2024年でも発達性読み書き障害の子が主人公のアニメは見られないのかー杉本亜未先生原画展によせて
それって『ファンタジウム』の良くんの…?
『うちの子は字が書けない』の著者 千葉リョウコさんから、お子さんに障害があり、いつかそれをエッセイにしたいとお聞きしたのは、おそらく2010年か11年頃。
読み書きが苦手で…というお話を聞いてすぐに頭に浮かんだのが、杉本亜未さんの『ファンタジウム』というマンガでした。
『ファンタジウム』の主人公は天才マジシャンで発達性読み書き障害の少年。作品のなかでは、読み書きができないことで学校に通えず、通級で読み書きの練習をする姿も描かれています。
すぐに『ファンタジウム』が思い浮かんだのは、それだけ丁寧に読み書きについても描かれていたから。
マンガで描かれているような障害は本当にあるんだと、そのときのやりとりが強く記憶に残っていたことが、『うちの子は字が書けない』の出版企画につながったのですが、のちに『ファンタジウム』は「ディスレクシアを描いた史上初のマンガ」だと知り驚きました。
こちらのインタビューでは、『ファンタジウム』を描くにあたって杉本さんが実際に発達性読み書き障害の方を取材されたエピソードや、「どんなマイノリティも、ゆるやかに許容される社会であってほしい」という思いが語られています。
発達性読み書き障害の子が主人公のアニメは2024年でも作れないのか
日本語における発達性読み書き障害研究の第一人者であり、『ファンタジウム』『うちの子は字が書けない』の監修もされている宇野彰先生と杉本さんの対談では、杉本さんが「主人公に読み書きができない障害があるという設定の作品はアニメではできない」といわれたとお話しされています。
そのときはそうだったとしても、今でもそうなのでしょうか。
2024年でもまだ、発達性読み書き障害の主人公はアニメにはなれないのでしょうか。
不得意なことがあるということ、マイノリティであるということが、その人自身を損なうものでは決してないという『ファンタジウム』の作中で何度も描かれているメッセージは、多様性の尊重が大切だと認識されるようになった今、改めて広く届いてほしいと思います。
これだけダイバーシティやSDGsが謳われていても、多様性があるのが当たり前、受け入れ合うのが当たり前にはまだまだ遠く、合理的配慮ですら、「実施に伴う負担が過重でないときは」と、なんだか最初から「できなくても仕方ない」とでもいうような表現になっている。そんな今だからこそ、もう一度読みたい、読まれてほしい。
未読の方はぜひ読んでください。
既読の方も、ぜひもう一度!(私は再読してまた泣きました……)
杉本亜未原画展、マンガナイトBOOKSで開催中(2024年7月3日〜28日)
6日には杉本さんと宇野彰先生のトークイベントも開催されます。
限定グッズもあるそうです!早く行きたい…!!