わり種のダイアル配置を持つ時計にも手を出した。
 ただ、生来の飽きっぽさからか、長年に亘り所有し続けることはなく、手放した時計も多い。
 結局のところ、自分には「スモセコでダイアルがゴチャゴチャしていないシンプルな時計」が合っていると思うに至った。特に英国のJ.W.ベンソンのアンティーク懐中時計は、シンプルな3針スモセコのローマンインデックスで、品が良く視認性も非常に高く、お気に入りだ。

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クラシックフュージョン エッセンシャルグレーの全景。 

 クラシックフュージョンはHUBLOTを代表する時計のひとつであり、HUBLOTのライナップの中でも比較的手を出しやすい、エントリーモデルと言える。
 そのクラシックフュージョンの最新モデルが、エッセンシャルグレーだ。
 ご覧の通りシンプルな3針時計なのだが、スモセコではない。センターセコンドだ。だが、初めてHUBLOTのサイトで写真を見た瞬間、雷に打たれたようにビビッときた。

 ──なんて美しい時計なんだろう。

 とにかく良い。チタンとファブリック&ラバーという異なる素材の融合なのに、シックなグレーで統一された配色がなんとも言えぬ品の良さと色気を感じさせる。
 シンプルなサンレイ仕上げのグレーのダイアルに、これまたシンプルなペンシル針を合わせ、秒針の尻尾にはHUBLOTのロゴマークがあしらわれている。光を受けて輝くアプライドインデックスは落ち着いた印象で視認性も高い。3時位置に控えめに配されているデイト表示は、ダイアル全体の表情を邪魔することなく存在している。

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ファブリック&ラバーのストラップも本体と同じグレーにすることで統一感が形成されている。

 HUBLOTは「The Art of Fusion(異なる素材やアイデアの融合)」をモットーに掲げるウォッチメゾンだ。
 この時計もチタン製ケースにファブリック&ラバーのストラップを組み合わせている。ラバーストラップは、ともすれば安っぽく見えてしまい、特に時計愛好家ではない向きからは敬遠されがちだ。
 しかしこのクラシックフュージョン エッセンシャルグレーは、ラバーストラップの表側にファブリックを縫合して安っぽさを払拭しており、ラグスポに相応しい適度なカジュアルさと品の良さを両立している。
 ダイアルもベゼルもケースも一体型のラグも、ストラップのファブリックもラバーも、全てがシックなグレーの配色で統一感のある仕上がりになっている。

 ラバーストラップの真価は汗を吸わないことと、手首に絶妙にフィットすることだ。その点においても、この時計は優れている。快適で軽快だ。レザーストラップのように汗を吸ってしまうことはなく、ブレスレット(金属ベルト)のようにコマの隙間に汚れが溜まることもない。──無論、ラバーであるから経年劣化はするだろうが。

ケース一体型ラグの角度が非常に良い。

 私が特に気に入っているのは、ラグスポらしいケース一体型ラグの取り付け角度だ。この角度が絶妙で、45mmという大きめのケース径であるにも関わらず、私の16.5cmという細めの手首にもバッチリとフィットしてくれる。
 腕時計のケース径は38〜43mm程度が一般的で、45mmは大きい部類だ。クラシックフュージョン エッセンシャルグレーには42mm径も用意されているが、余程のことがない限り、男性なら45mm、女性なら42mmを選ぶといいと感じている。

 装着感については、上記の通り優れたラグの角度と、ラバーストラップならではの良好なフィット感によって非常に着け心地が良い。クラスプもフォールディングクラスプで、着け外しが非常にスムーズだ。チタン製のケースなので、45mmという大きさにも関わらず軽い。腕時計の"重み"を感じたい向きには、少し不満かもしれないが。
 ラバーストラップというと懸念されるのが、手首裏側のストラップの違和感だろう。レザーストラップと違い、ラバーはその素材故に留め具に通すという柔軟なことが出来ず、6時側のストラップがそのままビローンと手首裏側に触れることになるからだ。
 だが、クラシックフュージョンは良質なラバーを使っているようで、違和感や不快感は一切ない。「The Art of Fusion」の精神の成せるワザと言えると思う。

クラスプ周りに違和感など微塵も感じない仕上がり。

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 機械式腕時計といえば、兎にも角にも問題になるのは歩度(姿勢差誤差)だ。これは日常使いを前提とするのならば避けては通れぬ命題であり、歩度が優れている(=小さい)ほど優秀な時計とされるし、高級腕時計は歩度の良さをウリにしている──というより歩度が悪いムーブメントなど論外だ。
 クラシックフュージョン エッセンシャルグレーは、HUBLOTのHUB1112 自動巻きムーブメントだ。
 我が相棒の歩度は、12時上位置で日差なんと±0秒。装着時は日差+2秒である。
 一般論として、機械式時計の歩度は日差±20秒前後程度までは許容範囲とされているから、私は良い個体に出会えたと言えるだろう。
 つまり、腕に巻いて一日共に過ごしても1〜2秒進む程度であり、使わない日は12時上位置で保管しておけばズレは生じない、ということだ。
 なお、自動巻きの機械式腕時計を所有している向きには当然かも知れないが、ウォッチワインディングマシーンを備えることをオススメする。時計が磁気帯びしない機構のものを選んでほしい。

ムーブメントはHUB1112。小さめだが歩度は良い。

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 クラシックフュージョン エッセンシャルグレーのダイアルには、ミニッツトラック(分目盛り)が存在しない。ドレスウォッチによくある仕様で、凄いモノになるとインデックスさえ存在せずに、時針と分針の角度だけで時刻を判別することになる。だが思い出してほしい。我々がアナログ時計の見方を覚えた幼少の頃、長い針と短い針の位置関係──角度で覚えていったのだ。
 クラシックフュージョン エッセンシャルグレーは、光を受けて輝く針とアプライドインデックスのおかげで、分針の位置がハッキリと分かる。そのため、すぐに慣れて「今は何時何分か」を瞬時に判別できるようになる。角度とインデックスからの距離が視認しやすいのだ。
 また、ダイアルがグレーで針とインデックスが銀白色では視認しづらいのではないか?との懸念はあるだろうが、それも大丈夫。針もアプライドインデックスも山型になっており、光を上手く反射して視認性を充分確保している。

グレーのダイアルに銀白色の針とアプライドインデックス。

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 ここまでつらつらと書いたように、腕時計本来の役目──「手首上での時間の把握」に関しては全く問題がない。視認性も良く、軽くて装着感も優れており、ラグスポとしての品格とカジュアルさも申し分ない。

 では普段使いとしての適性はどうなのか?

 普段使いの腕時計は、視認性・装着感・満足度の三点が重要だと私は考えている。
 見やすく、着け心地よく、腕に巻きたくなる腕時計でなければ、いくら高級だろうとお手頃だろうと早々に腕に巻かなくなるだろう。使わない腕時計に何の意味があろうか。投機目的以外で。
 クラシックフュージョン エッセンシャルグレーは、視認性と装着感は申し分ないことは述べてきた。あとは満足度だ。

 腕時計の満足度は、値段と使い方の相関関係であると思う。晴れの舞台に着ける腕時計なら、何百万もするドレスウォッチでもいい。だが普段使いとなると、どこかにぶつけてしまう危険性と常に隣り合わせだ。特にベゼルとケースサイドは何かにぶつけやすいため、小傷が付いたくらいで大騒ぎするようでは普段使いは出来ない。

 クラシックフュージョンの価格をどう捉えるかは人それぞれだが、私はこの価格でこの視認性や装着感、そして性能ならば「普段使いの腕時計として満足度は非常に高い」と感じている。
 最低限である時間は分かりやすいしデイト表示もある。一目でHUBLOTと分かる舷窓型のビス打ちベゼルも静かな存在感を持っていて誇らしい。
 なによりカジュアル寄りでありながら品格も備えていて、コーディネートの主役になるのだ。特にモノクロコーデとの相性は抜群で、私のようなおじさんの普段使いに適している。もちろんヤングにも似合うはずだ。ヤングでHUBLOTを手首に巻いているとあれば、道行く人が振り返り、手首からオーラが生まれて豪運が唸り爆運が炸裂して人生勝ち組になれる──かもしれない。

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 この時計にまつわる後悔が何かあるとすれば、それは身に覚えのないキズだ。
 クラシックフュージョンのアイコンでもある舷窓型のビス打ちベゼルの左上に、横筋の傷が付いている。新品(勿論だ!)で買って1ヶ月でコレだ。しかも全く身に覚えがない。どこにぶつけたのか皆目見当もつかない。気がついたらキズがついていた。悔やんても悔やみきれない。なにせ舷窓型ビス打ちベゼルはクラシックフュージョンの「顔」なのだから…!
 だが自分以外に誰も触っていない以上、責任は自分にある。
 「ベゼルはキズが付きやすいんだ!」と自分を説得することには成功している。だからその時の自分を探して殴りに行くためにタイムマシンに乗る必要もない──。
 手放す気はないのでリセールバリューに影響が出る……などと騒ぐ気もない。いや、本当に騒ぐ気はない。
 腕時計は使っていれば自然とキズが付くもの──使わない腕時計に意味などない。投機目的以外では。

光を当てると分かるベゼルのキズ。…泣きたい。

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 さてさて。ここまで読んでくれた勇士はどれほど居るのか。
 長々とした駄文で申し訳なかったが、あなたは約4900文字分の散漫とした文を読むだけの気力胆力を持つことだけは確かだ。

 この記事でクラシックフュージョン エッセンシャルグレーの良さが少しでも伝わってくれればと願う。
 あなたの手首にもクラシックフュージョンが巻かれる日が来ると素敵だ。この記事がきっかけであったなら、なおのこと。


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