30代

  32歳を迎えた。こうして数字にすると、随分と 大人の年齢であることにびっくりしてしまう。もう30代の10分の2が過ぎてしまったのか。時間が経つのが早い。

  若い頃、わたしは20代のうちに死ぬのだと、漠然と思っていた。だから30代に突入したときには平均寿命を超えたような、どこか軽やかな気持ちになった。長生きしたいとは思わないけれど、孫の顔くらいは見たいな。年齢と共に神経図太くなるから大丈夫よ、とあの頃のわたしに言ってあげたい。

  少し前、本田健さんの「30代にしておきたい17のこと」を読んだ。〝30代は人生を変えられる最後の10年〟という言葉にどきりとする。26歳で結婚、27歳で出産し、人生での大きな出来事はもう済ませてしまったような気になっていた。後は流れに逆らわず生きていくだけ。そんな緩んでいた糸を、この本は少しだけ引っ張ってくれた。印象的だったのが「両親とお別れしておく」という項目。先日、母と電話で話をしたときに「〇〇さんの旦那さん、急に亡くなったらしくて。ショックで何て言っていいのかわからなかった」と話していた。わたしと同世代の息子さんが二人。若すぎる父親の死を予想していただろうか。

  親孝行なんてものはしたことがない。旅行に連れて行ったこともなければ、食事だってご馳走するどころか両親が支払ってくれる。しかし、わたしも親になり、親というものはそんなこと微塵も望んでいないことも知った。わたしたち親は、自分が亡き後も、子どもが生活に困らず、寂しくなく過ごしてくれることだけを望んでいる。「わたしたちがいなくなってもあの子は大丈夫」両親にそう思ってもらえるように少しはなったかな。

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