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「動物愛護の先進国」イギリスの内情~大学、ビーガン、チャリティー・ショップ
実は、イギリスは「動物愛護の先進国」なんです。
イギリスのイメージとしてパッと浮かぶものではない私には意外でした。
実際にイギリスで生活していると、街中の風景から、大学主催のイベントまで、動物愛護を目的とした動きがちらほら見られます。
そんなイギリスでは、具体的にどのような取り組みが行われているのでしょうか?
今回の記事では、「動物愛護先進国」と呼ばれるイギリスの中でも、特にスコットランドで展開されている動物保護の取り組みを詳しくご紹介します。
「動物愛護」という視点から、イギリスの文化に触れてみませんか?
大学の授業で学べる動物愛護の重要性
まず、イギリスでは、大学における動物愛護教育に力が入っています。
この教育の質は伊達ではなく、過去にはスロベニアからはるばる獣医学を学びに来た留学生もいらっしゃるようです。
例えば、エディンバラ大学では動物福祉を学ぶ修士プログラムが開講されています。
動物福祉の基本から、関連する生物学、さらに実践的なプロジェクトまで、動物福祉をテーマにしつつ学際的に学べるとのこと[1]。
他にも、動物愛護の法律・倫理を研究する修士のプログラム[2]や、Couseraにおいて無料で受けられるオンラインコースも展開しているようです[3]。
さらに、(私は受講していませんが)他の日本人の交換留学生には、学部で動物福祉関連の授業を受けている方々がいらっしゃるようです。
見た感じ、スライドや動画が充実していました。
日本にいた頃は、そもそも動物福祉に関する授業の存在すら聞いたことがありませんでした。
もちろん、日本でも獣医学を専門とする学部・学科がある教育機関では、動物福祉の授業も開講されていると考えられます。
それでも、動物福祉が大学の一般教養として授業に組み込まれているというのは、イギリスに来て初めて体験したことでした。
大学が動物愛護をテーマにした授業を開講することで、動物にやさしい社会を実現するための知識と意識が若い世代へと伝えられています。
動物愛護に関心がある方は、ぜひイギリスの大学で学ぶことを検討してみてはいかがでしょうか。
ビーガン文化が広がるイギリスの食生活
イギリスでは、動物福祉を促進する手段の一つとして、ビーガン(完全菜食主義)に対する理解が非常に進んでいます。
たとえば、大学主催の会食でも、一部「ビーガン対応」のメニューが出されることが一般的です。
具体的なメニューとしては、オートミールを固めたお菓子であるフラップジャックや、スパイス風味の豆コロッケであるファラフェル、サラミソーセージの入っていないピザなどが挙げられます。
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さらに、上記のメニューが盛り付けられたお皿には、「ビーガン対応」のマークがついたカードが添えられています。
「ビーガン向けの食品ありますか?」と問い合わせることなく、「ビーガン対応食品を食べる」という選択ができるようになっているのです。
また、ビーガン文化はスーパーマーケットでも見られます。
たとえば、動物性食品を使用していないお菓子や総菜のパッケージには「Vegan」と明記されているものが多いです。
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さらに、イギリスの大手スーパー「Tesco」や「Sainsbury's」では、ビーガン向け食品の専用コーナーも設けられています。
代替肉や豆腐といった、ビーガン対応食品も見つけやすいです。
このように、動物の命を守るためにできることを、日常の食生活から実践する姿勢が根付いています。
動物のためのチャリティー・ショップ
イギリスの街中を歩いていると、至るところで「チャリティー・ショップ」と呼ばれるお店を目にします。
この「チャリティー・ショップ」とは、寄付品の販売店。
その売上は、がんの治療に向けた研究の促進や、社会的孤立の防止など、さまざまな慈善活動を支援するために運営されています[4,5]。
動物愛護も、チャリティー・ショップによって支援されている活動の一つ。
例えば、RSPCA(英国王立動物虐待防止協会)のチャリティー・ショップの収益は、2023年時点で約3万匹の動物の里親募集に充てられています[6]。
他にも、PDSA、Blue Cross、Batterseaなど、イギリスには動物福祉を目的とした慈善団体の数々が、チャリティー・ショップで資金調達を行っています。
近年は、寄付品をインターネットで購入できるシステムも整えられている模様[3]。
一般人も、上記のチャリティー・ショップで商品を購入したり、不要になった衣類や本を寄付したりすることで活動に参画できます。
こうした活動もまた、イギリスが動物愛護に積極的な国であることを示す一例といえるでしょう。
まとめ
この記事では、イギリスの動物愛護文化について、大学の授業、ビーガン文化、慈善団体のチャリティー・ショップという観点からお伝えしました。
いずれも、動物福祉の向上に向けたイギリス社会の取り組みを象徴する事例です。
イギリスの動物愛護文化に触れることで、日本の動物福祉に対する見方も変わってくるのでは?
日常生活や学びの場で、動物にやさしい行動を取り入れるきっかけにしてみてください。
参考文献
[1] "Applied Animal Behaviour and Animal Welfare". The University of Edinburgh. https://postgraduate.degrees.ed.ac.uk/index.php?r=site/view&id=238, (2025-01-07).
[2] "International Animal Welfare, Ethics and Law". The University of Edinburgh. https://vet.ed.ac.uk/studying/postgraduate/taught-programmes/animal-welfare, (2025-01-07).
[3] "Animal Behaviour and Welfare - Short online courses". The University of Edinburgh. https://www.onlinecourses.ed.ac.uk/all-courses/animal-behaviour-and-welfare, (2025-01-07).
[4] "About us". Cancer Research UK. https://www.cancerresearchuk.org/about-us, (2025-01-07).
[5] "What we do". Samaritans. https://www.samaritans.org/about-samaritans/our-organisation/what-we-do/, (2025-01-07).
[6] "RSPCA Shop". RSPCA Shop. https://shop.rspca.org.uk/?srsltid=AfmBOorToKSkS7dpC8jMj_1ZvmoRTpZhryZTgoWfNsGvIj2WJE3lZ_V7, (2025-01-07).