Tokyo COVID-19; 10/16/2021

東京都における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する10月16日のノート

概要

・10月16日の報告日ベースの陽性者数は66名、減少傾向が続いている。
・検査数の減少速度は鈍り始めている。東京都の発熱相談センターへの相談件数の減少ペースは陽性者の減少に比較すると鈍い。発症日別の陽性数を見ると初めてベースラインが減少している。またこれより算出される実行再生算数(Rt)は一時期0.6を切るまで下がった。ただし、直近の値では上昇を始めた可能性がある。
・重症者数に関しては、10月16日現在の30代以下の重症者は0である。40代から60代は40代4名、50代20名、60代7名と依然として重症者の中心を占めているが、減少は続いている。重症者の中心であった70代は2名と減少した。
・死亡日別の死亡者数は8月20日前後をピークに減少が続いている。
・死亡者の報告数は直近の1週間では62名(1日平均9名)と、まだ高い値とは言えるが、死亡日が9月分の報告が半数を占めており、直近の死亡者数は1日あたり3名前後まで下がったと見られる。
・年代別感染の推移を見ると70代、80代は増加のペースが鈍かったのと同様に減少も緩慢な動きとなっている、このため陽性者に占める高齢層の比率は僅かながら増加している。
・Google Mobility の観測によると、緊急事態宣言解除後の10月第1週の人流は7月の連休前(第4波前)のレベルに戻ったが、今のところRtは低い値を保っている。
・第4波までと第5波を比較すると、感染数・死亡数共に70代以上の占める比率が大きく低下した(ただし、あくまでも比率の話であり、累積数では陽性者、死亡者ともに第4波を超えている)。これは高齢層に対するワクチン接推進の効果とも言えるが、逆にワクチンの接種が遅れている50代の感染・重症化が急増し、また数としては多くはないが30代・40代の死亡も急増した。ただし、現状では重症者数、死亡数ともに大きく減少している。
・9月30日をもって緊急事態宣言が解除され2週間が経過した。人流は増加する傾向にあるが、Rtは今のところ0.7以下と低い値を保っている。ワクチンの普及の効果と見られるが、今後ウィルスの変異等により再び感染が広まる懸念もあり、暫くは注視が必要であると言える。

感染者数の全体推移

画像1

10月16日の東京都の感染数は66名と前日(10月15日)から9名の増である。内訳は濃厚接触者27名(前日比+10)、経路調査中39名 (同-1)である。経路調査中の39名は1週間前の10月9日に比べて7名の減である。
経路不明者の7日間平均は38名と前日より1名の減、1週間前から38名の減である。
この7日間平均を1週間毎に遡って比較すると
直近 38 前週比 50%
1週間前 76 前週比 56%
2週間前 137 前週比 59%
3週間前 232 前週比 48%
4週間前 488 前週比 61%
5週間前 804 前週比 53%
6週間前 1,524 前週比 65%
7週間前 2,328 前週比 80%
と減少はしているが、その幅は上下している。

また、各日の7日間移動平均値を、その1週間前の7日間移動平均値と比較すると
10/16より遡る7日間 前週比 -50%
10/15より遡る7日間 前週比 -54%
10/14より遡る7日間 前週比 -52%
10/13より遡る7日間 前週比 -50%
10/12より遡る7日間 前週比 -51%
10/11より遡る7日間 前週比 -48%
10/10より遡る7日間 前週比 -48%
10/9より遡る7日間 前週比 -44%
とこちらも減少幅が上下している。

検査者数(最新10月15日) : 陰性者が遅れて報告・集計されるため直近の数値は日々追加修正され、基本的にグラフの右端は右下がりになる。移動平均では8月下旬には17,000名近くまで上昇した以降は減少し、直近では7,000を割っている。ただし陽性者の減少に比べると検査数の減少は緩やかになって来ている。陽性率の7日間移動平均は検査数の減少が緩やかであることもあり、0.9%まで下がった。

発症者数(最新10月15日)
発症者グラフは発症日と報告日の時間差があるためグラフに示すように直近の1週間前後の報告数は順次追加されている。このため過去データに準拠して作成した表を利用して補正している(薄色の部分が補正値)。あくまでも参考程度で有り、特に終端に行くほど精度が落ちる。

図1

補正係数表08

補正値は発症日から報告日までの時差の分布を過去のデータから推定しているため、参照時点よりも時差が短ければ予測数は過大となり、時差が長ければ過少となる。このため、補正係数は適宜見直しを行っている。
なお過去の推移では、発症者は5日程遅れて報告日別感染数(経路調査中)に反映されている。
・発症日別の陽性者数は8月10日に3,834名のピークを示した後減少に転じ、直近では50名以下まで減って来ている。今後どこまで下がるかに注視が必要と言える。

実効再生産数
・5月25日前後から上昇し7月下旬の1.6をピークに減少に転じ8月10日前後に1.0を割った。その後8月末の0.64を底に一時期上昇に転じたが、その後9月の中旬には0.55を割るまで下がった。感染数が減る事で相対的に上下の変動が大きくなりRtはブレが大きくなっている。直近では再上昇を始めた懸念もあるが、計算誤差も可能性もあり注視が必要である。
 
東京都発熱相談センターにおける相談件数(最新10月14日)
・10月13日は449件であった。
・7日間平均は580件と600件を割って下がり続けているが、陽性者の大幅減に比較すると減少のペースは鈍いと言える。感染減少に油断せず警戒している人が少なくないためと思われる。

重症者推移

重症者数は35名と前日より4名の減。年代別、男女別の重症者数は下表の通りであり、50代を中心に減少している。

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・30代以下の若年層の重症者数は0となっている。
・40代から60代は40代が45名、50代が20名、60代が7名と重症者の中心を占めているが減少が続いている。
・重症者の中心であった70代は2名で、9月2日に43名と1月20日に記録した過去の最大値59名の70%に達したが、その後緩やかに減少している。
40代から70代の重症者の推移を下図に示す。

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感染者・死亡者累計

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報告日別の陽性者累積カーブを見ると直近ではほぼ水平になっている。これに対して累積の死亡者数はまだ直線状に増えている。
10月16日付で7名の死亡報告があった。お亡くなりになった方のご冥福をお祈り申し上げます。報告される死亡者数を1週間単位で見ると、今回は9月18日には136名と年始のピークに匹敵する数まで上がったが、直近は62名(1日平均9名)と減少している。

年代別推移

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・陽性者の減少に伴いその速度は緩やかになって来たが、減少は続いている。
・10月11日時点の65歳以上の感染数の移動平均は9名で、8月26日に203名と年始(265名)の80%近い値に達した後緩やかに減少している。
・10月12日の65歳以上の感染数は15名(前日比+7)、全感染者に占める割合は22.7%である。

グーグルモビリティ(最新10月11日) との相関

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グーグルモビリティに10月11日までのデータが追加された(グーグルモビリティレポートについては
https://support.google.com/covid19-mobility/answer/9824897?hl=ja&ref_topic=9822927
または、2020年10月3日のノート参照)。
・9月30日の緊急事態宣言解除後の10月3日の週は7月の連休前に戻っている。
・グラフ上のRtは7月の連休以降一貫して低下し、7日間平均で0.6近くまで下がったが、直近では再上昇を始めた可能性がある。

第1波、第2波、第3波、第4波との比較

画像9

2020年の5月23日以前を第1波、5月23日から営業時間短縮要請が解除される前日の9月14日までを第2波、9月15日から緊急事態宣言が全面解除される2021年3月21日までを第3波、3月22日から6月16日までを第4波、それ以降を第5波として、各期間の感染数・死亡数を年代別に表にまとめて、発症日別陽性者数、重症者数、高齢層の新規発生数(報告日ベース)の各トレンドと併記した。
第1波から第4波までは、多少の相違はあるが、概ね同様な傾向が見られた。第4波と第5波を比較すると、10月16日で第5波の期間日数が121日間となり、第4波の86日間の141%となった。この間の総感染数は第4波の309%に達したのに対して死亡者数は824名と第4波の195%に留まっている。ただし、この比率の差は死亡に繋がらない若年層の感染が増えたためであり、死亡数としては第4波の2倍近い数に達していることに注意が必要である。また70代以上については、感染数は130%死亡数は138%と共に全体に比べれば抑えられていると言えるが、陽性者数や死亡数を1日あたりで見ると第4波とほぼ同じとなっており、ワクチン推進の効果と手放しで喜べる状態とは言えない。
年代別の構成比では高齢層が減って、替わりに40代から60代が増加した。これは『ワクチン接種の推進で高齢層の感染が抑えられた』効果と言えるが、若年・中年層の感染の増加に引き連られる形で総数は増加した。また50代以下の死亡者が増えた点も含めて、高齢層への重点配分の功罪については今後の評価が待たれると言える。

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