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小学1年生の終わり、今は「経過観察」と決めました

小学1年生の5月に、習い事の先生に「おたくのお子さんは発達が遅れてるんですか?」と言われて衝撃を受け、実は宿題の「音読」ができていなかったことに気づいたという田辺さんに、気づいたきっかけ、読み書きの状態、経過観察すると決めた理由についてうかがいました。

お話しを聞いた方:田辺なおこさん(仮)
当事者との関係性:母

名前:田辺こうき(仮)
現在(取材時)の年齢:7歳 / 小学1年生の3月(新2年生になる前)
読み書きが苦手だと気づいた時期:小学1年生の5月
専門機関での判定(診断):なし

ー読み書きが苦手だと気づいたきっかけは?

小学1年生の5月に、習い事の先生に「おたくのお子さんは発達が遅れてるんですか?」と言われたことです。
教室の前に書かれた「今日やること」が読めない、読むのにすごく時間がかかるということで「配慮が必要なら教えてください」という意味で聞かれたと思うのですが、「あ、うちの子ってできてないって思われているんだ」とすごくショックを受けてしまって……。

年長さんのころにやっていたワークやチャレンジタッチではひらがなを書いているのを見ていましたし、知育玩具で文字を選ぶような遊びもしていました。
小学校にはいってからの音読の宿題は、学童でやってきており、学童の先生がチェックを入れてくれていたので、まさか「読めていない」とは思っていませんでした。
改めて家で音読をやらせてみると、どうやら物語のあるものは音で覚えているようでスラスラと読むのですが、まどみちおさんの「きゃきゅきょのうた」で小さい「や、ゆ、よ、つ」などが入っている文字(拗音)が読めていないことに気づきました。
そのほか、よくよく聞いていると文末の「~でした」などが少し違っていたり、文字通り読んではいないことにも気づきました。

ー読み書きが苦手だと気づき、どうしましたか?

恥ずかしながら、自分の子が「できない」と思われているということがショックで、ものすごく焦ってしまい、必死に覚えさせようとつきっきりで宿題や勉強をさせました。
食事をするテーブルにもあいうえお表を敷いて、文字が分からないときには「ありのあ、いちごのい……」と覚えさせようとしました。
「ち」も「よ」もわかるのにチョコレートの「ちょ」が読めないことが理解できなくて、怒鳴っても仕方ないとわかっていながら「なんで読めないの」「なんでできないの」と声を荒げてしまったこともあります。

思い返すと、自分が自分じゃないような感覚がします。とにかく頭がいっぱいでした。
比べたらダメだとわかっていても、2歳上のお姉ちゃんと比べたり、お姉ちゃんに「どうやって覚えたの?」なんて聞いちゃったり。
夫は「大丈夫でしょ、そのうちできるよ」と軽く言うし、逆に実母は「うちの孫ができないはずがない!大丈夫!!」と頑なで相談もできませんでした。
「夫や母は大丈夫とは言ってくれるけど、この先の支援や意思決定には関わってくれないんだろうな」と思い、私がどうにかしなきゃと焦りが増しました。

そんななか、会社の同僚に相談してみたら「発達性読み書き障害って知ってる?」と練馬区社会福祉協議会の冊子を教えてくれ、実は社内にはお子さんがこの障害だっていうひとがいるよ…とつないでくれました。
そのお子さんはうちの息子よりも年上で、すでにいろんな支援を受けていたので、こういうときはこうすればいいんだと知れて少しほっとしました。

ー「ほかにもいる」と知れたことで、なにか変わったことはありますか?

正しく知らないことが不安につながっていたんだとわかりました。
不安で「字 読めない」と検索したときは、こわい言葉がたくさん出てきて、不安の波に押しつぶされそうになっていたのですが、検査で読み書きの苦手が障害なのかどうかわかること、トレーニングによりある程度は読み書きを身につけるできること、学校で支援を受ける方法やそうした支援に積極的な学校などを教えてもらい、息ができるようになりました。
合理的配慮というものがあるんだ、高校受験もできるんだ、ひとり立ちして生きていけるんだ…と、視野が広がりましたね。

そのころから、うちの子が学びたい、学ぶ意欲がわく方法で教えようと「息子に響くものはなんだろう?」と考えるようになりました。
その結果、スライスチーズの袋やおやつのパッケージなど好きなものを食べながら楽しみつつ文字を教えるようになりました。

ーその後、読み書きの状況に変化はありましたか?

1年生の夏休みの終わりごろから、少しずつ読めるようになっていきました。
きっかけは、小学校の夏休みの宿題の自由研究と読書感想文かもしれません。どちらも自分で文章を考えて字を書かなければいけないものでした。
ものすごく苦労したのですが、なんとかやり遂げたら、街を歩いているときにお店の名前を読んだりするようになりました。それまではまったくしなかったことなので驚きました。

そこから、ポケモンのキャラクターの名前を読んだり、ハマっているゲーム(マインクラフト)でなにかをやりたくてその名前や文字を覚えるようになりました。
読めると楽しいことがあると気づいたのが、読めるようになってきたきっかけかもしれませんし、発達が追いついたのかもしれません。

「うちの子は字が書けないかも」と思ったら』にも、「小1の夏休みが大事」と書かれていました。夏休みに読み書きの練習したら追いつくことがある…と書かれていましたが、本当にその通りでした。
今のところ、ひらがな、カタカナ、1年生の漢字は読めています。
まだ不安もあり、この春休みもずっと音読をさせているのですが、文末を省略したりきちんと読んでいなかったりと「おや?」と思うところがあります。
「ちゃんと読んで」というと文字通り読むのですが、苦手はあるのかもしれません。まだしばらくは経過観察をしていかなければ、と思っています。

ー学校の先生に相談はしましたか?

2月に面談があり、「夏まで文字を読めておらず、学習障害ではないかと疑っていました。学校ではどうでしたか?」と聞いたところ「そんなことありませんでしたけど?」と読めていない、読むことが苦手だということすら気づいてもらえていませんでした。
明るくて、子どもの感情を大事にしてくれる先生で、とてもいい先生なんですが、1人の先生で30人の子どもを見るということは、こういうことなんだと思い知らされました。
気づいてもらえないとなると、合理的配慮を受けるのも難しいですよね。
自分の子もそうですが、一緒に授業を受けているほかの子どもたちもみんな、だれもが見過ごされてしまう可能性があるのはおそろしいです。

ー今のお気持ち、今後について考えていることがあれば教えてください。

いったん今は読めているものの、このままついていけるかどうかはわからないと思っているので、音読は家で確認したり、引き続き見守っていきます。
「やっぱりおかしい」と思ったときにどう対応すればいいのかがわかったので、最初のころのような不安はありません。教えてもらった情報、知識がお守りのようになっています。

▶田辺さんが読んだ練馬区社会福祉協議会作成のパンフレットはこちら
▶1年生の夏休みが大切!と書かれている『「うちの子は字が書けないかも」と思ったら』↓

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