12/13 トルコ紅茶テイスティングイベント 参加レポート
日頃お世話になっている日本紅茶協会様のお誘いがあり、12/13に行われたトルコ紅茶のイベントに参加して参りましたので、その様子をこちらでご紹介したいと思います。
トルコの紅茶文化と日トルコ外交関係樹立という二つの「100周年」
12/13に行われたイベントは、11日〜13日という三日連続のプログラムの内の一つであり、
「トルコを味わう ~トルコの紅茶文化で、あたたかなひとときを~」
と銘されたものでした。三つのイベントの中でも、一般の方々を対象としたもので、ターキッシュティーのみならず、トルコの伝統的な甘味も提供され、トルコの紅茶文化を全身に浴びることができました。
会場はロイヤルガーデンカフェ青山。黄葉残る明治神宮並木通りの隣であり、暖かな雰囲気に包まれていました。ターキッシュらしいテーブルセッティングなどもあり、とても盛大で素敵な会場になっていました。
他の二日間のイベントも盛大なものであり、日本で今このようなイベントが催されている背景には、トルコ紅茶文化と日トルコ外交関係樹立という二つの100周年があるようです。
また、2022年にはユネスコ無形文化遺産に「トルコの紅茶文化:アイデンティティ、おもてなし、社会的交流の象徴」として登録されたようで、国際的にも注目を浴びております。
では、そんなトルコの紅茶文化についてイベントで学んだことを以下に記していきます。
生活に根ざすターキッシュティー
会場では、トルコのティーマスターをはじめ、その腕前を認められた方々が直接トルコ紅茶を振る舞ってくださいました。
紅茶はホッと一息つけるような安心する味で、何杯でも気軽に行けてしまうような魅力を持っていました。
一人一日平均3.4杯以上紅茶を飲むトルコ、その秘密とは?
驚くべきことに、イベントでは一杯限りではなく、何杯でもおかわりを勧められるのですが、その理由にはトルコ紅茶の現地での嗜まれ方が関わっているようです。
トルコの家庭において、お客様に対する紅茶の振る舞い方は、いわば「わんこ紅茶」。ホストが「おかわりいかがですか?」とはわざわざ聞かず、紅茶を飲み干してグラスが空になっているのであれば、それはそれはもう一杯飲むというサインになり、すぐに次の一杯を注がれます。
もう結構ですよ、という意思表示の際には、ティーカップの上にスプーンを裏返にして置くとのことです。この点もさながらわんこそばですね笑
私には以前から不思議に思っていたことがあるのですが、紅茶に関する統計を見てみると、国民一人当たりの紅茶の平均年間消費量は大差でトルコが一番多く、年間1,250杯。一日あたり平均3.4杯以上飲むことになります。これは日本の3倍以上の数値になります。(数値上は)全国民が一日3杯以上飲むなんて、あり得るのか…?と訝しんでいましたが、このような習慣を知ると、納得がいきます。
また、飲み方の多様性や紅茶の入れ方も、この消費量を裏付けるように思えました。それについても以下で解説していきます。
何杯も飲むからこそ、好みに合わせた飲み方
日常に根ざしたトルコ紅茶だからこそ、人それぞれこだわりの飲み方があるようです。お客様に紅茶を振る舞う時は、紅茶の濃さを聞いてからいれるのが通常であり、その種類は四つに大別できるようです。
「ダークティー」は濃いめの入れ方。チューリップグラスの2/3まで紅茶を入れ、お湯をなみなみ注ぎます。
「レギュラーティー」は紅茶を半分まで注いだ後お湯を注ぎます。
「ライトティー」は紅茶を1/3まで入れます。
「パシャティー」は子供とお年寄り向けに飲みやすくするもので、紅茶に熱い差し湯をするのではなく、ぬるめのお湯を入れて飲みやすくするいれ方とのこと。その際の濃さは1/6まで紅茶を入れます。
トルコ紅茶は伝統的にはお砂糖を入れて飲む場合が多かったですが、今では健康志向により砂糖を入れることも減ってきているようです。また砂糖を使う代わりにはちみつやジャムを入れて楽しむこともあるようです。
イベントでは、この入れ方に対して、「繊細さを持ちながら、相手に合わせて濃さを調節できる優しさを持ったトルコ紅茶」と表現されていて、大変感心しました。日常に根ざした文化だからこそ、飲む人に寄り添う飲み方が確立しているのでしょう。
伝統的なチューリップ型ティーグラスの秘密
イベントでの紅茶は全てこのチューリップ型グラスで振る舞われました。このターキッシュティーを象徴するような特徴的なグラスの形には、さまざまな理由があるようです。
まず、上部が開いた形になっているのは、トルコ紅茶はとても熱い状態のままいれるものであるため、熱すぎず空気と馴染ませられるようにこの形になっているとのことです。
夏の時期は、この上部の部分を持って飲む一方、冬の場合は中央の窪んでいる部分を握り込むように持って手を温めながら飲むとのことです。
写真にもあるソーサーは、伝統的な柄のようで、これについても解説していただきました。ソーサーが白である理由は、これが太陽の光を反射して、紅茶の色をより美しく見せる効果があるとのことです。
その上に乗る赤い点は、トルコでは「ウサギの血」と呼ばれ、この赤によっても、上に乗っている紅茶がますます映えて見えるそうです。かつてはご婦人たちがこの赤い点をつけるために親指で印をつけていたとのこと。
確かにグラス単体で紅茶を見た時と、ソーサーにおいた時では紅茶の色がまた違って見え、このような効果があるとは思わず、とても新鮮でした。
そしてその横にある紋章のようなデザイン。これはスーフィズムの中にあるモチーフを用いたもののようです。加えてソーサー中央にある花のような印もスーフィズムのモチーフで、「天国への扉」と言うような象徴になっているとのこと。
ダブルポットで入れる本格トルコ紅茶
トルコの紅茶は「ダブルポット」でいれるものとのこと。下のポットではお湯を沸かし、上のポットでは茶葉と沸騰したお湯を入れて紅茶を抽出します。下のポットには一般的に4,5人の場合には1Lの水を入れ、上のポットにはチューリップ型のティーグラス一つにつき、ティースプーン一杯分の茶葉と50mlのお湯を入れることで濃くお茶を抽出するようです。
(西洋式の紅茶の入れ方に慣れていると、その茶葉の多さと濃さに驚きます。)
また、この後も特徴的なのですが、茶葉にお湯を注いだ後も15分〜20分弱火にかけ続けます。強火にしてしまうと苦味や渋みが生まれてしまうため、弱火で入れ続けることがポイント。また抽出時にはかき混ぜたりポットをゆすったりするのも紅茶の風味のバランスを崩すため厳禁とのこと。
紅茶を注ぐときは、上のポットから紅茶を注いだ後に、下のポットでからお湯を注ぐことで濃さを調節します。
隠れた紅茶大国トルコの紅茶文化から、日本が学ぶこととは
今回のイベントでとても勉強になったことは、同じ紅茶でも、国によって明確に「紅茶文化」には差があるということ。そしてトルコのそれは生活に根ざしていて、常に生活と共にあるような、人々に寄り添った紅茶文化であり、それが年間消費量世界一である理由の一つであるということです。
紅茶において日々探究を続けると、より「正しい」紅茶の入れ方に執着してしまうタイミングがどこかで訪れるように思います。それも一つの趣味や探究のあり方ではありますが、国には国の紅茶文化があって、日々の生活における消費のあり方が、紅茶産業を支えているというのは、直視しなければならない現実です。
日本独自の紅茶文化とは一体何か、紅茶と共にある生活を見据えながらどのようなものを確立していくべきなのか、「おもてなし」という共通点を持ったトルコから学ぶことは多いでしょう。今回のイベントはそんなことを考える一つの貴重な機会になりました。
関係者の皆様にはこの場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました。
文責:Le Lien Rouge 代表、広報係各位