ケーブルメデューサ

その女は、金田の命を狙っていた。華やかないでたちで、家電屋に勤め。懐に余裕があるときはキャバクラに通い。チヤホヤされる彼を、ケーブルメデューサが逃すわけがない。

金田はその女をメデュース・ド・ケーブルと呼ぶようになる
フランス語ではそう表現するそうだ

そんな頃、まだ金田はシンボリックに勤めて間もなかった。給料日に振り込まれた給料を駅前の銀行でチェックしてニンマリとしていた。

ーー今日は鰤谷好き安で飯を食うんだ!ーー
そう決めると、グッチの財布に3万円を押し込む。

「豪遊するぜ!」そう叫ぶ彼を銀行の警備員は早くどいてくれないか?と嫌がっている。ーー福助さんには名古屋で一番うまいエビせんべい黄金缶だーー

一週間のうち二日しかない休みをどう過ごすか、彼の頭は充実プランで満ちていた。「モリンガにはオーガニックフード!」気のせいか、道を走るランナーも金田を避けている。

福助がその光景を見たら。「金田くん、一般市民に迷惑だよ!」となだめるだろう

時刻はお昼過ぎ、夕食までまだまだ余裕がある。金田はポールヒューイットの時計を見るとオオカミのような目つきになる。獲物探しの時間だ!

例のごとく、彼自身が斡旋した人物の働いている。ネットカフェへ向かう、
革靴はリーガル、ビエレッシの生地で仕立てたダブルブレストのスーツはまさに金田という出立ちだ。(ネットカフェに高級スーツを着ていくのはいかがなものだろうが。彼はお構いなしだ。)

ネットカフェにたどり着くと、レイバンのサングラスを額に上げる。
ピロピロピローン。「いらっしゃいませ、何名様ですか?」
店員の柴崎はいたってマニュアル通りの対応だが。
金田の顔を見ると、ホテルのフロントマンのように振る舞い始める。

「お待ちしていました、金田様。2階の一号室は現在空室です。よろしければご案内します。」「ああ、頼むよ!」「かしこまりました。」柴崎はパートの女性Aにメモで伝言をする。2階のシークレットルームは現在、金田成仁氏が使用中

金田は、エレベーターは使用せず。階段で2階へと向かう。」「鍵をお持ちします。」
「そんなもんあったか?」柴崎は一瞬戸惑ったがすぐに。
シークレットルームは押しボタン式だったことに気がつく。

「では、お飲み物はいかがですか?」「いつも通り、コーヒーで。」
日頃は横柄な一面があるものの。彼は優しいので、人に好かれる方なのだ。

1人でカラオケルームに入ると、ミラーボールのスイッチを入れる。
自宅にはほとんど、趣味の物を置かないことにしているが。
ここは彼のプライベートルームとなっている。ゆったりとした1LDKでシャワーまで完備。壁際にはVictory PCとマッキントッシュ。反対側にはソファーがあり、テレビとカラオケも楽しめるようになっている。

パソコンのエリアに、ブルガリの鞄を置くと。迷わず、カラオケ用のタブレットを手に取る。選曲は「ギンギラギンにさりげなく」と「Living la Vida Loca」

ーーそれは夏のせいなんだ!ーーひとしきり歌い終えると、パソコンのエリアに。
ブルガリからゴールデンタブレットを出すと。窒化ガリウムの充電アダプタとディレクション電気の絡まんケーブルに接続をする。

いつも通り、産業メディア日報でニュースをチェック。何やら、関東圏で原因不明の停電があったそうだ。ーーふーん、どうせ電力の使い過ぎが原因だろう。ーー
パソコンやタブレット、金融には詳しいが。電化製品には弱かったりする。

その時だ!バチバチバチバチ!Victory PCのケーブルが、雷のような音をたてて蛇のようにしなる。「なんだよ!どうなってるんだ」

ビービービー、タブレットからは滅多にならない警報音が鳴り響く
ーー俺何もしてねぇのにーー金田は豆鉄砲を食らった鳩のようだ。

油断なくソファーの陰に隠れる。バチバチバチ!バリン!丈夫なはずの液晶が黒いタコのような触手で破壊される。とっさにカーテンを開けて街の様子を見る。

震災や火事の様子はなく、金田のプライベートルームだけが狙われたようだ。
クソ!サイバーマフィアかよ。素早くスーツを脱いで、ワインセラーの付近に置く

ーーかかってこい!ーー冷蔵庫から彼が出したのはアイスパック
「これで冷やしてやる!」壊れた液晶に投げ込むと、ブラックホールのように吸い込まれてゆく。

ジャジャーン!突如マッキントッシュに電気が入ると髪の長い女性が映し出される。
そのいでたちは、前髪の長い口裂け女のようだ。
???俺は悪夢にうなされているのか???

女は、頬まで裂けた口から蛇のような舌を出すと。
カラオケのスピーカーをハイジャックして宣言する。
「わらわは、メデューサじゃ。金田成仁!貴様を生贄にしてやる。」

「お前どこの回しもんだ!俺のプライベートルームに踏み込んで。ただじゃおかねえ!」ケーブルに向けて、ミネラルウォーターをかけると。電線の剥き出しになった部分が怯んだようだ。

その間、金田は科学の知識とサバイバルゲームの攻略を即座に思い出す。
相手はよくしなるケーブルだ。栄養ドリンクなど自分に跳ね返ってきた時に当たる物は渡してならない。

それと、貴重品を守らないとな。ワインセラーは壊されたら俺に請求がきちまう。

守りでいくか、攻めでいくか。相手の素性がわからないので、まずはディフェンスだ。

キェーーーーー、ギャリン。Victory PCがメデューサの破壊力に耐えかねて壊れようとしている。「なむさん!」金田が叫ぶと、 PCの内側が剥き出しになる。「相棒、すまないな。」

「このパソコンはお前のツレじゃったか?」

「商売道具、壊すんじゃねぇ。」

「わらわは、お前の金になど興味ない。タマをよこせ。」

「ふん!身代金も命もヤラねぇよ。」「ならば、力づくで奪うまでじゃ!」

シュルシュルシュル!ケーブルは、金田の足に巻き付くと。
牽引車のような馬力でひっぱろうとする。

「何!!そうさせるか。」金田は消火器の安全ピンを引き抜き、ホースを外し、大きな手でがっちりとレバーを握る。

半壊状態のパソコンに思いっきり白の薬剤を噴射すると。ケーブルは途端にゴムのような塊に変わっていく。

「おい!メデューサ。お前にもかけてやる。少しはキレイになるぜ。」

マッキントッシュを占領したメデューサは悔しいのか、歯ぎしりをしている

「貴様はわらわを、愚弄するのか?」

「あたりめぇだ!俺に用事があるなら。手土産でも持ってこい!」

「金田成仁!覚えておれ。」

「ふん、まだヤァさんの方がマシだぜ。」
マッキントッシュからメデューサが消えると。プライベートルームは停電する。

「まったく、今日はついてねぇな。こんなこと初めてだぜ!」

光を求めて2階の一号室をでる。階段を下ると、柴崎がフロントに詰め寄る客をなだめている。「お客さま、もう仕分けございません。今、停電の原因を調べております。」

金田を見かけると、柴崎は助けを求める
「金田様、一何ごとだったんですか?火災探知機が作動しておりました。」

「おそらく、サーバーテロだ!しかも新種の。」
スーツの足元に巻き付いたゴムの塊を見せると、柴崎は言葉を失う。

「とりあえず、平日の昼間だから売上は諦めてお客さまを帰すんだな。」
そう言うと、柴崎に3万円を渡す。
「わりぃが、口止め料だ。奥の従業員と折半しろ。」そう言い放つと。

スマホでVictoryの本社に連絡をする。震える手でメッセージを放つ。
「ついいましがた。サイバーテロに遭いました。
個人オフィスのパソコンが使い物にならなくなったため。
後日、改めて報告します。」

その日、金田はいつもより早く帰宅して。手帳にメモをする
2022年、5月27日ケーブルの化け物メデューサあらわる。
名前はメデュース・ド・ケーブル俺が命名!!

のちに、ナツキや貴久にも周知されるようになる
彼女はなぜ、 PCから使用した者の命を狙うのか?

to be continue‥‥






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