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あと5分だけ

少し前に見つけた小さな幸せ。


先週の月曜日。


台風が来るから学校休みになるはずと
日曜のお昼からお菓子やジュースを買い込み
ウキウキで夜更かしをしていたけれど、
朝起きたら小雨。

台風!!!戻ってこーーーーい!!!!
執拗に鳴り響く携帯のアラームに向かって投げかけた言葉。

なんだそれ。と自分で発した言葉に無性に恥ずかしくなりそそくさと拾い上げた携帯は6:30を指していた。

「しょうがないなぁ...」
休みモードの気持ちを切り替え、重い腰を上げてシャワーの準備。


ここまで来たら、
今日という日を最高の日にしてやろう。


気分に合わせて毎日変えるヘアオイル。

久々に君に会える...はずだから、
少し重く甘いヘアオイルにする。
湿気も多いからね。


あんなに時間に余裕あったのに、
なぜ家を出る直前になるとバタついてしまうのか。
と不思議に思いながら急いで扉を開ける。
いつものあのバスに乗らなければ...


「台風、どっかいっちゃたみたいだね」


ふふっと笑いながら、
わたしの部屋の前を通り過ぎていく君。


ドッと風が吹く。


まるで台風のように、静かに、無音で
全てをかっさらっていく。


わたしの横を通り過ぎる時に吹く風に乗せられて
舞う自分のつけたヘアオイルの甘い香りに酔いしれる。


まるで君の置いていった匂いをひとつひとつ拾って行くかのように、君の後ろを歩いた。


駅まであと少し。


君の匂いをひとつひとつかき集め着いた先には
やっぱり君がいる。


「やっぱり、居る」


振り返り微笑んだ後に、
また前を向きながら言った君の言葉。


小さすぎて聞き取れないくらい、微かな声だったけど、それだけでわたしは喜びに飲み込まれそうになった。


バスに乗り込む頃には、雨はすっかりやんでいて
窓から差す光が程よくわたしの心を照らした。


雨がもう少しだけ続いてくれてもいいのにと、
この日初めて思った。


lazy S.

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