なぜ今「ファンコミュニティ」なのか?~「ファンクラブ」では生き残れない理由~
「2020年はファンコミュニティ元年だ」と聞いて、ピンと来る人はどれくらいいるでしょうか。
個人・タレント・クリエイターたちが、まるで一発屋芸人のように消費され続けてきた時代から、個の影響力をもってして活躍の幅を広げ、その先のビジネスにつなげていく時代に移り始めています。それは、個人がただ搾取されて終わるのではなく、一生わくわくしながら新しいトライを続けられる時代です。
しかし、その実現のためにはこれから解説する「ファンコミュニティ」の考え方が欠かせません。そして、それは、個人のみならず、企業の成長においてもより重要性を増してきています。
先日公開した、“【YouTube徹底攻略】素人が「7日で7.5万登録」できたワケとは? ヒットの仕掛け人が語る「ファンコミュニティ論」”では、全くの素人が、YouTubeチャンネル開設からたった7日で登録者数7.5万人を達成したプロデュース事例を解説しましたが、そのベースとなっている考え方こそが、「ファンコミュニティ」です。
これから、それらについてより詳しく掘り下げながら、個人や企業が息の長いビジネスを続けていくために大切だと考えていることをシリーズでお伝えしていきます。
1.「ファンクラブ」と「ファンコミュニティ」の違いとは?
昨今、多くの芸能人がYouTubeに参入していますが、知名度があるにも関わらずYouTube市場で苦戦している事例に共通するのは、「ファンクラブ」の思想のまま、コンテンツ配信をおこなっていることです。
これからの時代で活躍するためには、「ファンクラブ」の思想から、「ファンコミュニティ」の思想へ転換しないといけません。また、これから活躍を目指す個人・クリエイターのみなさんは、今日まで受け取ってきた「ファンクラブ」寄りのコンテンツと、みなさんのこれからのアクションの取り方を切り分けなくてはいけません。
ぼくは、ファンコミュニティについて、次のように定義しています。
「ファンコミュニティ」
共通の目的意識を持った同質化した相互交流のコミュニティ“
まず、ファンクラブとの1番の違いは、オーナーとファンの間にコミュニケーションが発生しているかどうかです。
従来のファンクラブは、昭和のアイドルや銀幕のスターのように、偶像化したオーナーから提供されるコンテンツを、ただ「楽しむ」だけの一方通行の場でしかありませんでした。定期的に送られてくる会報を受け取り、争奪戦をくぐり抜けてチケットを購入し、ステージに立つ憧れの人を遠くから見ているだけ。
「テレビ」の中と外には明確な境界線があり、ファンにとってもそれが当たり前であったため、一方的なコミュニケーションに対して懐疑的に思うこともありませんでした。むしろ、偶像化されているスターたちの情報を一方的に受け取れることに価値があった時代です。
しかし、SNSの普及により、明確にあったその境界線に変化が生じます。これまでは手の届かなかった憧れの人に直接コメントができたり、憧れの人からアクションが返ってきたりする時代になりました。徐々にその敷居はさがり、かつての「スター」は「学校の人気者」のような、より身近な存在となり、ファンが彼らと「一緒に」なにかができる余白が生まれました。
それにより、一方通行だった関係を飛び越えて、ファンが自発的・能動的に、オーナーのPRをしたり、コンテンツやイベントの企画を考え実行したりするようになったんです。
ファンが、オーナーの身に起こるあらゆることを、自分ごととしてとらえ、時にはスタッフのように行動してくれる状態を「同質化」と呼んでいます。同質化した熱量の高いファンは、PR活動だけではなく、時に、ファンコミュニティの文化形成の役割をも担います。
オーナーの暗黙知(自らは言語化できないが大切にしている価値観やコミュニティに求めるあり方など)をつかみ、コミュニティ内外に発信をして、より、オーナーのビジョンにあったファンを集めたり、ファンの教育をしたりして、コミュニティの統制をはかるのです。
この「同質化」と、ファンとオーナー間に生まれる「相互交流」がファンコミュニティの大切なポイントです。
これをビジネスの分野でいうなら、商品やサービスをただ購入するだけなのが「ファンクラブ」である一方で、その企画段階からどうすればより売れるかをオーナーと一緒に考えるのが「ファンコミュニティ」です。ファンクラブは目的意識が「I」、ファンコミュニティは「WE」であることが明確な違いなのです。
マネタイズだけであれば、従来のファンクラブでも実現可能です。しかし、商品をよりたくさんの人に、そして、「商品」の機能性ではなく「あなたの商品だから」で長く選ばれ続ける存在になるには、ファンコミュニティの方が格段に強いと考えています。
2.テレビの有名人よりも、だれかにとってのスターの時代
すでに体感しているかもしれませんが、SNSのアルゴリズムの変化と精度の向上により、自分の好きなコンテンツに24時間触れ続けられる時代になりました。
ツイッターやInstagramのタイムラインには、自分がフォローをしたユーザーのコンテンツが並び、YouTubeやTikTokの「おすすめ」や「関連動画」には、自分の興味関心に合わせて最適化されたコンテンツが並びます。
マスメディアによって「みんながいい」と思うものにあわせて編集されたものを受け取るしかなかった時代から、個人の価値基準によって、「自分が見たい」ものを見て、「自分がいい」と思った人やものを選べる時代になったんです。
それにより何が起こるかというと、よりクローズドなコミュニティ形成が加速します。たとえば、テレビや雑誌に出るような有名人よりも、自分の好きなクリエイターが誰かにとってのスターになるんです。ある分野においては大スターでも、少しコミュニティをずらせば誰も知らないなんてことも起こり始めます。
この動きは、消費行動の中にも見られ始めました。買い物をするときに、AとBの2つの商品で迷ったとしましょう。
従来であれば、「知っているから」「CMで見たから」「パッケージでなんとなく」で購入を決めていましたが、今では「自分の好きな人(会社)の商品だから」「自分がいいと思ったから」「好きなYouTuberが使用していたから」で選択をする時代です。何を買うかの意思決定の場面でも、共感性の重要度が高まっているのです。
3.ファンコミュニティをつくる、3つのメリット
さらに、「コンテンツ」に対してのファンではなく、「あなた(あなたの会社)」のファンコミュニティをつくることのメリットが大きく3つあります。
1つ目は、売り上げが読みやすいことです。たとえば、あなたが、あなたのグッズを商品化するとします。ファンコミュニティがない状態で、商品をリリースした場合であれば、どれだけ売れるのかが、フタをあけてみないと分からないというリスクがあります。場合によっては赤字になるかもしれませんよね。
ですが、もし、ファンコミュニティが形成されていて、どれくらいの人数の、どんなファンが、どれほどの熱量で応援をしてくれているのかを正しく現状把握できれば、どれくらいの価格帯のどんな商品が何人に買ってもらえるかを事前に読むことができ、リスクを最小限に抑えることができます。
2つ目は、ストーリーをつくりやすいことです。一方的に商品化して、マネタイズのポイントをつくると、ファンによっては「お金稼ぎに走った」と嫌悪感を抱く人もいます。ですが、商品の企画段階から、ファンを巻き込み、対話しながら意見を取り入れて、「みんなが求めているから」「みんなと一緒につくった」というストーリーに乗せてリリースをすれば、機能や価格による比較を超えて、共感性によって購入してもらうことができます。広告費もかからないので、利益も残ります。
3つ目は、人とつながりやすいことです。ファンコミュニティが形成されていると、企業であれば一緒に働く仲間と、個人であれば協力してくれる人材とつながりやすくなります。実際に、2020年6月に、弊社所属の人気クリエイター2名を起用して、弊社の求人を打ち出したところ、1000名を超える方からエントリーをいただきました。求人情報Webサイト「Wantedly」内のランキングは1000位代から15位に急上昇。人材採用だけでなくブランディングにもよい影響を与えてくれています。また、クリエイターの日々の発信に触れ、その世界観に共感をしてくれた人から応募が集まるので、ミスマッチが起こりにくくなります。
以上のように、ファンコミュニティには、失敗する確率を減らすだけでなく、成功確率を高めてくれる大きなメリットがあるのです。
4.ファンコミュニティの活用事例
これらは、個人ビジネスだけにおいた話ではありません。すでにファンコミュニティの考え方を導入し、成長している企業もあります。
「塚田農場」でおなじみの、株式会社エー・ピーカンパニーさんも、ファンコミュニティをうまく活用している企業のひとつです。たとえば、名刺システム。塚田農場では、来店1回目で「主任」、2回目で「課長」、5回目で「部長」というように、来店ごとに昇進し、スタンプカード代わりの名刺が役職ごとにグレードアップしていったり、サービスメニューが提供されたりする、さまざまな仕掛けがあります。昇進をしていくと、ミーティングに呼ばれるとも聞いたことがありますが、まさにこれは同質化の例ですね。また、来客1人に対し、400円までの範囲で、店員が自分で考えたサービスを行える取り組みもされていて、店員が自分なりの価値提供をお客さんにすることが許されています。それにより、個別化されたコミュニケーションが生まれ、お客さんは店舗(コミュニティ)のファンになりやすく、口コミ・紹介を自然としてくれるようになります。
また、株式会社ブシロードさんの「BanG Dream!(バンドリ!)」は、アニメ・ゲーム・グッズ・漫画・リアルライブといったコンテンツが充実し、ファンは24時間コンテンツに触れ続けることができます。たとえば、ゲーム内で流れている曲を、ゲーム内で覚え、YouTubeで聞き、リアルライブへ足を運び、グッズを買うなんて楽しみ方ができるのです。人間だけであれば24時間動き続けることは不可能ですが、2次元と2.5次元も組み合わせることによって、それを可能にしています。また、コンテンツが常にアップデートされることで、ファンは常に新しいコンテンツに触れることが出来、さらに熱狂するのです。
5.今こそ、ファンコミュニティをはじめましょう
人間は感情のある生き物です。そして、人間の行動につながるのは納得性です。ではその納得性を生むものは何かというと、まさに共感性なのです。
ファンコミュニティは一夜にしてできあがるものではありません。そして、定量的にも見えにくいものです。ですが、時間をかけて根付いたファンとの濃い関係は、あなたのビジネスを成長させるだけでなく、あなたの人生そのものをよりわくわくしたものにしてくれることでしょう。
先日、「ファンコミュニティの時代はどれくらい続きますか」と質問を受けました。ぼくは、ファンコミュニティの考え方はこの数年で廃れるようなものではないと考えます。
今の若い世代はテレビを見ずにインターネットから情報収集をしています。それも、かつてのように、GoogleやYahoo!検索ではなく、SNSで検索をするのです。さらに、今の子どもたちは、赤ちゃんの頃から身近にYouTubeがある世代です。
物心がついた頃から、「自分がいい」と思うものに囲まれ、そのクローズドなコミュニティの情報にしか触れていない子どもたちが大人になったとき、自分が求める情報が自分の世界の価値基準になることは間違いありません。
ファンコミュニティは今こそがスタートです。従来のマーケティングにファンコミュニティの考え方を少し取り入れていただくところからでもかまいません。あなたが息の長いビジネスをしていくために、なにかきっかけになれば嬉しいです。
このnoteでは、引き続き、「ファンコミュニティ」について解説していきます。ぜひ“フォロー”をして楽しみにお待ちください。
6.おわりに
2020年11月11日(水)12時30分から『TikTok攻略』についての無料オンラインセミナーを開催いたします!!
企業様、クリエイター様、これから始めようとしている方、どなたでもすぐに活用できるものから、長期的な施策までお話させていただきます。もちろん、ファンコミュニティについてもお話しさせていただきます。
是非、お気軽に覗いていただけるとと嬉しいです!
質疑応答もございますので、どしどしご質問をお待ちしております。
■セミナーで得られること
✓ 「TikTokってどんなメディアか?」をおさらいできます
✓ TikTokでファンを獲得するための打ち手がわかります
✓ TikTokをマーケティングやタレント活動に役立てる方法がわかります
✓ 活用しはじめるために明日から何をすればいいのかわかります
■こんな方にオススメ
タレント / アーティストマネジメントに関わる方、アーティストご本人
企業でマーケティングに関わる方
※参加者は顔は映りませんのでご安心下さい
■応募フォームhttps://zoom.us/webinar/register/6516039487382/WN_BXa5ogqlRb6xA-WfRdiTTg
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