【AND PET】#22 ペットと逃げられますか?
ペットの国外避難について
ウクライナ情勢について、現地の映像が連日報道されていますが、その中で、飼い主と共に国外へと避難するペットの姿を目にすることがあります。
平時であれば、動物の出入国は手続きに時間も手間もかなりかかります。例えば日本への入国では、
マイクロチップの埋め込み
狂犬病の予防接種(2回、1回目と2回目は30日以上あける)
狂犬病抗体検査
出国前の検査
狂犬病抗体検査後入国まで180日以上の待機
日本到着後の入国検査
が必要です。(参考:農林水産省 動物検疫所『指定地域以外から日本に犬・猫を輸入するための手引書』)
これは、農林水産大臣が指定する狂犬病の清浄国・地域以外からの入国に関する規定ですが、清浄国・地域とされているのが6つの国と地域(アイスランド、オーストラリア、ニュージーランド、フィジー諸島、ハワイ、グアム)だけなので、ほとんどの場合はこの手続きにのっとると考えてよいでしょう。
その他にも、出発地の政府機関が発行する証明書の取得が必要だったり、入国できる空海港が限定されていたり。これは日本の手続きだけが特に煩雑なわけではなく、動物の健康と安全のために世界各国で行われていることです。有事の際、これだけのことを行っている余裕はもちろんありません。
英国のタブロイド紙『デイリー・メール』(2月27日)によると、ウクライナと隣接するルーマニア、ポーランド、ハンガリーは、ウクライナから避難する人に対して、ペットの入国に関する制限を大幅に緩和したのだとか。国によって制限は異なりますが、スロバキアなどでも同様の措置とられているようです。
多くのウクライナの人たちが愛する家族の一員と共に避難できて、心の底からよかったと思います。ただ、避難した後の生活をどうするのかも深刻で、ポーランドの保護施設には多くの動物が預けられているというニュースもありました。
その一方で、ペットを連れていけないからと避難をためらう人も、やむを得ずペットを置いて避難した人もいるでしょう。
保護施設が攻撃され多くの猫が命を落としたというニュース、市内が爆撃される映像から聞こえてきた犬の悲鳴、命がけで保護活動を続ける団体。キエフ動物園はヨーロッパ動物園・水族館協会(EAZA)からの支援を受けながら動物たちの世話を続けていることをインスタグラムで発信しています。
1秒でも早く、この事態が収束することを願わずにはいられません。
自分とぼたんは一緒に避難できるのか
このような落ち着かない状況で迎えた3月11日。11年前のこの日、ペットと悲しい別れをした人が多くいました。しかし、東日本大震災やその後も続いた多くの自然災害の教訓として、ペットの同行避難や同伴避難に対する認識や理解が深まったように思います。
ちなみに、私の住む地域でも全ての避難所で同行避難が可能。同行避難とは避難所まで一緒に避難することを指し、同伴避難とは避難所で同じスペースで一緒に過ごすことを指します。お住まいの地域の避難所でどのような避難が可能なのか、予め調べておくといいでしょう。
環境省の『人とペットの災害対策ガイドライン <一般飼い主編>』では、災害対策の基本として以下の3点にまとめています。
飼い主が自らの安全を確保することが、災害時にもペットを適切に飼養することにつながる
健康面やしつけを含めたペットの平常時からの適正な飼養が、最も有効な災害対策になる
災害時にはペットを落ち着かせるとともに、逸走やケガなどに注意して、ペットとともに避難する
「なーんだ、当たり前のことじゃないか」などと思ってはいけません。一昨年に一般社団法人全日本動物専門教育協会の「日頃から備える猫のための防災セミナー」を受講しましたが、自分の至らなさを痛感する結果になりました。
自分が帰宅困難になった時の、ぼたんのための備えはできているか?
緊急時にぼたんが逃げ込める安全な場所が確保できているか?
ぼたんがパニックにならないよう落ち着かせられるのか?
避難開始のタイミングを適切に判断できるか?
1人と1匹の荷物を持って避難できるのか?
キャリーバッグに入りたがらないぼたんを避難させられるのか?
避難所でのぼたんの生活を想定できているか?
どれもこれも何の心構えも準備もできていないことばかり。さらに「避難所では飼い主の行動が見られている」という講師の方の言葉にもドキッとさせられました。
野澤ちかこさんがご自身の卒業制作である愛犬と飼い主のための防災テント「BOWHOUSE」をご紹介されていますが、その制作過程から、防災の観点でペット用品に何が求められるのかがよく分かりました。飼い主が考えるべきことはたくさんあります。
命を預かる覚悟が私はまだまだ足りていなかったという反省から、できることから少しずつ備えを進めています。ぼたんも自分の非常用持ち出しバッグを背負って、自力で避難してくれないかなぁなどと思いながら。