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大阪市がコロナ追跡システムを80万円で作ってるって話を聞いて

2020/05/21あたりにこんなニュースが流れたんですよ。

え、80万円!? やっす、1人月いってないやん!? それセキュリティとか大丈夫なん?? って思ったわけなのですが、どうやら仕組みは下記の感じのようです。

ほうほう、意外とシンプルですね。

まあ、正直運用費はどうなるかわかりませんが、ただ作るだけならこんなもんで行ける気がしないでもないです。

システム開発で言う「80万円」とは

ただ単に80万円って言うと、だいたい中古車1台分くらいですかね、結構な額ですよね。個人で80万円というのは大金です。

ただ、これが対会社、対法人って話になると急に話が変わります。何人の人間を使って、どれぐらいの時間で作るのか、っていうのを下地に考えるのです。

たとえば、東京都の最低賃金って今、時給1,013円だそうです。

基本的にこの金額はなんのアビリティも持たない五体満足の人間をただ使うだけの金額と考えてください。

実際、システムエンジニアはなんだかんだいろいろな知識や技術を身に着けているわけで、こんな金額で使ってはいけません。1年生エンジニアでも多分税抜で1,500円くらいにはなっているはずです。

多分、このシステムを組むレベルのエンジニアであれば時給2000円換算くらいでなんとかなる気がします。1日8時間労働と考えると、1日16,000円かかる計算になります。

そしてその外側に「その人を管理するための費用」と言うのが発生します。まあ、管理と言ってもその人がちゃんと仕事してるかどうかではなくて、健康保険とかの会社負担分だったり、その人が単純に会社にいるだけで発生する金額のことです。漫画喫茶でも8時間居れば2,000円くらい取られますよね? その金額です。

というわけで、ざっくり「エンジニア一人1日動かす額=2万円」ってことにしましょう。これをさっきの80万円で割ると40日間使えることになります。40日で作ったら人件費とトントン、ってことです。これじゃ会社は回りません。

基本的になにかシステムを作るときに一人で作り切るというのはあんまり良くないとされています。作っている人間というのは基本的に自分が無意識で犯している過ちや勘違いには気付きづらく、そのまま作ると「それっぽいなにか」にしかなりません。そのためにはもう一人以上出来上がりをチェックしたり、仕様をまとめたりする人間が別に必要です。ドライバーとナビみたいなもんですね。とりあえずギリギリに抑えるために人数で割って、20日間ですね。

さて、その二人のお給料を計算したり、実際に振り込んだりする経理の人のお給料はどこから出るのでしょう? おそらくその人は他の人達の経理事務を行っているので、このプロジェクトから10万円渡してやってもらうことにしましょう。5日分ですね。それを二人から均等に引くと17.5日間ですね。

それと大事なのは営業! 営業大事ですよね!
「お仕事取れましたー! コロナ追跡システム、80万ですー!!」とか嬉々として報告してきたら「は?」とか言いそうですが、せっかく取ってきてくれたので、試算してみましょう。
営業もお給料もらえないと暮らしていけないので、その分の取り分を確保しておきましょう。2割くらいでいいですかね? 16万円で8日分。それを二人から均等に引くと13.5日間ですね。

んで、利益というのを別に出さないと会社にはなりません。ヒダリマキマイマイの方たちが大嫌いな内部留保ってやつですね。これがないと今みたいにコロナでお仕事がないときなどに会社を存続させるための体力が全部借金って話になってしまいます。カネを貸す側の銀行にしたって利益を全然出さない会社には「返すカネどこから出すつもりだ?」って話になってお金を貸してくれなくなります。雑に売上の1割くらい残すことにしましょう。となると、8万円、4日分ですね。それを二人からさらに均等に引くと11.5日間ですね。

つまり2週間強くらいで完パケ納品できるもの、って考えるのが良いと思います。超絶薄利ですけどね。逆にそれくらいの納期だと特急料金もらいたいくらいかもしれません。

実際どれくらい掛かりそう?

「じゃあまずは見積から」って言われたときにだいたい以下の感じかなーって思います。

- 仕様読み込み、仕様検討: 1日
- 設計作業: 4日
- 製造: 10日
- テスト: 5日

合計: 20日

おや、だいぶ超えてしまいましたね……
そして多分200万くらいかなーって気がします。
実際に掛かる時間は多分半分くらいではありますけど、「いざ掘ってみたら岩盤にぶち当たってしまった」「調子に乗って掘ってたら崩落して埋まってしまったので最初から掘り直すことになった」みたいな地獄のトンネル工事みたいなことがしばしば起こるのがシステム開発というものです。なんかあったときのために時間的にある程度余裕をもたせるもんなのです。

本気で作ったらどうなるの?

セキュリティとかスケーラビリティとかデザインとか全く気にしなければ意外と2日くらいでなんとかならない気がしないでもないです。

ただそれが実用に耐えうるクォリティになるかどうかはわかりません……

まあ、せっかくの機会なので、どっか時間を見つけてそれっぽいもの作ってみようかしら……出来上がったらGitHubできっと公開しますね。

※2020/11/20追記

案の定というか、なんというかこんなニュースが。

それでも10ヶ月運用費込みで850万円弱って驚嘆に値しますけどね……普通の会社ならこんな安値じゃ請けないよマジで……


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今山 Layzy 豪貴
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