「ダンスで方向音痴が改善する」ってどういうことなのですか...?
マイパーソナル編集者を担当してくださっているみなみやんさんのnote一覧を眺めていたら、「え、どゆこと…?」って一瞬フリーズしてしまったタイトルがあった。
ダンスを練習したら、方向音痴が改善……
ダンスって、基本的にはひとつの空間内での運動というイメージで、それが「ある場所からある場所への移動」の能力と結びつくの…?
と、正直最初は半信半疑だった(ごめんなさい)。
私もしっかり方向音痴なのだけど、改善はもう諦めていた。
でもこの記事↑を読んだら、ひょっとしてまだチャンスが…?という気持ちも湧き始めて、どういうことなのかちょっと調べてみたくなった。
ダンスの何がどう効くのか
記事によると、
あ、そういえば!
『No No Girls』(好き)でも、振り付けのコーチをしている方が、
的なことをおっしゃっている場面があったよ(Episode 13, Hulu版)。
つまり、ダンスの上達に必要な「見て覚えるトレーニング」が、道を歩く時にランドマークを見て覚える力を高めているということなんだろうか。
そうだとしたら、ダンスあるいは自分の身体を動かすこと自体は、あまり重要ではないんだろうか?
…ってなことを考えてて、ふとアリの話を思い出した。
アリに視覚情報を学習させる実験では、アリが自由に歩ける場合の方が、位置を固定されている場合よりも、学習成績がよかったらしい。
さらに、本棚にあった書籍を読み返してみると、
といった記述があった。
大切なのは、
(身体の動きと何かしら関連した)(?)
しかるべき情報に、
意識を向けて、
覚える、
トレーニング?
そういう研究あるのかな
検索してみたところ、バチッとはまる論文は見つけられなかったんだけど、いくつか気になる研究があった。
「神経可塑性」がキーワードの1つみたい。
そしてこちら↓は、GPSデバイスの利用がヒトのナビゲーション能力に及ぼす影響について調べた研究。
ちゃんと理解できているか自信がないけど、おそらく、通ったことのない道でも利用できるようになるような空間認識力が前者で、通った道をあくまで通った通りに覚える力が後者、というイメージ。
後者タイプに関わるとされている、脳の「尾状核」領域の説明↓なんかも読むと、
ダンスで鍛えられるのは、後者タイプのナビゲーションのような気がしてくる。
でも、ダンスで海馬が発達したという結果から考えると、前者タイプにも関係しているんだろうか?ダンサーさんって、自分の相対的な位置を俯瞰的に把握する能力高そうだしなぁ。
うーん……。
そんな予感はしていたけど、そう単純に理解できることじゃあなさそうです(結論)。
とりあえず…「運動+記憶+出力」の繰り返しが大事そう
※ あくまで私見です↓
冒頭でも書いていたように、これまで、「方向音痴」というのはあくまで「空間認知」とか「ナビゲーション」という枠内での問題なのだと思い込んでいた。
だから例えば、「タクシードライバーの海馬領域の体積が変化している」みたいな話↓なら、するりと飲み込めるんだけど…。
でも今回調べてみた結果、もっと広く根本的な「身体や脳をどう環境と関わらせるか」みたいな特性に由来している(可能性がある)ようだと考えを改めた。
少なくとも私の場合は、自分の身体の動きや周囲の環境への無関心さ(= ぼんやり)に第一の原因がありそうである。たぶんその次に記憶力の問題がくる。
そんな私でも、身体を動かす習い事をしてナビゲーション能力を開花させられる可能性がまだあるのだろうか。ドラム教室とかはどうだろうか。
参考資料
筋トレにハマった女子がダンスを練習したら、方向音痴がどうやら改善した話|みなみやん@セルフケアの伝道師
https://note.com/minamiyan/n/n1a35101deed3
『No No Girls』
https://nonogirls.audition-bmsg.tokyo/
Sakiyama, T. and Suda, K. Movement during the acquisition of a visual landmark may be necessary for rapid learning in ants. J. Comp. Physiol. A 210, 75–81 (2024).
『なぜ人は地図を回すのか 方向オンチの博物誌』(村越真 著)
https://store.kadokawa.co.jp/shop/g/g321301000099/
Rehfeld, K. et al. Dancing or Fitness Sport? The Effects of Two Training Programs on Hippocampal Plasticity and Balance Abilities in Healthy Seniors. Front. Hum. Neurosci. 11, 305 (2017).
Hewston, P. et al. Effects of dance on cognitive function in older adults: a systematic review and meta-analysis. Age Ageing 50, 1084–1092 (2020).
Dahmani, L. & Bohbot, V. D. Habitual use of GPS negatively impacts spatial memory during self-guided navigation. Sci. Rep. 10, 6310 (2020).
『動物たちのナビゲーションの謎を解く』(デイビッド・バリー 著;熊谷玲美 訳)
http://www.intershift.jp/w_navi.html
↓
「第24章:ナビゲーションの脳科学」
ナビゲーション行動を刺激応答メカニズムで説明することについて、行動主義の文脈と合わせて解説されていて興味深かった。
Wikipedia「尾状核」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%BE%E7%8A%B6%E6%A0%B8
↑ 3Dモデルでの図解もあってわかりやすかった
Maguire, E. A. et al. Navigation-related structural change in the hippocampi of taxi drivers. Proc. Natl. Acad. Sci. 97, 4398–4403 (2000).
Woollett, K. & Maguire, E. A. Acquiring “the Knowledge” of London’s Layout Drives Structural Brain Changes. Curr. Biol. 21, 2109–2114 (2011).