大切なものを掃除機に吸い込まれる恐怖 | 母とのこと #4
わたしの頭の中は、ひとつのことをしている途中で他のことを思いついて、その途中でまた違うことを思いついて…という調子で、とっちらかった状態になりやすかった。だから、おもちゃなどを片付けなさいと言われても、やろうと思っていても最後まで続けてできず、途中で違うことをやったりしがちだった。ただ、頭の片隅には片付けなければ、という意識はあり、後でやろうと思ってはいた。
だけど、母はそれが我慢できなかったのだろう。
「さっさと片付けないと吸い込むよー!!」
…と、掃除機で脅しながら掃除を始めるのだった。
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それを何度も経験したから、わたしは、この世界は大切なものが突然うばわれる恐怖におびえなければならない場所だと認識している。
お母さん、あなたにとっては取るに足らない、何の役にも立たないおもちゃだったんだろうね。
自分がもしわたしだったら、って、考えたことが一度でもあった?
ないよね。
そんなこと、できない人なのは知ってる。
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ある日、自分のおもちゃの中にあったはずの、何かのおまけでもらったプラスチックの人形がなくなっているのに気がついた。
「○○がない。お母さん、知らん?」
聞くと母は、
「あんた最近あれで遊んでなかったから捨てたよ。」
と、あっさりと言った。
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わたしは、この世界は自分の持ち物を勝手に捨てられるところだと認識した。
だから今も、自分の持ち物を人に触られるのが大嫌いだし、自分がいらないと思っているものしか人に貸さない。
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あるとき、ある絵を描いた。ここでは伏せるけど、親には見られたくない絵だった。だから、その絵は見られないよう机の中にしまっておいた。
ある日、母が突然、わたしにその絵を見せて、
「りあちゃん、何コレ???」
と、ニヤニヤしながら聞いた。
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わたしは、この世界は自分の持ち物を勝手に覗き見られる場所だと認識した。ここは、自分が興味を持ったものを表現すると、からかわれる世界だ、と認識した。
だからね、家にいても、あなたといても、心から安心じゃなかったよ。
だから、あなたは今、わたしと仲良くしたがるけど、わたしは一定の距離を保ちたいの。一緒にいても安心じゃないの。一緒にいる時間が少し長くなると、イラついてくるの。安心じゃないから。
たくさんご飯を作ってくれたのに、
夜、寝かしつけてくれたりもしたのに、
他にもいろんなことしてくれたのに、
ごめんね。
一緒にいても、安心じゃないの。