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【国際ニュースを分かりやすく解説!】インドの刑事法改正: 19世紀イギリス植民地時代に成立した3つの刑事法の改正


ニュースの内容

概要

2023年12月、インド議会は国の刑事法に重要な修正を加え、法制度の大幅な改革を行いました。これらの法案は、イギリス植民地時代に成立した刑事法(1860年のインド刑法、1898年の刑事訴訟法典、および1872年のインド証拠法)を置き換えるものです。この歴史的な法改正は、インドの刑事司法システムを根本的に変える可能性があります。

詳細

  1. モブリンチング(Mob Lynching):

    • 旧法(IPC): 共同故意による殺人として扱われ、死刑または終身刑が科される。

    • 新法(Bharatiya Nyaya Sanhita): 特定されていないが、人種、カースト、コミュニティ、性別、出生地、言語、個人的信念などの理由での殺人として扱われる。死刑、終身刑、または7年以上の懲役が可能​​。

  2. 女性と子どもに対する犯罪:

    • 旧法: 16歳未満または12歳未満の女の子に対する集団強姦は、それぞれ終身刑または終身刑または死刑とされる。

    • 新法: 18歳未満の女の子に対する集団強姦は、終身刑または死刑が可能​​。

  3. セクシャルハラスメント:

    • 旧法: 結婚の約束に基づく性行為は強姦として罰せられる。

    • 新法: 詐欺的な手段または結婚の偽りの約束による性行為は、最大10年の懲役と罰金が科される​​。

  4. 重大な変更:

    • 新法: 「組織犯罪」や「テロ行為」の定義が新設される。組織犯罪は死刑または終身刑と罰金が科される可能性があり、テロ行為はインドの統一、完全性、安全を脅かす行動として定義される​​。

  5. 軽微な窃盗:

    • 旧法: 特に定められていない。

    • 新法: 5000ルピー未満の窃盗はコミュニティサービスで罰せられる​​。

  6. 公務員に対する訴追:

    • 新法: 強姦や人身売買などの罪で公務員を訴追する際に、許可を得る必要がなくなる​​。

  7. 証拠の電子化:

    • 新法(Bharatiya Sakshya Bill): 電子的な手段による証拠提出が可能になり、二次証拠の範囲が拡大される

よく分かる解説① なぜインド刑事法が改正されたのか。

この法改正は、インドの刑事法制度にとって歴史的な転換点となる可能性があり、特にテクノロジーと法医学に焦点を当てて法律、警察、捜査システムを現代化することを目指しています。これらの法案は、インドの公共サービスと福祉を中心に据えた新時代の幕開けを意味するとされています。

1. インド思考に焦点

新しい法案は、植民地時代の考え方から離れ、インドの思考に基づいた司法制度を確立することを目指しています。これは、インドの価値観と原則に焦点を当てながら、インドの刑事司法制度を近代化する上での重要な一歩と見なされています。

2. 特定の法律の変更

インド刑法を置き換える「バラティヤ・ニャヤ・サニタ法案、2023年」は、姦通を犯罪として再導入し、警察が苦情や恩赦請願を認識するための固定タイムラインなどの規定を含んでいます。また、特定の犯罪に対する法医学的調査を義務付けています。

3. 保護と効率

修正案は、目撃者保護のための新しい計画を導入し、証言の記録や証拠の収集に電子的な手段を利用することを可能にします。FIRの提出、起訴状の提出、裁判の実施など、刑事手続きのさまざまな段階に特定のタイムラインが設定され、司法プロセスの効率性とタイムリーさを確保することを目指しています。

4. 欠席裁判と保釈規定

被告人が欠席していても裁判を進めることができる「欠席裁判」の規定が導入されました。さらに、1/3の刑期を務めた被告人は保釈を認められることがあります。

5. 罰則の改定

法案は、テロリズム、私刑、国家安全保障を危険にさらす犯罪などに対する罰則を強化することに焦点を当てています。テロリズムの定義が拡大され、死刑の規定が維持されています。

議会を通過した後、これらの法案は大統領の承認のために送られ、それによって法律となります。インドの歴史における重要な瞬間と見なされており、特に貧困層、社会的に疎外された層、社会の脆弱なセクションに対して、より関連性があり共感を持った法的枠組みを再定義する可能性があります。一方、これらの法案の可決は、一部の野党議員が議会から停職されたために不在であったことから、一部で論争がありました。法案の特定の側面について懸念があり、一部の人権活動家はその潜在的に厳格な性質について懸念を表明しています。

よく分かる解説② インド刑事法の歴史

1. 古代インドの法律

古代インドでは、主に「マヌ法典(マヌスムリティ)」や他の宗教文献が法律の源泉でした。これらは、宗教的および道徳的な指導原則を提供し、社会的な規範や刑罰を定めていました。

2. ムガル帝国時代

ムガル帝国下では、イスラム法(シャリーア)が一定の影響を及ぼしました。この時期、イスラム法と伝統的なヒンドゥー法が混在する状況が見られました。

3. 植民地時代の法律

18世紀以降、イギリス東インド会社、そして後にイギリス政府による支配が始まると、インドの法体系は大きな変化を遂げました。1829年に「インド刑法典」の起草が始まり、1860年にこの典範的な法典が導入されました。これは、インド刑事法の基礎を築き、現代に至るまで多くの部分が使用されています。

4. 独立後の変化

1947年のインドの独立後、国は自身の法律を発展させる道を歩み始めました。憲法が1950年に施行され、法の至上性と基本的人権の保護を確立しました。しかし、多くの刑事法の原則は、植民地時代から継承されていました。

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