Pleymo 「ROCK」/アルバム・レビュー
フランスを代表するロックバンドといえば、近年はGojiraが有名ですが、2000年代に活躍したプレイモは頭ひとつ飛び抜けた存在でした。
プレイモは、もともとロック系の音楽が盛んではないフランスにおいて当時世界的な潮流であったNu Metalブームの一翼を担い、フランスを代表するロックバンドとして世界的に活動をしてきました。
2003年にリリースされた3rdアルバムである「ROCK」は、これまでの攻撃的な音楽スタイルから離れてメロディアスな方向性へと変化しています。
フランス文化とロックが見事に融合したひとつの到達点と言って過言ではないでしょう。
そんな本作の魅力について紐解いていきます。
1. 映画のエンドロールのような、独特の"切なさ"を纏った作品
本作は4歳の全盲の少年"ROCK"を主人公としたコンセプトアルバムです。
聴いているとまるでフランス映画の中に引きずり込まれたような圧倒的な没入感があるメロディアスな作風で、その独特でアンニュイな感覚は独自のオリジナリティを放っています。
アンニュイという言葉を辞書で調べると、「物憂げ」「影がある」という意味のフランス語で、日本語にはない独特なニュアンスの言葉です。
ラウド・ロックでありがらこのアンニュイという感覚を全体に纏っているため、独特の切なさと葛藤を感じる作品に仕上がっているのだと思います。
全体的にミディアムテンポの曲が中心ですが、リードトラックの「ROCK」で幕を開け、途中明るいテイストの#8「Zorro」、ライブで盛り上がること請け合いの#9「Polyester Mome」や、ラウドでヘヴィな#13「Kongen(根源)」とバランスも取れています。全体を通じて切なさと哀愁を感じさせるメロディラインがリスナーの心を掴んで離しません。
2.ミクスチャーロックの激しさではなく、音楽の持つ芸術性こそが本当の魅力
このアルバムに、ミクスチャーロックの激しい部分を求めていると、期待外れな印象を受けるかもしれません。なぜならこの作品の魅力は、フランス的な上品さとロック音楽の持つ野蛮さを掛け合わせた部分にあるからです。
彼ら代表曲といえば、1st収録の「K-RA」や2ndの「New Wave」が有名ですが、正直他のバンドにも似たような曲があり、この頃から彼らにしか出せないオリジナルの世界観を打ち出せるようになったのではと感じています。
これまでアートワークやCDジャケットにおいて、アニメ x ミクスチャーロックといった方向性を提示していましたが、音楽的に独自の色がよく出ており、成熟期を迎えたといっても過言ではないでしょう。
よくシーンの代表格リンプ・ビズキットと比べられ引き合いに出されますが、単純な比較では分が悪い印象です。なぜなら元々フランス語の語感とラップの切れ味の相性があまりよくないため、リンプのような曲調をやるのであれば、むしろ英語の方がいいのではという印象が拭えません。(個人的には、フランス語ラップの煮え切らない感じが好きだったりするのですが)。
そんな中メロディアスで芸術的な方向に舵を切り、ヨーロッパ的で特有のアンニュイな空気感を纏った本作は彼らの到達点であると言えます。
3.随所に感じ取れる各パートの演奏センス
前作までの「若さ全開!」でパッションをぶちまけるような曲調ではなく、ロックの激しさに知性を掛け合わせた独特な世界観が本作の魅力です。
ノスタルジックなメロディに調和するようなクリーントーンのギターが楽曲を彩り、轟音のディストーションサウンドが時に激しく盛り上げながらも、全体の空気感を構築しているのはギターの功績でしょう。意外にもストリングスはあまり使用されておらず、ギターの音色が世界観の中心にいながらも主張しすぎないのが魅力です。一部の曲を除き派手なリフは少ないものの、世界観の中核を担っているのはギターの音色だと思います。
そしてプレイモの最大の魅力といっても過言ではないのがリズム隊の存在です。エッジの利いたドラムの演奏と、特にベースの音作りとテクニックは圧倒的。ドロップチューニングでゴツゴツした音色で前面に躍り出る場面もあれば、バラード調の楽曲の中でのセンス溢れる個性的なフレージングが曲の世界観を引き立てていて、技術の高さに脱帽です。
以上、Pleymoの「ROCK」というアルバムについて考察してみました。
気になった方は是非聴いてみてください。
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