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ひとつのことに賭けるのか、複数のバスケットを持つか考える夜。
Put all your eggs in one basket、というフレーズがある。
頭に「Don't」をつけて、「Don't put all your eggs in one basket」と忠告するような使い方をすることが多い。
今日アメリカの知人とチャットしているときに自分で書いて「変なフレーズ」と思った。初めて使うわけではないけれど、今年に入ってから日記を書いている(書こうとしている)から、今日に限って「変だ」と思った。
直訳すると「全ての卵をひとつのバスケットに入れるな」。つまり「ひとつのことに全てを賭けるな」という意味。
言葉の由来はスペインもしくはイタリアで「ニワトリが産んだ卵をバスケットに入れる」ことから来ているらしい。
仕事に当てはめて考えると、例えばフリーランスで仕事をしている人がいくつもの収入源を持つことで「ひとつのバスケット」に頼らずに済み、生活も安定すると言われる。
ひとつのアイディアに全てを賭けるのではなく、複数のアイディアを温めておけ、そのほうがスマートだ、というニュアンス。
と、ここまで考えて出てきたのが、「10000 hours」問題である。ベストセラー作家マルコム・グラッドウェルの『Outliers』という本から生まれたコンセプトは、Dan & Shayという二人組とジャスティン・ビーバーが2019年に曲のタイトルに使うほどポップカルチャーにも浸透している。
ひとつのスキルを習得するためには、1万時間必要だというあれである。
ひとつのことに1万時間を費やすことは普通の努力ではできない。自分が持っている「eggs」を全て「one basket」に入れるぐらいの覚悟は必要だ。普通の人がなかなかできないことだから、1万時間を「何か」に費やした人間は他と差がつく、ということだ。
Don't put all your eggs in one basketというのは常識的と言えば常識的なアドバイスで、10,000 hoursは「没頭しろ、追求しろ、他を見るな」という、人によっては難しい注文だ。
私は10,000 hoursに憧れる人間だ。職人、アーティスト、アスリート、科学者は1万時間の人たちである。
でも私のような凡人は、企業を離れて10年、ようやく手元に複数のエッグと、それを運ぶバスケットがいくつかあることをありがたく思っている。
本当は、どうしたいのだろう。なぜかeggsについて考える夜。
How many baskets do you have?