エルの肺葉捻転記録③

手術のリスクや私たちの葛藤はものすごくありましたが、以前書いたことと重なるので、省いて続けていこうと思います。でも少しだけ振り返ると、CT検査・手術まで待機していた土日の二日間は地獄のように苦しかったです。二人で一生分くらい泣きました。エルの前で涙は流さないと決めていましたが、一瞬たりともエルから離れたくなくて、この二日はお互いに約束を破ってエルのことを抱き締めて泣きました。

6月15日月曜日、エルの具合が悪くなってから丁度1週間の日に確定診断のためのCT検査が実施されました。気管虚脱や気管・気管支軟化症の持病のこともあり、エルの麻酔リスクは一番高いグループに分類されると何度も説明を受けました。一度麻酔をかけたらもう二度と目覚めない可能性も十分にあり、その時に気管に挿管をして人工呼吸管理を希望するか、心臓マッサージを希望するか、たくさんの苦しい質問に答えなければいけませんでした。人工呼吸管理に入った場合はいわゆる植物状態になり、その管理費用は1泊15万円になること、そしてそうなった場合はもう自発呼吸に戻ることはほぼないことも聞かされました。
それでも出来ることは全部やってほしいとお願いして、何枚もの書類にサインをしました。どんな形だって生きていて欲しいと思ってしまいました。人工呼吸管理をして命が繋げるなら、ずっとは無理だとしてもお別れの時間くらいは引き延ばせるかもしれない。エルの生命力を信じて手術に臨むことを決めたにも関わらず、悲しい選択ばかりを迫られて不安に押し潰されそうになっていました。

画像1

特別にお願いをして、検査の直前まで個室で3人で過ごすことが出来ました。時間が経つのがすごく早くて、苦しいけれど大切な時間でした。時間が来て、先生にエルを預けるときには涙でエルのことが見えませんでした。それからの待ち時間も地獄のように辛かったことを覚えています。

予定より少し時間がかかりましたが、無事にCT検査が終わったと聞かされたときは本当に安心しました。その結果、肺葉捻転で間違いないと確定診断がされました。そして更に「肺水腫」という病気も併発していることが分かったのです。エルは心臓に異常はないので、「非心源性肺水腫」であるとの診断でした。この場合、原因の特定は非常に難しく、このまま肺水腫が悪化すれば手術が出来ないどころか、肺水腫が原因で命を落とすかもしれないと言われました。ただでさえハイリスクな手術に臨むのに、肺水腫まで・・・。
またしても二人で絶句してしまい、何も言葉が出ませんでした。CT検査後はエルを連れて帰って、手術前最後の時間を家族で過ごすつもりだったのに。万が一夜間に肺水腫が悪化した場合すごく危険だと言われ、やむを得ず入院になってしまいました。夕飯は食べても大丈夫と言われたので、一度帰ってステーキご飯を作って届けました。

翌日、朝一番で病院に向かって手術前に少しでも家族で過ごせる時間をもらいました。ぐったりとして弱っている姿にまた涙が止まらなくなりましたが、二人で一生懸命エルに力を分けてあげたつもりです。
そしてまたエルを預けなければいけない時間がきました。手術中はまたしても気が気でなく、胸が苦しすぎて命が削られるような思いでした。旦那も極度の不安から、気分がかなり悪そうで何度もトイレに立っていました。一人、個室で待っていると執刀してくださっていた先生が手術着のまま部屋に入って来ました。

もしかして・・・

最悪の想像に背筋が凍りました。

「無事に捻転部位の肺葉を切除できました!」

その言葉を聞いたときは心臓が止まりそうなくらい嬉しかったです。私たちが心配しているので、切除できたことをすぐに知らせに来てくださっただけでした。実際の切除部分も見せてもらいましたが、どす黒く、本来の肺の色からかなり変色していました。周辺への癒着もかなりあったこと、手術中に複数回の心拍低下があったことも聞いて、すごくハラハラしましたが今は無事に閉胸の作業に入っているとのお話で安心しました。
その後、心配していた麻酔からの覚醒も遅延がありましたが何とか出来ました。あとは術後の経過がどうなるか、それが最後の問題です。

次で最後になります。

いいなと思ったら応援しよう!

aya
いただいたサポートはエルの医療費にさせていただきます。 よろしくお願いします🐶