育休復帰後の時短勤務と固定残業代と給与の大事な話
なんか、またややこしい話をしてしまいます。
固定残業代という、早く禁止すればいいのに、という制度がある。
固定残業代を導入しているだいたいの会社は、20時間など、社員の平均的な残業時間を算出したうえで、固定残業代を定め、それを超えた分はもちろん追加で残業代を支払うこととしている。
でも、なかには、45時間の固定残業代を支払うという会社もある(というか結構多い)。
固定残業と同じようなもので「みなし残業」というのをつけている会社もある。みなし残業は、テレワークもそうだけど時間管理のしづらい場合に、その分働いたと「みなし」てつける残業代だ。
たとえば、note株式会社は45時間のみなし残業代を含めた年収額を求人で提示している。
たとえば、45時間の固定残業代、あるいはみなし残業代を支給する場合、月給30万円に、およそ7万9,400円の残業代が含まれている。
固定残業代を導入することで、企業は基本給を抑えたまま、年収水準を高くすることができる。固定残業代は基本給に含まないないので、仮に60時間残業したとしても、残りの15時間は(基本給/160h)×1.25の金額を払えばいい。(※月160時間の労働とした場合)
残業代は基本給を時給換算したもので計算される。同じ額面30万円の給与でも、基本給だけで30万円の場合、時給は1,875円になるが、基本給+45時間固定残業代だとその時給が約1,378円になる。残業代の基礎となる金額が全然変わってくる。だから、変動費を抑えつつ、固定残業代のつけ幅で見せかけの給与を増やすことができる。
固定残業(みなし残業)代を45時間もつけているような会社は、基本的には基本給を減らしたいだけのブラック企業だと思った方がいい。
ところで、固定残業代が45時間ある会社で育児時短をした場合、その固定残業代はつくのだろうか?
労務担当者の集まるコミュニティで相談したところ、様々な意見が出た。結論から言うと、法律的には固定残業代は払わなくても違法ではない、という見解になってしまう。
そうすると、これまで基本給+固定残業代で年収600万円もらっていた人が、育児時短で6時間勤務になると、単純に年収が6/8になる、ということにはならない。月45時間分の固定残業代がなくなり、かつ基本給が6/8になる。年収でいうと、600万円→330万円近くまで下がる。
もし、これまで45時間も残業していなくて、ほとんど定時で帰っていたとしたら、2時間勤務時間を減らすだけで、ほぼ半減に近い収入ダウンになる。
はたしてそれは本当にその時短勤務に見合った給与だろうか。
それでも、1年近く育休していて、そのあいだ他のみんなは頑張ってくれていた、育休復帰後いきなり揉めたくない、ただでさえキャリアに遅れをとっているのに、などの心象から、上記の条件を飲んでしまうケースが多いのではないかと思う。
労務担当のコミュニティで挙がった意見では、さすがに給与が下がり過ぎるのは従業員のモチベーションに影響するので、45時間の6/8の手当を調整給として支給する、と言った意見や、育休取得時や復帰時の面談で育児時短をした場合の給与についてしっかり説明をしてお互いに納得できる着地点を、といったごもっともなものが多かった。固定残業が実態に合ってないなら、そっちをそもそも見直すべきという意見もある。
固定残業代がなくても、育児時短をすれば、当然その分給与は下がる。それでも、育児との両立のために納得して働くしかないかもしれない。
一方で、新卒時とさして変わらない給与で働く先輩社員を見て、若手の社員はこの会社で子育てと仕事の両立をしたい、と思うだろうか、とも思わざるをえない。
リスキリングを個人に求めるより、企業に対し固定残業代を廃止してもらう、とか、育児時短で減った分の給与を補助します、とか、そっちのほうがよほど嬉しい。
政府が制度を変えることで、助けられる施策は他にもいっぱいあるはずで、そういう細かな積み重ねの改善で、働きながらも子育てもしやすい、そんな環境が作られていってほしい。
時短勤務時の給与については、こちらの記事がより詳しく解説しています。