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「七瀬雪」説

2022年12月23日。よう実アニメ2期の円盤1巻の初回生産限定版の特典である0巻が世に出た。

この3ヵ月前に新キャラである雪のカラービジュアルと名前が明かされ、椿とよく似ていることから、「椿の姉ではないか?」と囁かれていた。

本稿では椿の姉ではなく、七瀬の姉が雪であること──つまり、「七瀬雪」説を提唱する。
(最終更新:2023/1/29 07:39)

0巻の該当部分


0巻終盤において、脱落した雪と4期生として残り続けた綾小路の再会が描かれたので、まずはそのシーンを振り返ることにする。

雪は脱落後、精神のケアを施して親元へ返されたが、精神は癒えることなく、綾小路を心配し続けていた。そのため、雪の父親は綾小路と雪を会わせることを篤臣に頼み込んだ。

車で目的地まで向かうと、クリニックから連れ出される清隆を待つことにした。
鴨川「それにしてもカウンセリングクリニックだなんて……清隆くんに何かあったんですか?」
篤臣「いや。ここに立ち寄らせたのは、どうしても清隆に会うことを希望している者がいたからだ。相応の出資をしてくれている人物の頼みだ、仕方ない」
鴨川「会いたい、ですか」
篤臣「浅はかなことだ。傷口を塞ぐための手段のつもりだろうが、逆効果とも知らずにな」

p312

ホワイトルームの一時凍結後、綾小路は研究員に連れられてカウンセリングクリニックにやってくる。部屋で待っていると、雪の父親が桜の花瓶を持って現れ、雪の好きな花だと告げる。

石田研究員の指示に従い空室で待機を続けていると、1人の男に声をかけられた。
「待たせてしまったね、綾小路清隆くん。今日は来てくれてありがとう」
「あなたは?」
初めて見る顔で、年齢は40代前後。穏やかな顔立ちからホワイトルーム関係者とは思えなかった。
それよりも目を引かれたのは、手に花の生けられた花瓶を持っていたこと。これも初めて見るもの。知識と映像でしか見たことの無かったもの。
「君にどうしても会わせたい子がいてね。綾小路先生に無理を言ってお願いしたんだ」
「仰っている意味が理解できません」
「あの子は随分と心が弱ってしまっていてね、満足に外出もできないんだ。家の中と、それとクリニックだけは比較的平静を保てる。だからここまで来てもらったんだ」
「それは──ですか?」
この部屋に飾られていたんだけどね、ちょっと水を替えさせてもらったんだ。あの子が好きな花でね。もうすぐ診察から戻ってくるはずだ」

p314

診察から戻ってきた雪が綾小路と再会する。

年頃はオレと同じくらいだろうか。女の子がこちらを見て目を見開いている。
「会いたかった、ずっと……ずっと会いたかった!」
「君は──」
「雪、雪だよ!」
雪。その名前には覚えがある。もう随分と昔に脱落していったホワイトルーム生だ。記憶からは消去していたものの、それでも意図的に消し去ることが出来ない以上覚えていることも幾つかあるのは自然なことだ。

p315

綾小路は状況把握が済むと早々に興味を失い、雪の父親から頼まれた他愛のない雑談に否定的見解を明かす。

1つだけ分かったのはこの子が名のある財界の子供なのだろうということだ。脱落後に丁重な扱いを受けていたことだけは分かる。ただカウンセリングに通っていることから、心の傷は癒えることがなかった
そして癒す方法、その選択の1つが同じ4期生だったオレと会うこと……か。状況の把握も済んだし、これ以上この場所に用はない。
「もう行くよ」
「ま、待って!や、やっと会えたのに!もっと、もっと沢山のお話ししたいの!」
「オレから話すことは何もないよ」
そもそも、ホワイトルームの話ができないのでは会話は成立しない。
「待ってほしい綾小路くん。どうか、雪としばらく話をしてもらえないか。そう、どんな話でもいいんだ。他愛も無い、取るに足らない話で──
「取るに足らない話とは何ですか?オレが今日初めて外の世界に出てきたことはご理解されているんですよね?」
「それは──」
「無論、嘘偽りで固めた話でも良ければしますよ。国内外問わず、知識の限りでよければ強引に話をすり合わせても構いません。ですがそれは希望することではないですよね」
「わ、私平気。ほ、ほわいと、ホワイトルームの話でも、平気、だからっ」
過呼吸気味になりながらも逃すまいとオレの袖を掴む雪。

p316,317

綾小路は雪の父親の個人的なお願いを断り、クリニックを立ち去る。

「ではお断りします」
「なっ──!?」
「それが、彼女のため最善の選択だと判断したからです」
「脱落した子供のことなんて、どうでもいいというのか!?」
それはその通りだ。脱落した子供のことなどどうでもいい。だが、カウンセリングの役目としてオレを呼んだことはこの男の悪手だった。
「失礼します」
「やだ!行かないで清隆!」
「脱落して消えていったあの時と何も変わらないな」
「っ……!」
「親に恵まれたことに感謝して、ここでの治療に専念した方がいい。オレに期待すればするだけ後悔することになるから」
「嫌だ!私は、私は清隆と、お話ししたい!もっと、あの時できなかったお話!」
ひどく幼い口調と反応の雪の精神は、数年前のあの時から何も変わっていない。
「待ってくれ!頼む!」
「どいてください」
「雪は……雪には私だけじゃない。妻や次女の言葉も届かない。届かないんだよ。だけど君とは話をしてくれる……それでどれだけ救われるかっ……!」
「さよなら。君と会うことはもう無い方がいい。それじゃあ、失礼します」
「いやあ!いや!清隆!いやああ!!」
泣き叫ぶ彼女の声と、堪えきれず罵声を浴びせる大人の声。どちらもオレの耳の奥までは届かない。興味がない。

p318,320

本題──「七瀬雪」説

さて、振り返りが終わったので、本題に入りたいと思う。

改めて、雪の妹が誰なのかという問題については七瀬翼であると主張したい。つまり、「七瀬雪」説である。

仮説の立場や背景

雪の好きな花は伏線だが、この仮説ではそれはミスリードを意図したものだと解釈することになる。(詳細は後述)

2年2巻の最後で月城と一緒にやり取りするシーンを出したことで七瀬がホワイトルームからの刺客とミスリードした。(実際は八神)

また、2年6巻では佐藤に接触した1年生を口調から八神だとミスリードしていた。(実際は椿)

0巻ではという椿の名前と関連付けやすい花を持ち出すことでミスリードしたと考える。

何故かと言うと、本来であれば同時期に発売されるはずであり、連動する要素が多い2年生編8巻において、七瀬に新たな謎があることを明確に描写していたからだ。

この新たな謎を解く鍵を0巻で補完していてもおかしくない。

実際、2年生編8巻で提示された謎のいくつかは0巻において解消もしくはヒントが与えられている。

(1)神崎の独白に出てきた第三者の子ども

だが──結局、その嘘を吐いた子供は事なきを得た。
窮地に陥った状況で突如として第三者が現れ、機転を利かせてその子供を救ったのだ。
仲間だからという理由だけで、嘘を非難することなく、守った。
納得はいかなかった。それは正義じゃない。

p12,13

(2)綾小路が高育に入学することは最初から決められていた可能性

これまでの全てがひっくり返るのだとしたら……。
オレがこの学校に入学することは、全て最初から決まっていたことなのかもしれない

p64

(3)石上の目的

あの男を慕う男がこの学校に入学してきて、そしてどういうわけだかオレに対して何度か連絡を取ってきたり、文化祭では間接的に八神排除の手伝いまでさせてきた。
その石上という男の目的はまだ見えてこない

p302

(1)については石上であることが確定した

(2)については篤臣の目的を絡ませることで確定した

(3)については「政治の世界に興味がある」「石上の父親は前妻との間に子どもはいなかった」という情報と「大切な友達が困っていたら絶対に助ける」という人物像が描写されていた

そろそろ、七瀬雪説の検討に入ろう。

予め言っておくが、目次での見やすさのため、似ている根拠でも異なる項目として掲載してある。

肯定根拠①:雪は水泳のセンスがあり、身体能力が優れている

雪は初め、4期生の中で泳ぎが最も速かった。

これは強い遺伝的要因を示唆しているため、妹も同様に身体能力が優れていると考えられる。

七瀬は無人島サバイバルで見せたように泳ぎの能力に長けていて、身体能力はOAA上でB+(78)と高水準であるため、その特徴と合致する

肯定根拠②:雪は感情が豊かである

鈴懸のカリキュラムは感情の成長を考慮に入れないものだった。

そんな状況にも関わらず、雪は一度だけではあるものの、屈託のない笑顔を見せた。

そのときの雪は笑った自覚がなく、カリキュラムでも習っていなかったため、遺伝的要因が示唆される。

「あれ……今、私……」
戸惑い、困惑の表情が見て取れる。
それはそうだろう。そんなことは習ってない。そんな表情を教えてもらったことはない。

0巻, p186

妹も同様に感情が豊かである可能性が高い。

2年生1巻の挿絵で雪のものと酷似する屈託のない笑顔を見せたように、七瀬は感情が豊かであり、妹の特徴に合致する。

なお、よく笑うかそうでないかは遺伝子に左右されている。

「遺伝子が左右してるようだぞ。よく笑う人と笑わない人の違いは」
「う一ん……なんかヤダね、そういう理由。たとえ本当
だつたとしてもさ」
ま、それが全てじゃないだろうが。主に育ってきた環境が左右させる可能性はある。

1年3巻

その遺伝子とは「5-HTTLPR」であり、長いか短いかが幸せホルモンとも呼ばれるセロトニンの分泌量を左右する。長いとおおらかな人柄となり、短いと何ごとにも細かく、ミスを見逃さないため苛立ちがちになる。

肯定根拠③:雪は会話が得意である

鈴懸のカリキュラムは対話によるコミュニケーション能力を開花させないものだった。

その中でも雪は会話が得意であることを描写されていて、理由を自覚できてないため、遺伝的要因が示唆される。

清隆「どうして雪は会話が得意なの」
雪「え?得意……なのかな?」
清隆「少なくともオレよりは得意だ。どうしても意欲的に話す気にはなれない」
雪「私も別に意欲があるわけじゃない、けど。ただ……なんだろうな……分からない

0巻, p210

なお、コミュニケーション能力は遺伝的要素があると言われている。

そうなると、妹も同様に会話が得意である可能性が高く、社交的な七瀬はその特徴に合致する。

粗暴な宝泉と違い、非常に社交的で丁寧な口調には強い好感を持てる。

2年1巻, p140

肯定根拠④:雪は幼なじみに一途である

雪はホワイトルームを脱落した後も幼なじみである綾小路のことをひたすら心配していた

恋愛感情かどうかは断言できないものの、一途な好意を抱いていると言える。

一方、七瀬も幼なじみである栄一郎に一途な恋愛感情を抱いていた。

一途な好意とは誠実さとも言い換えられ、この特徴は遺伝的要素がある。

妹も同様の特徴を備えている可能性が高く、七瀬はそれに合致する。

肯定根拠⑤:七瀬は栄一郎に心を癒され、憧れの感情を学んだ

七瀬の独白に以下のような箇所がある。

温かい手が、私の頭を撫でてくれた。優しい微笑みが、私の心を癒してくれた。真剣なその眼差しが、私に憧れの感情を教えてくれた

2年3巻, p15

心を癒してくれたということは七瀬は何らかの悩みを抱えていたということである。

また、憧れの感情を教えられたということはそれ以外の人に憧れの感情を抱いていなかったことが示唆される。

七瀬が雪の妹であれば、この部分に面白い説明が付けられる。

以下、七瀬は雪の妹である状況を仮定して、読んで欲しい。

まず、七瀬と雪は同系色の髪ではあるものの、同じ色とは言えない。

両親の髪色が雪と同じだったとすると、七瀬は親と髪色が微妙に異なっていたことになる。

突然変異隔世遺伝といったことが考えられるものの、親のどちらかと髪色が同じというケースと比較すると、両親と髪色が異なるというのがレアケースであることは否定できない。

そのため、幼い頃の七瀬は周囲の子どもから本当の親子ではないとからかわれ、髪色に関する悩みを抱いたとしてもおかしくない。

有名進学校に合格するほど勉強が得意だった栄一郎なら、七瀬のケースは現実に起こりうることを諭し、励ましてくれた可能性が高い。

次に、雪は8,9歳頃までホワイトルームで生活していたことを思いだそう。

それまで七瀬は実質的に一人娘であり、両親からの愛情や関心を独り占めできただろう。

そこに精神的に弱った雪が戻ってきたため、両親の心配は雪に多く向けられるようになったと考えられる。

その頃の七瀬は小学校の低学年であり、嫉妬の1つや2つを雪に感じたとしてもおかしくはない。

不満を言おうにも雪は綾小路のことを心配し続けるだけであり、まともな解決に至るとは考えにくい。

さらに、雪の精神は全く成長せず、年齢だけが増えていったことが以下から推測される。

「嫌だ!私は、私は清隆と、お話ししたい!もっと、あの時できなかったお話!」
ひどく幼い口調と反応の雪の精神は、数年前のあの時から何も変わっていない

0巻, p318

身体は年相応に成長するが、時間が止まったような幼い精神を有する雪に対し、七瀬は憧れを抱くだろうか?

抱かないとは断言できないが、自分の言葉が届かない姉に対して憧れを抱ける妹は稀だろう。

一方、雪と同い年の栄一郎は何をやっても自分より上手であり、七瀬にとって目標となるような歳上の子どもだった。

「幼稚園から中学校卒業まで1つ年上の栄一郎くんとはずっと一緒でした。勉強も遊びも習い事も……。何をやっても私より上手だった栄一郎くんは……私にとって目指すべき憧れの人でした」

2年3巻, p324-325

栄一郎に対して、七瀬が初めて憧れの感情を抱くのは当然だろう。

肯定根拠⑥:七瀬はホワイトルームの襲撃計画がないと知っていた可能性がある

ホワイトルームの資金提供者なら、ホワイトルームプロジェクトが一時凍結されたこととその経緯は知っていて当然だ。

つまり、ホワイトルームの管理者である篤臣が直江に背き、政治家の肩書きを失った。

雪の妹であれば、七瀬もそのことを多少知っていてもおかしくない。

そこに月城などからホワイトルームの意向について聞かされれば、確信は持てなくても七瀬の中でその信憑性は高くなる

肯定根拠⑦:七瀬はホワイトルーム生から綾小路を守ろうとしている

ホワイトルームから脱落した雪は綾小路のことをずっと心配していた

雪の妹であれば、家族としての情から綾小路の味方になる可能性が強くなると考えられる。

月城が七瀬にその役割を与えるのは筋が通っていると言える。

肯定根拠⑧:月城はホワイトルーム生に劣る七瀬を送り込んだ

七瀬はホワイトルーム生の能力に劣るため、ホワイトルーム生から守るナイト役としては力不足だろう。

月城の真の目的は雪の血縁者と綾小路を会わせて、綾小路の感情面の成長や変化を確認することだとすると、実力不足であったとしても七瀬を送り込むことに辻褄が合う。

※記載を忘れていたが参考にしたサイトがある(2023/1/29)

肯定根拠⑨:七瀬はクルージング中のある日の昼、綾小路との会話に集中できていなかった

雪の心配していた清隆が綾小路のことだと直前に月城から知らされたとすると、辻褄が合う。

肯定根拠⑩:七瀬と雪は名前がどちらも白をイメージさせるものである

七瀬の下の名前は

翼といえば、もしくは飛行機だろう。

鳥なら日本を代表する鳥と言われるトキの白色、飛行機なら銀白色を連想させるので、白色のイメージがある。

雪は勿論白色なので2人の名前には「白の象徴」という共通点がある。

姉妹の名前に共通点があることは整合的だろう。

肯定根拠⑪:七瀬はビーチフラッグスにビキニ水着で臨んだ

無人島サバイバルにおいて、七瀬はビーチフラッグスに参加し、女子の部で優勝した。

このとき、七瀬はスクール水着ではなく、ビキニタイプのものをレンタルしていた。

綾小路「その、何というか可愛い水着を選んだんだな。それに理由はあるのか?」

七瀬「理由ですか?テレビで見るビーチフラッグスってこういう水着でやってるイメージだったのでスクール水着で参加するのはおかしいのではって。私間違ってました?

2年3巻, p126

ここから窺えるのは七瀬は世間でのイメージを優先したということ。

世間のイメージを優先するということは人々からどう見られるかを意識する環境で育ってきたことを示唆していて、七瀬は裕福な生まれである可能性が高い。

雪は財界人の娘なので、その妹も当然財界人の子となる。

1つだけ分かったのはこの子が名のある財界の子供なのだろうということだ。脱落後に丁重な扱いを受けていたことだけは分かる。

0巻, p316

やや強引ではあるが、七瀬が雪の妹であるなら整合的だろう。

まとめ

後述すると書いた「雪の好きな花」の別の意味を述べて、結論をまとめたい。

「雪の好きな花」の別の意味

桜という花の種類に意識が向きがちだが、これには別の意味がある。

いずれ本編で、雪の妹は綾小路に正体を明かすときが来る。

そのとき、綾小路は何によって雪の妹であることを納得するのだろうか?

それは──雪の妹が知り得る個人情報に他ならない

つまり、雪の誕生日、血液型、通っているクリニックの名前、好きな食べ物、嫌いな食べ物────好きな花が証明材料になる。

雪の妹は雪の好きな花を合言葉として伝えることで雪の血縁者だと綾小路に証明するわけだ。

天沢が自分がホワイトルーム生だと綾小路に証明したときのことをイメージしてもらえれば分かりやすい。

「先輩が10歳の時に受けてたカリキュラムはプロジェクト5に基づいた構築理論。11歳の時に受けていたのはプロジェクト7に基づいた相対性理論。あたしも両方受けたからしっかり覚えてる」
同じホワイトルームにいたことを証明するかのような具体的な話が出てくる。
「室内も、廊下も、自分自身に与えられた部屋も、何もかもが真っ白な世界」

2年4巻, p27

誕生日や血液型なら、他人でも調べれば分かるだろうが、嫌いな食べ物や好きな花といった情報を一発で当てることは一緒に過ごしていた家族であることの有力な証拠となるだろう。

好きじゃないな……」
(中略)
「清隆は、好き?」
目の前のオレに対し、ニンジンが好きか嫌いかを問いかけてきた。

0巻, p182

つまり、「雪の好きな花は桜」というのはビジュアル面での類似と合わせて「椿桜子の姉が雪」にミスリードする伏線であり、真の意味は「雪の妹が綾小路にそれを証明するための材料」なのだ。

月城と七瀬とホワイトルーム生の関係

繰り返しにはなるが、月城がホワイトルーム生から守るナイトとして力不足な七瀬を送り込んだのは以下の目的のためである。

「過去に雪に冷酷な対応をしたことを綾小路に改めて考えさせ、高育での人格形成が成功しているかの判断基準の1つにする」

「おまえが適任だ。奴がどこまでやれるのか見極めたい
任せて頂けるのなら結構。承知しました。そちらの計画を実行される際にはご協力しましょう。後々、幾つか不足しそうな駒を用意する必要もありますね」
俺は車を出すように指示し、月城にエンジンをかけさせた。
信頼のおけぬ月城には清隆の未来に関することだけを話しておく。しかし狙いはそれだけでない。いずれ潰さねばならぬ敵、鬼島と高育の弱みも握っておきたいところだ。

0巻, p325

また、月城が雪の心配し続ける清隆(※雪は綾小路の名字を知らない)綾小路が同一人物であることを教え、綾小路をホワイトルーム生から守るナイトの役割を七瀬に与えたのは無人島サバイバルの終了後だと推測される。

「えっと、私に何か御用でしょうか?」
どこかまだ慌てた様子の七瀬に、少しだけ奇妙な感覚を覚える。視線に落ち着きがなく、オレとの会話に集中できていないような様子だ。

2年4.5巻, p92

急に情報を与えられたことで七瀬自身、頭と心の整理ができていなかったが、時間が進むにつれて飲み込めるようになった。

しかし、綾小路を近くで観察してきたことと自分がホワイトルームからの刺客のような動きをしてしまったことで、七瀬は真実を打ち明けるタイミングを迷っている段階なのだろう。

戸惑う七瀬だが、すぐに口を開きかけ……しかし言葉は出てこない。
「言い訳が思いつかないか?」
「何を言っているんですか?綾小路先輩は何か勘違いされているようです」
直前まで明らかな動揺があったことは窺えるが、今の七瀬は冷静だった。

2年8巻,p58

七瀬は月城に誘導されて、最初は栄一郎の敵討ちをしようとしていたが、高育から退くことになった月城に綾小路こそが雪の心配していた清隆であることを知らされた。

幼なじみである栄一郎を失った七瀬は雪に自分のような思いをしてもらいたくない。七瀬は綾小路と雪の橋渡し役になりたいのだと推測される。

「先輩のお考えは分かりました。もしかするとそういった意図が本当に隠されているのかもしれません。でも、私までその一連に組み込まれるのは……少し心外です。修学旅行の危険性を見逃していただけで、敵と思われたくはないです」

2年8巻, p61

七瀬が橋渡し役になりたいというのは以下が示唆的である。(cf.七夕の伝説→、はくちょう座→)

夏の大三角形のもうひとつであるデネブだけ、仲間はずれのような感じもありますが、七夕の伝説にこのデネブが現れる説もあるのです。

雨で天の川の水かさが増してしまうと織姫と彦星は会うことができません。年に一度しかないチャンスなのに、それはあまりにもかわいそうだと、手を差しのべたのがデネブというのです。

https://nlab.itmedia.co.jp/nl/spv/1707/06/news110.html

七瀬の独白を知り得ない綾小路は栄一郎の死まで疑う始末。七瀬は綾小路の疑念を晴らすのが先決と悟る。

「本当に松雄は自殺したのか?そしてその息子である栄一郎は死んだのか?第三者と思っていた七瀬の発言で松雄の死に関して真実味は増したが、おまえが最初から計算の上でこの場にいるなら信憑性は全て失われる」
全て本当のことです綾小路先輩。と言っても、仮説だと前置きされてそんな風に疑われてしまっては、きっと疑念は晴れないと思いますが」

2年8巻, p62

雪のためにも疑念は晴らしたいと七瀬は考えているのだろう。

「この場では私が何を言っても綾小路先輩には受け入れて頂けそうにないですね。時間をかけて疑念を晴らすしかないと思っています」
疑念を晴らす方法があるのかは不明だが、そういうことになるな。むしろオレとしてはこれまで通り接してもらって構わない」
「そうはいきません。それでは私が……納得できませんので」

2年8巻, p64

というわけで、七瀬の姉が雪だと結論付ける。

余談

名前遊び

根拠は述べたので七瀬と雪が姉妹であることは確信しているが、実は七瀬と雪をこじつけるやり方が2つある。

①七瀬の中に雪が隠れている

七瀬翼→ななせつばさ→せつ→雪

②雪から七瀬の名前が出る

雪→ゆき→よく(1字後ろにずらす)→翼

1字後ろにずらすことは年齢を1つ下げることに対応する。つまり、雪と七瀬の年齢差を表している。

言葉遊びと言えばそれまでなのだが、2つもこんなものを見出だせるのが偶然なんだろうか。もはや必然に思えてならない。

名前が類似しているキャラ

1.水瀬名雪(Kanon)
名前だけは知っているからおそらく有名なゲームのキャラ。どこかで読んだが泣きゲーらしい。

2.七瀬美雪(金田一少年の事件簿)
有名なミステリー漫画のキャラ。主人公の幼なじみらしい。ちなみに先述の水瀬名雪とはアナグラムの関係。

3.七瀬雪(ウィザーズ・ブレイン)
約10年ぶりに続巻発売が決定したらしい電撃文庫のライトノベルのキャラ。

1巻の冒頭を覗いてみたがこんなキャラだった。

「なんで笑うのよー」
「いや、雪。知ってるか?もともと騎士道が生まれたのは、戦争がなくなって、騎士が体面を保てなくなったからで」
「関係ないわよ、そんなこと。ここは中世ヨーロッパじゃないもの」
「じゃあ、二二世紀の日本の騎士は、どんな騎士道守るんだ?」
「そうねえ……たとえば」
(中略)
「騎士、七瀬雪は自分の周りの、すべての大切な人たちを守るために、戦う」
凛とした真面目な顔は、はにかんだような笑顔にとって代わられてしまう。
「……っていうのは、どう?」

ウィザーズ・ブレイン

以上、余談でした。




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